「INAPA2018」で見つけたクラシックバスに感動!

去る2018年3月22日~24日の3日間、インドネシア・ジャカルタのクマヨランにあるJIExpo(ジャカルタ国際展示場)にて「INAPA 2018(第10回自動車産業展)」が開催されました。

東南アジア最大の自動車産業展を謳うこの展示会は、「IIBT 2018(Bus Truck Indonesia)」「INABIKE(自転車)」「Tire & Rubber Indonesia 2018(タイヤとゴム製品)」「Forklift Indonesia(フォークリフト)」「Con Mine(建機)」「Auto Garagetech Indonesia(ガレージ用品)」「INAFASTENER(ナットとボルト)」「Lube Indonesia 2018(オイル)」「RAILWAY TECH INDONESIA(鉄道)」という、9つの小展示会で構成されるもの。その中で私、モーターショーウォッチャーの大田中秀一の琴線に触れたのは、2台のクラシックバスでした。

まさかのノスタルジックヒーローに興奮し、すべてを忘れる

その2台のクラシックバスとは、1970年代初頭から活躍していた「メルセデス・ベンツOF-1113」とその後継車として1980年から導入が始まった「メルセデス・ベンツO306型フロントエンジンバス」。どちらも、私が幼少時にジャカルタでよく目にし、乗っていたものです。OF-1113は当時すでにベテラン、O306の方は続々新車の導入が始まったころだったので、家の運転手にしょっちゅう乗りに連れて行ってもらいました。

今回のINAPA 2では、興奮のあまりバスにすっかり時間を使ってしまい、ほかの展示会を見る時間がほとんどなくなってしまうほどでした。今回は、この2台のバスを写真でご紹介いたします。まずは、OF-1113から。

1971年から導入が始まったメルセデス・ベンツOF-1113型フロントエンジンバス
1971年から導入が始まったメルセデス・ベンツOF-1113型フロントエンジンバス
この型は4枚折り戸が特徴。でもドア幅は日本の2枚折り戸や引き戸と同じ
この型は4枚折り戸が特徴。でもドア幅は日本の2枚折り戸や引き戸と同じ
動かすためとライト類のためのスイッチだけのシンプルな運転席
動かすためとライト類のためのスイッチだけのシンプルな運転席
座席は海外では一般的なプラスチック製
座席は海外では一般的なプラスチック製
整理券制で試乗もできた。これが大好評!
整理券制で試乗もできた。これが大好評!

ここからはO306型フロントエンジンバスを見ていきましょう

1980年にジャカルタから導入が始まったメルセデス・ベンツO306型フロントエンジンバス。インドネシア向けの最後のフロントエンジンモデル
1980年にジャカルタから導入が始まったメルセデス・ベンツO306型フロントエンジンバス。インドネシア向けの最後のフロントエンジンモデル
インドネシアに導入された最後のメーカー純正ボディ車両であることも特長
インドネシアに導入された最後のメーカー純正ボディ車両であることも特長
大型車用リフトメーカーのデモのため持ち上げられたO306。突然やってきた下回りを見るチャンスにバスマニアは興奮
大型車用リフトメーカーのデモのため持ち上げられたO306。突然やってきた下回りを見るチャンスにバスマニアは興奮
O306の運転席ピラーに取り付けられているレバーは、ノンオリジナルのクラクション。本来はウインカーレバーをハンドル方向に押して鳴らす
O306の運転席ピラーに取り付けられているレバーは、ノンオリジナルのクラクション。本来はウインカーレバーをハンドル方向に押して鳴らす
エアコンのないこの時代。屋根に3カ所設けられたベンチレーターで風を入れた。全閉、全開、前開き、後ろ開きができた。ここに街路樹の枝がしょっちゅうひっかかり、枝や葉っぱが車内に飛び込んできた思い出がある
エアコンのないこの時代。屋根に3カ所設けられたベンチレーターで風を入れた。全閉、全開、前開き、後ろ開きができた。ここに街路樹の枝がしょっちゅうひっかかり、枝や葉っぱが車内に飛び込んできた思い出がある
座席はプラスチック。往時は鈴なりになるほどの乗客を運んでいた。どれだけすし詰めでも車掌の手がにゅーっと伸びてきて運賃を回収された
座席はプラスチック。往時は鈴なりになるほどの乗客を運んでいた。どれだけすし詰めでも車掌の手がにゅーっと伸びてきて運賃を回収された

この2台は、いずれもインドネシア・バンドンのDAMRIが1988年から2015年まで運行していた個体で、残った2台を自社工場でレストアしたものです。DAMRIとは「Djawatan Angkoetan Motor Repoeblik Indonesia(インドネシア国営運輸局)」の略称。「なぜ旧仮名遣い?」と思い、歴史を調べてみて驚きました。ときを遡ること70年以上前、日本統治時代ジャワ島で営業していた「JAWA UNYU ZIGYOSHA (貨物輸送)」と「ZIDOSHA SOKYOKO (人員輸送)」の二社を祖としているそう。これは別途、詳しく調べてみなければと思いました。

1980年、ジャカルタPPDに導入が始まった直後の現役時の姿
1980年、ジャカルタPPDに導入が始まった直後の現役時の姿

当時、ジャカルタに住んでいた自分の“ノスタルジーど真ん中”の個体は、「PPD(Perusahaan Pengangkutan Djakarta=ジャカルタ運輸会社)」のO306の方。1978年当時の運賃は、定額50ルピア(当時のレートで約17円)、帰国時の1981年で定額150ルピア(当時のレートで約30円)でした。現在の市バスは、トランス・ジャカルタの高い時間帯の運賃が3,500ルピア(2018年3月のレートで約27円)です。

このPPDの社名も旧仮名遣いなので、同じように簡単に歴史を調べてみたところ、こちらはDAMRIよりさらに古く、オランダ統治時代の1920年に設立された「Bataviach Elektrische Tram Maatschappij – BVMNV」というトラムの運営会社を祖としていることがわかりました。

“大田中の知らないバス”も多いクラシックバスの展示

インドネシアの地では、まだこんな古いバスが活躍していたのかと驚くと同時に、クラシックバスを愛でる文化が育っていることにも驚かされました。

なんと三菱ふそうMR470。1963年に完成車状態で輸入された。最初のオーナーは国軍で現在は私企業の所有
なんと三菱ふそうMR470。1963年に完成車状態で輸入された。最初のオーナーは国軍で現在は私企業の所有
このバス、なんとまだ現役なのだそう! インドネシアのバス文化は深い
このバス、なんとまだ現役なのだそう! インドネシアのバス文化は深い
メルセデス・ベンツOH408 VOLGREN。前期はオーストラリアのコーチビルダーVOLGREN製、後期はインドネシア製。ちなみに近年日本に導入されているスカニア製連節バスのボディを架装しているのは、このVOLGRENだ
メルセデス・ベンツOH408 VOLGREN。前期はオーストラリアのコーチビルダーVOLGREN製、後期はインドネシア製。ちなみに近年日本に導入されているスカニア製連節バスのボディを架装しているのは、このVOLGRENだ
トランス・ジャカルタ向け最新型メルセデス・ベンツ。ボディは、新鋭カロセリのLaksana社。プラットフォーム方式のためドアの位置が高い
トランス・ジャカルタ向け最新型メルセデス・ベンツ。ボディは、新鋭カロセリのLaksana社。プラットフォーム方式のためドアの位置が高い
1984年製日野レインボーAM100。なんと今はなきヤナセボディ
1984年製日野レインボーAM100。なんと今はなきヤナセボディ
ローカルのMAG社のコンポーネントに老舗カロセリのNew Armadaが架装した電気バス。スカルノハッタ空港で1台が実証実験中とのこと
ローカルのMAG社のコンポーネントに老舗カロセリのNew Armadaが架装した電気バス。スカルノハッタ空港で1台が実証実験中とのこと

日系企業の存在感はどこに?

せっかくINAPAの取材をしたので、本命である企業ブースの展示についてもご紹介しましょう。自動車部品の展示では、韓国、中国、台湾勢が多数のブースを構えていたものの、日系企業の展示はまったくと言っていいほど見かけませんでした。インドネシアといえば日系企業の独壇場だったはずですが、近年のこの存在感のなさは将来が心配になります。もちろん、ショーで見えたことがすべてはありませんが、油断していると客先をじわじわと奪われる気がしてなりません。

中国のランプメーカー。カロセリの車両はだいたいこういうところから部品を購入しています
中国のランプメーカー。カロセリの車両はだいたいこういうところから部品を購入しています
携帯に夢中でまったくやる気がないように感じるが、見た瞬間に飛び出してきてやおら早口で説明をしてくれる。これはどのショーでも中国メーカー共通の特徴だ
携帯に夢中でまったくやる気がないように感じるが、見た瞬間に飛び出してきてやおら早口で説明をしてくれる。これはどのショーでも中国メーカー共通の特徴だ
コピー品もオリジナルもなんでも揃う中国のランプメーカー
コピー品もオリジナルもなんでも揃う中国のランプメーカー
台湾コーナーにはバッテリーメーカーの出展も見られた
台湾コーナーにはバッテリーメーカーの出展も見られた

意外にも世界から集まるRAILTECHの展示

「この国で鉄道技術の展示って何があるんだろう?」と、思いながら「RAILWAY TECH INDONESIA」に入ってみると、やはりメーカーの展示が多い印象。ジャカルタのLRT向けに決まっている韓国「ヒュンダイ・ロテム」、今年早々に部分開業した空港鉄道を担当したカナダの「ボンバルディア」、そして地元の「INKA(Industrial Kereta Api=鉄道製造会社)」のブースがありました。INKAは国内用客車の製造で昔から知られています。

メーカーではありませんが、JR東日本から205系車両を大量譲渡されていることで知られる近郊鉄道「Commuter Line」の展示、ここのところめっきりニュースを聞かなくなったジャカルタ~バンドン間の高速鉄道のブースもありました。来場者はあまり関心を示しているようには見えませんでしたが……。

Commuter Lineのブースは南武線仕様の205系の写真撮影用モックアップと、なぜかダーツゲームを揃えていた。モニターに流れていたマナービデオがおもしろかった
Commuter Lineのブースは南武線仕様の205系の写真撮影用モックアップと、なぜかダーツゲームを揃えていた。モニターに流れていたマナービデオがおもしろかった
古くから客車の製造を行っているINKAは、よくできた鉄道模型のジオラマが好評だった
古くから客車の製造を行っているINKAは、よくできた鉄道模型のジオラマが好評だった
INABIKEでの変わり種。バリの竹を使った自転車。
INABIKEでの変わり種。バリの竹を使った自転車。

ついつい懐かしいバスに興奮してしまったINAPA2018。前回まで、クラシックバスは「新車に混じって適当に展示している」といった感じでしたが、今回はクラシックだけ別のホールに集められていましたし、敷地内試乗もできるようになっていました。しかも古いままでなく、レストアとまではいかないものの、きれいに整備した上で動態保存しているところもまた驚きでした。

こういう実用車をこんな形で愛でる人たちがいるということは、バス好きとしてもインドネシア好きとしても嬉しいこと。自動車を楽しむ趣味、あるいは文化が育ってきているんだなと思います。バスマニアのサークルもいくつかあると聞きましたので、次の機会にぜひ取材したいです。

(取材・写真・文:大田中秀一 編集:木谷宗義+ノオト)

[ガズー編集部]