デビュー50周年。これが時代を反映した歴代ハイエースの進化だ!
突然ですが、みなさんは50年前に何をしていましたか? といっても、50年前はまだ生まれていなかったという人も多いことでしょう。
ちょうど50年前となる1968年は、東京都府中市で白バイ警官に扮した犯人により3億円強奪事件が起き、日本人がはじめて南極点に到達したり、日本初の超高層ビルである霞が関ビルも完成したりした年でした。
経済が発展する中で多くの日本人が好景気を実感し、日に日に暮らしがよくなっていることを実感できた時代。誰もが明日はもっといい暮らしになると信じていたころ。国の経済規模の指針であるGNPが、自由主義経済国のなかではアメリカに次ぐ世界第2位になったのもこの年のことです。人々の生活が豊かになるにつれ、物流にも“質の向上”が求められてくるようになったのもこの頃でした。
その前年の1967年にデビューしたのが、初代ハイエース。初代ハイエースの登場は、商用車の世界において大きな出来事でした。
屋根付きのクルマで荷物を運ぶという発想
ハイエースがデビューするまでは、まとまった荷物を運ぶのにはトラックを使うのがごく普通でした。しかし当時のトラックは屋根のないものが主流。雨が降ると幌をかぶせて対応したそうですが、荷物を大切に運ぶという意識がまだ低かったのです。
そんななか登場した初代ハイエースは、荷物運搬車でありながら「室内に荷物を置いて運ぶ」という今ではごく当たり前のスタイルを一般化。天候に左右されず荷物を運べるほか、当時は一般的だったライトバン(ステーションワゴンの商用仕様)に比べると車体サイズの割に、大幅に広い荷室を用意していたこともあって一躍大ヒット車種となりました。
初代ハイエースは、日本初のキャブオーバーバンとして登場。乗用車ムードのデザインながら荷室の床はフラットにするなど、トラックの代わりとして使いやすい設計でした。今と違い、リヤドアがスライドではなくヒンジ式なのが興味深いですね。スライドドアは途中から追加されました。
スーパーロングは2代目から登場
初代デビューから10年後の1977年、ハイエースははじめてモデルチェンジを実施して2代目に進化しました。より広い室内を求める声に応えて車体を延長した「スーパーロング」を用意するようになったのは、この世代からです。
ディーゼルエンジンやATといった、今では当たり前のメカニズムの採用もこのモデルからスタート。初代と違い、当然のようにリヤドアはスライド式です。
3代目はラグジュアリーなワゴン仕様も設定
「人がたくさん乗れる乗用車が欲しい」という声に応えたワゴン仕様は初代や2代目にもありましたが、1982年に登場した3代目に起きた大きな変化は「バン」と「ワゴン」で大きく差別化したことです。
丸形ヘッドライトを組みあわせたシンプルなデザインのバン(左)に比べて、ワゴン(右)は縦にヘッドライトを重ねた個性的なフロントデザインで違いを強調。人々の暮らしがどんどん贅沢になっていったこの時代を、ハイエースはしっかり反映していたというわけです。ワゴンは専用設計のサスペンションを組み合わせ、乗り心地も大幅に引き上げられました。
豪華さが頂点を迎えた4代目
日本の景気がピークを迎えるのと時を同じくして1989年にデビューした4代目は、バンとしての実用性を磨き上げる一方、ワゴンモデルはバブル経済という世の中の流れを反映するかのようにさらに豪華に。
ワゴンの上級モデルは1列目や2列目だけでなく、なんと3列目までサンルーフを装着。電動スライドドアを採用するなど、おもてなし装備が満載だったのです。
ワゴンモデルと決別し、再び商用車の原点へ
2004年に登場した5代目で起きた大きな変化は、豪華なワゴンモデルが廃止されたこと。実は先代(4代目)の途中で日本にミニバンブームが起こり、トヨタでも「アルファード」という商用仕様を持たない大型ミニバンが登場しました。それを受けて、豪華なワゴンというニーズはハイエースからアルファードへとバトンが渡されたのです。ハイエースが大きな転換を迎えたと言っていいでしょう。
それを受け、商用仕様に徹した設計としたことで、荷室容積をさらに拡大するなど実用性をさらに磨き上げたのも、この代のトピック。より広い荷室が欲しいという声を受け、ワイドボディも追加されました。
そんなハイエースはいま、世界各地で活躍している
そんなハイエースは、今では国内専用車ではないのをご存知でしょうか?
世界中を旅するテレビ番組「あいのり」を見ていて、世界中のほとんどの国でピンクに塗られた移動車両がハイエースであることに気が付いた人もいるかもしれません。ハイエースは世界各地で活躍していて、販売先は約150ヵ国。なんと世界の3/4の国でハイエースが走っているというのだから驚きですね。
その累計販売台数は昨年末時点で約603万台。いまでは生産されるハイエースのうち約半数が海外向けです。世界を見渡すと、現地の事情に合わせてディーゼルエンジンだけで5種類も使い分けているのだとか。なかには燃料の質が良くない地域に向けた「丈夫な仕様」なんていうのもあるのだから面白いですね。
ちなみに、日本のハイエースは昨年11月に大規模マイナーチェンジを実施。衝突回避支援ブレーキを全車に標準装備しました。
そんな最新型も含め、こうしてハイエースの歴代モデルを見比べてみると時代をしっかりと反映したクルマ作りがおこなわれていることがよくわかりますね。ハイエースは、時代を映す鏡なのです。
(文:工藤貴宏 編集:ミノシマタカコ+ノオト)
[ガズー編集部]
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