「コニカミノルタ」がインドネシアでウィンドウフィルム市場に参入!その背景やライバルは?

「コニカミノルタ」という会社が設立されたのが2003年なので、もしかしたら「コニカ」と「ミノルタ」という二社が統合してできた会社だということを知る人も少なくなっているかもしれません。

コニカは、国産初のカラーフィルム「さくら天然色フヰルム」、世界初の連動ストロボ内蔵35mmカメラ「C35EF(ピッカリコニカ)」、世界初の自動焦点カメラ「C35AF(ジャスピンコニカ)」を発売した会社で、一眼レフカメラでも世界で初めてワインダーを内蔵したFS-1というユニークなカメラがありました。

ミノルタは「α-7000」という本格的オートフォーカス一眼レフカメラを発売した会社です。しばらくは「コニカミノルタ」ブランドのカメラを販売していましたが、2006年にソニーに移管しフィルムおよびカメラ事業から撤退しています。

コニカの全盛期には、フィルムもカメラも富士フイルムと競いあって、それぞれがいい製品を世に送り出していました。昔の二輪車の世界ならホンダとヤマハの「HY戦争」、四輪車なら日産・ブルーバードとトヨタ・コロナの「BC戦争」のような、いいライバル関係だったとユーザーのひとりである筆者は感じていたものです。

そんな会社が「ウィンドウフィルム市場に参入する」と聞き、どんなものかと期待しながら記者発表会に出かけていきました。

高機能を体験するためのサンプルも用意されていた
高機能を体験するためのサンプルも用意されていた

実は金属成分を含有するフィルムが多いという事実

同社は、コニカとミノルタの時代から保有する、フィルムと光学技術を盛り込んだウィンドウフィルムを2011年に販売開始。これまでにマレーシア、ベトナム、タイ、中近東、韓国、中国などで販売してきたとのことです。

「通勤に何時間もかかるこのインドネシアでは、車内でUV(紫外線)にさらされている時間も長時間になります。またSNS、メール送信、Googleマップなど、スマートフォンを使っていることも多い。そこに当社の『ICE-μ』が活躍します」(コニカミノルタ)

たしかに、日中の渋滞中の車内では太陽光にじりじりと灼かれるもの。そこで開発されたのが「ICE-μ」というわけです。

「ICE-μは、画期的な波長コントロール技術が熱線や紫外線をブロック。高い透明度、そして金属薄膜不使用による電磁波透過を実現しました」(コニカミノルタ)

ウィンドウフィルムは大きく次の三種に大別されるとのこと。
(1)単なる着色フィルム
(2)機能付き金属膜あり
(3)機能付き金属膜なし

このたび市場投入されるのは、(3)のタイプ。金属膜があると電波の通りが悪くなるため、車内に到達する電波が弱くなり、通信速度が落ちたり、リモコンロックの感知範囲が狭くなったりというネガがあるのだそうです。しかし、金属膜を使わない「ICE-μ」にはそのネガがなく、十分な電波を通すとのこと。インドネシアでは、「3M」と「V-KOOL」という先発メーカーがありますが、それらの製品には金属膜が使われているそうです。

まずは三菱・エクスパンダーへのOEMで

ICE-μが装着された三菱Xpander
ICE-μが装着された三菱Xpander

ウィンドウフィルムは、新車購入時にディーラーや街のショップで装着するのが一般的ですが、コニカミノルタはOEMで自動車メーカーに供給する道を選びました。これはなかなかいい方法ですね。これだとブランド選択率が100%になりますから。まずは、三菱自動車が東南アジア向けに生産するMPV「エクスパンダー(Xpander)」に装着され、市場に出回ります。

エクスパンダーは2017年8月に発売されて以来、売れに売れており、いまだに2~3ヶ月の納車待ちが続いているほどの人気車。大手メーカー製のフィルムにはエンブレムが装着されているので、エクスパンダーが増えるとともに知名度も上がっていくことでしょう。これからは、三菱以外のカーメーカーにも販路を拡げ、新車装着シェア20%を目指すそうです。

フィルムメーカーのエンブレムはリアウィンドウに
フィルムメーカーのエンブレムはリアウィンドウに
日本のような規制がないこの国ではフロント以外のウィンドウにフィルムを貼るのが一般的
日本のような規制がないこの国ではフロント以外のウィンドウにフィルムを貼るのが一般的

価格は200万ルピアから700万ルピア

OEMは、一旦納入が始まると長期安定かつ売上金の回収が簡単確実な反面、利益が薄いので、一般市販もしなければ利益が上がらないというのが世の常です。コニカミノルタもそのあたりのことは考えているようで、代理店である「PT. Global Auto International」を通じての販売とネットでの直販、2本立てで本年中に一般市販市場に参入する計画があるとのこと。インドネシアではネット販売がとても盛んなので、当然の発想でしょう。「ICE-μ」は、機能の違いで3つのグレードをラインナップ。価格はグレードとクルマの大きさで、200万ルピア~700万ルピア(約1万6000円~5万5000円)とのことです。

アウディA3スポーツバックに装着された3M社のステッカー
アウディA3スポーツバックに装着された3M社のステッカー
フォード・マスタングに装着されたV-KOOLのステッカー。大手メーカーはこのようにブランドを表示する
フォード・マスタングに装着されたV-KOOLのステッカー。大手メーカーはこのようにブランドを表示する

ディーラー装着という下流側を3MとV-KOOLのほぼ二社に占められている市場に、コニカミノルタはOEM供給という上流側からどう攻めるのか? インドネシアに注目する筆者としては、今後の展開の楽しみです。

(取材・写真・文:大田中秀一 編集:木谷宗義+ノオト)

[ガズー編集部]

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