日本初! 排水油脂をクリーンエネルギーへ変える「フード・グリーン発電車」
環境問題は世界規模での大きな課題です。クルマも例外ではなく、EV車などのエコカーがどんどん普及しています。こうしたなかで、排水油脂から生まれた新しいエネルギーによる発電システムを備えたクルマが日本で初めて開発されました。それが、「フード・グリーン発電車」と呼ばれるクルマです。
どんなシステムなのか、どこで利用されているのか、今後の計画などを、フード・グリーン発電車の開発元である株式会社TBM 事業企画部長の東誠悟さんにお伺いしました。
水質浄化サービスから生まれた新エネルギー
「フード・グリーン発電車」の発電エネルギーである排水油脂とは、どんなものなのでしょうか。
「排水油脂とは、調理や食べ残しなどで出た油のことです。飲食店やホテルなどでは、食べ終わった皿についた油や、調理した後の油がシンクへ流れていきますが、この水を配管へそのまま流してしまうと、油が固まって配管が詰まったり、公共の下水道のトラブルになったりします。これを防ぐために、全国の飲食店では『グリストラップ』という油脂と水を分離する装置を設置することが義務づけられているんです。ここで分離された油脂を原料に、発電燃料を造り、発電しているのがフード・グリーン発電車です」
そもそも、どうして排水油脂を発電エネルギーとして利用しようと考えたのでしょうか。
「TBMは、水質浄化のための製品開発と、自社開発したその製品を活用したサービスを本業としています。水質浄化をするうえで、一番の基本は、排水に含まれた油脂を徹底的に分離回収することです。この油脂の分離回収技術を高めて行く中で、回収した油脂の資源化を目指しました」
2009年からこの取り組みを始めたそうですが、発電エネルギーとして使うためには着火性に問題があったと言います。
「排水油脂の燃料化の初期段階としては、独自の精製技術によりA重油代替燃料を造ることができ、老人福祉病院の焼却炉の助燃剤として使用されました。2011年3月11日の東北大震災後、より社会貢献を高めるためには、グリーン電力の供給を目指すべきと決意し、排水油脂の発電燃料化に取り組みました。この時の一つの課題が、軽油レベルの着火性を得ることだったのです。幸いNEDO支援のもとで集中的に技術開発に取り組むことができたため、わずか1年足らずで発電燃料化に成功することができました。この発電燃料をSMOと名付けています」
災害時にも利用できる安全性の高い発電システム
市販の軽油、さらにSMOのどちらでも発電ができる、画期的なフード・グリーン発電車ですが、発電のスペックはどれくらいなのでしょうか。
「現在は、100KVA発電車と60KVA発電車の2種類があります。100KVAは国内最大級の発電車で、非常時には一般家庭200戸前後への電力供給も可能です。」
この電力は、東京スカイツリーのライトアップもできるほどだそうです! 環境問題に加えて、災害時にも活躍が期待できるフード・グリーン発電車ですが、実用化の計画はあるのでしょうか。
「各地の自治体から、災害対策車両として購入したいという声もいただいています。万が一の災害時には軽油で発電し、独立電源として役に立つのです。通常時は、SMOでグリーン発電を行い、お祭りなどの出店へ給電し、イベントのグリーン化にも役立ちます。最近、小型発電機による事故の多発、騒音や臭いへのクレームもあり、安全と環境を重視する自治体が増えていますが、フード・グリーン発電車は、安全性が高く、騒音や臭いの心配もありませんし、消防署の立会検査でも太鼓判をいただいています」
発電力は相当なものですが、クルマ自体の安全性が気になります。衝突などでクルマが破損した場合など、周囲への二次災害は起こらないのでしょうか。
「発電機は二重三重にガードされているので、安全性も高く、騒音もほとんどありません。また、万が一SMOがこぼれてしまっても、原料がラード、牛脂などの排水油脂ですから、寒い時には固まってしまいますし、引火点は250度以上で、かつガソリンのような揮発性もないため、危険物に該当しません。固化しやすい特性があり、操作性の難しさはありますが、安全性に関しては抜群です」
これまでに、武蔵野音楽祭や代々木公園でのダンスイベントなど、さまざまな場所で電力供給の実証試験を行っているそうですが、今後の展開はどのように考えているのでしょうか。
「現在は、関東全域で『新エネルギーの地産地消モデル』の確立を目指しています。また、『グリーン電力スポンサー制度』も計画中です。これは、飲食店などの排水管理を任せていただければ、フード・グリーン発電車が出動したイベントなどで、スポンサーネームを打ち出すことができる制度です。広告媒体として、企業PRの一環に利用してもらいたいと思っています。また、電気自動車とも連携を取っていきたいですね」
フード・グリーン発電車は、災害が起こってしまった時の心強い味方になりそうです。また発電車だけではなく、すでにフード・グリーン発電所も設立しているとのことで、飲食店で出た排水油脂を電力に変え、その電力を飲食店へ供給するというような、クリーンエネルギーによる資源循環のシステムも生まれているそうです。
「ゴミを極力減らすようにする」という視点から、「ゴミもエネルギーに変える」という視点への変化は、映画に出てきた近未来の世界へ近づいたようでワクワクします。今後もフード・グリーン発電車の活躍に注目していきたいですね。
(取材・文:ヤマウチ 編集:ミノシマタカコ+ノオト)
[ガズー編集部]







