モーターショーウォッチャー大田中がオススメする「世界のモーターショー」前編

みなさんは、1年間に世界で開催されるモーターショーがいくつあるかご存じでしょうか? 筆者が調査してみたところ、2輪車やチューニングカーのショー、技術展なども含めると、その数なんと300以上。東京モーターショーのように、毎年開催ではないショーもたくさんありますから、実際にはもっと多いはず。毎日世界のどこかでモーターショーが開催されている、と言っても過言ではないほどです。

モーターショーウォッチャーの筆者は、3年かけて世界中のすべてのショーを回ろうと計画したことがあるのですが、開催日の重複や移動距離などを考えると空路が発達した今の時代でも難しく、諦めざるを得ませんでした。もし実現していたら『マツコの知らない世界』に出演できたかもしれない……と思うと、実に悔しいです。

それはさておき、今回から2回にわたって私、モーターショーウォッチャーの大田中秀一が、実際に足を運びやすい世界のモーターショーを旅の楽しみとともにご紹介します。

IAA乗用車ショー(フランクフルト・モーターショー):奇数年9月

ドイツのフランクフルトで行なわれる「IAA乗用車ショー(フランクフルト・モーターショー)」は、世界最大級のモーターショーのひとつ。メルセデス・ベンツをはじめとする、地元ドイツ勢の迫力は圧巻です。ワールドプレミア(世界初公開)が多いほか、最新技術、アクセサリー、サービス、クラシックカーなど、クルマの今や近い将来に関わるあらゆる分野の展示が見られます。メルセデス・ベンツのタクシーやパトカー、ファイヤーチーフ仕様など、普段見られないクルマの展示も。会場が広すぎる上に見所が多すぎるため、1日ではとてもすべては見られませんので、たくさんあるミニカーショップやブックショップ、B級グルメの屋台なども楽しみながら、2日~3日かけて見て回るのがオススメです。

オススメ度:★★★★★
難易度:★

会場がフランクフルト中心部に近く、中央駅からUバーンという路面電車で5分、Sバーンという近郊型電車にいたっては会場の中に駅があるというアクセスのよさもあって、初めての海外モーターショーウォッチに最適。フランクフルトは一般的な観光名所もたくさんあるので、同行者と数日間、別行動をしても特に困ることはありません。ICEに乗ってしまえばどこへでも行けてしまいます。クルマ好きならフォルクスワーゲン、メルセデス・ベンツ、ポルシェ、アウディ、BMW……と、ドイツメーカー各社の工場見学やミュージアム探訪、カスタマーセンターでの買い物などもオススメ。カメラのライカ本社、鉄道模型のメルクリン、ミニカーや飛行機模型で有名なヘルパ、ぬいぐるみの名門シュタイフ社に足を運ぶこともできます。

https://www.iaa.de/en/

IAA商用車ショー(ハノーバーショー):偶数年9月

IAAのもうひとつのショーが、ドイツ・ハノーバーで行なわれる世界最大級の商用車のショー、「IAA商用車ショー(ハノーバーショー)」です。乗用車ショーが奇数年、商用車は偶数年に行われており、偶数年の今年は9月20日~27日に商用車ショーが行われます。

この商用車ショーに行くと、「こんなメーカーがあったのか!」「こんなバスやトラックがあったのか!」と、各種多様な車両展示に感動します。来場者の雰囲気も乗用車ショーとはまったく違って「クルマは仕事の相棒」といった人が多く、次の相棒を本気で探しに来ています。商用車を相棒にしている人たちがブースで振る舞われるビールを飲んでいる姿は、何とも言えない迫力あり。もちろん各メーカーブースやショップで、ミニカー(ショー限定品もある)などを買い歩く楽しみもあります。

オススメ度:★★★★
難易度:★

こちらも中央駅からトラムに乗ると約20分で会場前という抜群のアクセスなので、初めての人にも安心してオススメできます。バス好き、トラック好き、どちらの方もとても楽しめるショーです。ぜひ世界の商用車の洪水に溺れてください。

ユーロ・バス・エクスポ・バーミンガム:毎年11月

イギリスのバーミンガムで行なわれるバス専門ショーで、今年は10月30日~11月1日に開催されます。有名メーカー製バス、コーチビルダー製バスのほか、ケルヒャーの洗車機や二階建てバスのサービス工場用ジャッキなど、周辺産業の展示もおもしろいので、子供も喜ぶでしょう。規模はさほど大きくないので、気軽に見られます。

オススメ度:★★★★
難易度:★★

バーミンガム空港に直接入るのが楽ですが、ロンドンからレンタカーで向かう方法も。直行すれば3時間ぐらいですが、道中にはコッツウォルズという有名な観光地、ウースター(ウスターソースが生まれた場所として有名)にモーガンモーターカンパニーもあるので、観光していくのもオススメです。モーガンでは、工場見学もできるしモーガン車を借り出すことも可能。借りるときに「ハンパー」というピクニックセットをつけてもらえば、ジョンブル気分でドライブが楽しめます。そこまで凝ったことをしなくても、あちこちにあるフィッシュアンドチップス、ベイクドポテト、ハイティーなどを楽しむといいでしょう。ショーの帰りには、やや遠回りになりますが東へ3時間ほどで行けるロータス本社で、工場見学や試乗もどうぞ。

クラシックバスの向こうに見えるのはケルヒャーのバス用洗車機
クラシックバスの向こうに見えるのはケルヒャーのバス用洗車機

http://www.eurobusxpo.com/

ここからはインドネシアでクルマが見られるショーを3つまとめてご紹介します。インドネシアは、世界で2番目に日本車のシェアが高い国(96%と日本より高い!)。そんな国で2017年、中国の五菱汽車(ウーリン)がミニバンの生産・販売を始めました。中国メーカーの進出で、今後の日本車のシェアがどうなるかが注目される国です。日本にいては気づかない、日本車の活躍ぶりと存在感を見てください。

インドネシア国際モーターショー(通称IIMS):毎年4月

ジャカルタ北部の「JIExpo」という展示場で開催されるこのモーターショーは、ディーラー系の展示が主体のローカルショーですが、現地向けの新型車も発表されることもあって目が離せません。2016年には、トヨタが新型シエンタをここで発表したのですが、常務役員でアジア・中東・北アフリカ本部本部長である福井弘之氏や、チーフエンジニア・粥川宏氏(当時) が来印してプレゼンを行なうという、気合いの入ったものでした。余談ですがこのシエンタ、開発初期段階から現地で走り込みテストを行ない、現地のユーザーに適したチューニングを施すなど、それまでとは違った手法で採り入れた自信作だそうです。

オススメ度:★★★
難易度:★★★★

新車以外にはクラブ系の出展も多く、上の写真のクラウンもオーナーズクラブによる展示の1台。また、毎回違ったテーマの展示も行なわれていて、過去には歴代の大統領専用車が展示されたことも。どんなクルマが見られるのか、行ってみなければわからないわくわく感があります。

こうしたクルマからもオーナーズクラブの出展が多いことがわかるだろう
こうしたクルマからもオーナーズクラブの出展が多いことがわかるだろう

ジャカルタ・フェアー:毎年5月~7月、今年は5月23日~7月1日

食品、衣料品、タバコ、地方物産、ガジェット系などのたいていのインドネシア産品が集まる、東南アジア最大で最長を謳う巨大夜店で、IIMSと同じ会場で開催されます。厳密にはモーターショーとは言えないかもしれませんが、2輪4輪の全メーカーにヘルメットなどの用品メーカーも出展しているので紹介に含めました。元々インドネシアのモーターショーは、このフェアーから分離独立したものなので、モーターショーの原点とも言えるでしょう。ヤマハ、ホンダ、スズキ、カワサキのほか、TVS、ベネリなど、モーターショーに出展しないメーカーもここで買うことができます。

オススメ度:★★★★★
難易度:★★★★

巨大な夜店だけあって、開展時間は夕方から日付が変わる直前と長く、会社や学校帰りに楽しむ人たちが多いのも特徴。この巨大や夜店で飲んで食べて買ってしゃべって楽しむが、ジャカルタっ子なのです。スナック菓子をぽりぽり食べながら、バイクやクルマを買いに行く。当地では、ディーラー以外にショッピングモールやこの夜店でバイクやクルマを買う人が、とても多いんです。インドネシアの今、そしてインドネシアの人たちの購買行動なども見られる、オススメのフェアーです。現地の人たちに混じって消費の海に溺れてください。

疲れたら構内EVで移動。ローカルのヘルメットメーカーも全メーカー出展
疲れたら構内EVで移動。ローカルのヘルメットメーカーも全メーカー出展
食料品メーカーも大々的に出展しているので、つまみ食いしながらバイクやクルマも買う巨大夜店
食料品メーカーも大々的に出展しているので、つまみ食いしながらバイクやクルマも買う巨大夜店

ガイキンド・インドネシア国際オートショー(通称:GIIAS):毎年8月、今年は8月2日~12日

インドネシアの自動車工業会(通称ガイキンド)主催で、メーカー主導で行われる「インドネシア国際オートショー」は、ジャカルタ郊外のBSDシティにある「インターナショナル・コンベンション・エキシビション」で開催されます。格付け的には一番上なのですが、3年前にこの会場に移ってからは国際色が高まり(=ローカル色が薄まり)、目隠しして連れてこられたら一瞬どこのショーかわからないというのが特徴になってしまいました。

オススメ度:★★★
難易度:★★★★★

ジャカルタ市内から遠い上に会場までの公共交通機関もないので、格付け一番なのにビジターには難易度がもっとも高いという皮肉な状態になっています。ただ、反対に考えると、モーターショー会場までのアドベンチャーな道のりを楽しめると言えるでしょう。開会式には大統領もしくは副大統領、各国大使が主賓、来賓として来場するのですが、警備がゆるく、お召し車列や大使のクルマが間近で見られるという、ある種の趣味人にはたまらないものがあります。影武者、影武者車を見たときには、かなり興奮しました。過去には、副大統領とセルフィーをした日本のモータージャーナリストもいましたね。

日本にはない日本車も多数。こちらは発売されたばかりの三菱期待の星、エクスパンダー。かなり売れているようだ
日本にはない日本車も多数。こちらは発売されたばかりの三菱期待の星、エクスパンダー。かなり売れているようだ
VIPの車列が間近で見られる。インドネシアの交通警察はマツダ好き。警護のマツダ6(アテンザ)パトカーはなかなかかっこいい
VIPの車列が間近で見られる。インドネシアの交通警察はマツダ好き。警護のマツダ6(アテンザ)パトカーはなかなかかっこいい

https://indonesiaautoshow.com/

「モーターショーウォッチャー大田中がおすすめする世界のモーターショー・前編」では、ドイツ、イギリス、インドネシアから5つのモーターショーと巨大夜市を紹介しました。自動車雑誌などでよく見るモーターショーとは、一味違ったショーをご覧いただけたのではないかと思います。後編では、トルコ・イスタンブールやスリランカ・コロンボのモーターショーなどをご紹介しますので、ローカルショーの魅力にどっぷり浸かってくださいね。

(取材・写真・文:大田中秀一 編集:ミノシマタカコ+ノオト)

[ガズー編集部]