現役高校生がレストア! 懐かしの「トヨタ スタウト」はどのように復活したのか

今年1月に行われた札幌モーターショー2018で大注目されたクルマがありました。見事に復活を果たした昭和46年製の「トヨタ スタウト」です。最先端のクルマが目白押しの中、多くの熱烈な視線と関心を集めたこのクルマをレストアしたのは現役の高校生たちでした。「旭工スタウト再生プロジェクト」と題して取り組んだチームのリーダーである、北海道旭川工業高等学校 自動車科の羽田太一くん(当時3年生)にお話を伺いました。

「このエンジン動くかな?」クルマ好きの興味から始まった

日本の高度成長期に活躍した「トヨタ スタウト」。ドラマ「北の国から」の主人公 黒板五郎が乗っていたこともあるクルマです。今回レストアされたのは昭和46年製、旭川工業高校で実習車として、たくさんの生徒に使われていました。使命を終えたあとは、同校の実習室の片隅で18年ほど眠っていたそうです。

――このプロジェクトは自分たちで始めようと思ったのですか?

はい、そうです。スタウトが実習室にあるのは知っていたんです。そのときはクルマ全体が物置状態になってはいましたが。僕自身が年代物の古いクルマが好きだったもので、エンジンが動くかどうか、触ってみたいと思い、先生にお願いしました。

代々の先輩方から受け継いだクルマです
代々の先輩方から受け継いだクルマです

「とりあえず、動かしてみよう」というのが始まりでしたので、最初は僕が一人で、ヘッド側をオーバーホールしたり、キャブを分解して清掃して組み直したりしていました。そのうち、今の5人のメンバーが集まってきて、せっかくだから全体をきれいにしたいねとなり、「板金塗装もやろう!」ということになったんです。

でも、板金塗装のやり方がわからなかったので、旭川トヨタさんに教えていただきました。2回ほど学校に来ていただいて、まずクルマの状態を確認してもらい、板金の「叩き方」を教えてもらいました。そのあと、7回くらい僕たちが旭川トヨタさんの工場に出向いて教えていただきました。その時は小さい部品を持って行って、実際に塗ってみたりして。その塗り方を元に、学校の塗装ブースで車体は自分たちで塗りました。

――何が一番大変でしたか?

やっぱり板金ですね。クルマの保管状態はすごく良かったのですが、いたずらでなのか、車体に大きな凹みがあったりしたんです。特に屋根には明らかに人が乗っていたのがわかるくらい凹んでいました。屋根は丸みがあるので形を出すのがとても難しいんです。平らな面と曲面だと難易度がまったく違います。
エンジンは動かすというゴールが、ある程度決まっているじゃないですか。でも、板金は自分の妥協との闘いというか……(笑)。

一通の手紙が完成を早めた!

――どのくらいの期間で完成させたのですか?

だいたい2年間くらいです。最初は、時間があるときだけのんびりやっていました。授業でやっていたわけではなく、放課後に趣味みたいな感じでやっていたので。
そのような中、昨年の12月、僕が札幌モーターショーの実行委員会さんに「こんなクルマがあって、出展してみたいです」という手紙を出してみたんですよ。そうしたら、意外なことにOKというお返事をいただけたのです。そこからは、完成に向けてほぼ毎日作業することになりました(笑)。

札幌モーターショー2018の注目車のひとつに

――札幌モーターショー2018では、すごい人気でしたね。

入れ代わり立ち代わりたくさんの人が立ち寄る。他のブースとはひと味違う熱気が
入れ代わり立ち代わりたくさんの人が立ち寄る。他のブースとはひと味違う熱気が

思っていた以上にたくさん見に来てくださいました。 また、ただ見ているだけではなく、立ち止まって話しかけてくださるんです。「懐かしい!」、「昔、乗っていたんだよ」っていう方もすごくいらっしゃるんですよ。「この(モータショーの)中で一番好きだよ」と言ってくださる方もいましたし、わざわざこのクルマを見るために来てくれたという方もいました。

すみずみまで、のぞきこむ人も
すみずみまで、のぞきこむ人も

僕もお話ししていてすごく楽しかったです。出展することができて、本当によかったなあ、と思います。

最終目標は車検取得

――今後の目標はありますか?

車検を取ることです。
現状でも、クルマとして動かすことはできますが、実は、まだブレーキを完全に直せてはいないんです。オリジナルのものは既に廃番になっているし、ゴム系の部品は劣化が早いため、さすがにもう残っていません。そのため、別の車種の部品で合うものがないか探しています。ブレーキさえ直せば、車検に対する走行に必要な最低限の装備はそろうので、車検取得も可能だと思っています。ナンバープレートをつけて公道を走るところまでやりたいですね。

メンバーの皆さん
メンバーの皆さん

――ありがとうございました。

高校生たちの「好きだ」という気持ちが1台のクルマをよみがえらせたことに驚きました。年代を越えたクルマ好き同士の交流もとても微笑ましかったです。メンバーの6名は今年3月で卒業し、残りの作業は下級生たちが引き継ぐそうです。公道を走るスタウトを見る日を待ち遠しく思います。

(取材・文・写真:わたなべひろみ 編集:ミノシマタカコ+ノオト)

[ガズー編集部]

MORIZO on the Road