【スーパー耐久】2つの3時間レースが行われた「第2戦SUGO」の魅力と観戦の楽しさをレポート!

予想外の展開やアクシデントが多発することから「魔物が棲む」と言われる、宮城県のサーキット「スポーツランドSUGO」。このサーキットで、4月28日(土)から29日(日)にかけて、「3時間×2」のレースが行われました。それが「ピレリスーパー耐久シリーズ2018第2戦 SUGOスーパー耐久3時間レース」。「3時間×2」としたのは、土日それぞれで違うクルマによる2つのレースが行われたからです。

多彩なクルマが走る「スーパー耐久シリーズ」

「スーパー耐久シリーズ」とは、日本国内で行われている耐久レースのシリーズ。ひとつのレースで走る時間は3時間~5時間。今年は、初の「24時間レース」も開催されます。

走るクルマは街中でよく見る「トヨタ・ヴィッツ」や「ホンダ・フィット」といったコンパクトカーをレーシングマシンに仕立て上げたものから、“誰でも買えるレーシングカー”である「FIA-GT3」マシンまで、実に多彩。「SUPER GT」とは、ちょっと違った顔ぶれが揃います。

今回の「SUGOスーパー耐久3時間レース」の舞台「スポーツランドSUGO」は、日本国内のサーキットの中でもアップダウンが激しく、かつコース幅も狭い難易度の高さで有名なコースです。このレースには、7クラス・54台がエントリーしました。土曜日と日曜日で2つのレースが行われたのは、マシンの速度差を考慮したレースの安全性を確保すると同時に、抜きつ抜かれつの熱いバトルを見せられるようにするため。

もうひとつ、スーパー耐久の魅力として「予選」の順位システムが独特であることが挙げられます。1チーム2~4名のドライバーで戦われますが、彼らは「A/B/C/D」ドライバーのいずれかで登録され、予選順位はA/Bドライバー「それぞれのベストタイムの合算」で決定されるのです。C/Dドライバーにも予選があり、「予選通過基準タイム(各クラス上位3位までの平均110%以内)」をクリアしなければなりません。

豊田章男社長も大喜び! 「グループ2(ST-4/ST-5クラス)」決勝レース

先に行われた「グループ2」レースは、午前中に予選が行われて興奮冷めやらぬ、土曜日の午後に決勝レースが行われました。

予選トップのST-4クラス・86号車 「TOM’S SPIRIT 86」がスタートダッシュを決め、1周ごとに後続との差をグングン広げていきます。しかし、開始から1時間が経過したところで、ミッショントラブルでストップしたマシンが撒いたオイルの処理が行われ、20分以上も追い越し禁止(FCY=フルコースイエロー)に。この間に、多くのチームが義務づけられた2回のピットストップを済ませました。

3時間のレースは、スーパー耐久では短い方。本来なら1回のピットストップでも走れてしまうのですが、2回のストップが義務付けられているため、20分の間に2回のストップを済ませたというわけです。レースが再開すると、ピットタイミングで2位に後退していた86号車が再びトップに立ち、2位に4秒近い差を付けてゴール。昨シーズンから続く連勝を7に伸ばしました。

応援に駆けつけた豊田章男社長も笑顔いっぱいで祝福。2位、3位も86でした。3位の13号車「ENDLESS 86」は、後半でスピンしたにもかかわらず17戦連続の表彰台を獲得
応援に駆けつけた豊田章男社長も笑顔いっぱいで祝福。2位、3位も86でした。3位の13号車「ENDLESS 86」は、後半でスピンしたにもかかわらず17戦連続の表彰台を獲得
ST-5クラスでトップを争ったのは4号車「THE BRIDE FIT」と2号車「TEAM221ロードスター」。オイル漏れによるコース処理で一時FCYになったものの、4号車はトップを維持。ところがピットに入る際のスピードリミッターの誤作動でペナルティを受け3位に後退。
ST-5クラスでトップを争ったのは4号車「THE BRIDE FIT」と2号車「TEAM221ロードスター」。オイル漏れによるコース処理で一時FCYになったものの、4号車はトップを維持。ところがピットに入る際のスピードリミッターの誤作動でペナルティを受け3位に後退。
ST-5クラスは、同じホンダ・フィットの67号車「YAMATO FIT」がトップの座に滑り込みチェッカーを受けた
ST-5クラスは、同じホンダ・フィットの67号車「YAMATO FIT」がトップの座に滑り込みチェッカーを受けた

猛追撃で湧いた「グループ1(ST-X/ST-TCR/ST-1/ST-2/ST-3)」決勝レース

日曜日は、メインイベントである「グループ1」の決勝レース。出場するドライバーは強豪ぞろいで「SUPER GT」に参戦するドライバーもいます。トップスタートは、ST-Xクラス・777号車「D’Station Porsche」。その後ろを2台のGT-Rが追っていく展開でした。変化があったのは、50周直前。トップが今年から参戦した82号車「Phoenix Racing Asia R8」になり、レースの半分となる70周目には、2位の777号車と50秒の大差を築き上げていました。

トップが逆転した瞬間のSPコーナー。みるみる差が詰まっていく様子を撮影しながらシャッターを押す指に力が入った
トップが逆転した瞬間のSPコーナー。みるみる差が詰まっていく様子を撮影しながらシャッターを押す指に力が入った

777号車は、ここで諦めずに神がかり的な力走で他クラスのマシンをかき分けながら差を詰めにかかり、105周目のバックストレートからの大きく右に回り込む、通称“馬の背コーナー”で逆転。その勢いのまま82号車に42秒という大差で勝利しました。

優勝した777号車「D’Station Porsche」ドライバー。左から近藤翼選手/星野敏選手/荒聖治選手
優勝した777号車「D’Station Porsche」ドライバー。左から近藤翼選手/星野敏選手/荒聖治選手

グループ1には、トップクラスのST-Xのほかにも、ST-TCR、ST-1、ST-2、ST-3と4つのクラスがあり、さまざまなクルマが熱い走りを見せてくれました。

昨年から新設された4ドア・5ドアの市販車ベースのレース専用車「TCR車両」だけの「ST-TCR」クラスは、新型ホンダ・シビックTCRを駆る97号車「Modulo CIVIC TCR」が、安定した走りで開幕2連勝を飾った
昨年から新設された4ドア・5ドアの市販車ベースのレース専用車「TCR車両」だけの「ST-TCR」クラスは、新型ホンダ・シビックTCRを駆る97号車「Modulo CIVIC TCR」が、安定した走りで開幕2連勝を飾った
2台のポルシェ911GT3カップカーがエントリーする「ST-1クラス」は、31号車「Nissoku Porsche991GT3Cup」が勝利。このクラスは、参戦台数の少なさを有効利用し、プロドライバーがジェントルマンドライバーとチームを組んで指導する場となっている
2台のポルシェ911GT3カップカーがエントリーする「ST-1クラス」は、31号車「Nissoku Porsche991GT3Cup」が勝利。このクラスは、参戦台数の少なさを有効利用し、プロドライバーがジェントルマンドライバーとチームを組んで指導する場となっている
「ST-2クラス」は、4台のみのエントリーだったが、決勝レースは荒れ、フロントに痛々しいダメージを受けながら59号車「DAMD MOTUL ED WRX STI」が開幕2連勝
「ST-2クラス」は、4台のみのエントリーだったが、決勝レースは荒れ、フロントに痛々しいダメージを受けながら59号車「DAMD MOTUL ED WRX STI」が開幕2連勝
マークXやレクサスRCなどプレミアムカーのエントリーが多い「ST-3クラス」は、開幕戦で惜しくも2位だった15号車「岡部自動車 T-MAN Z34」が、開幕戦で優勝した38号車「muta Racing ADVICS IS 350 TMS」を8秒差で抑え、雪辱を果たした
マークXやレクサスRCなどプレミアムカーのエントリーが多い「ST-3クラス」は、開幕戦で惜しくも2位だった15号車「岡部自動車 T-MAN Z34」が、開幕戦で優勝した38号車「muta Racing ADVICS IS 350 TMS」を8秒差で抑え、雪辱を果たした

2グループ制はサーキット観戦初心者でも見やすい!

今回のような2グループ制のレースは以前から行われていましたが、筆者が実際に2グループ制のレースを観戦するのは今回が初めてでした。その上で感じたのは、「レース展開がわかりやすい」ということ。一斉に50台以上も走ると、視覚的にごちゃごちゃになって展開がよくわからなくなります。

展開がわかりやすい2グループ制は、サーキット観戦初心者でも見やすいレースと言えそうです。またドライバーたちにとっても、より実力を発揮しやすく、白熱したレースをお客さんに見せられると言えるでしょう。

レースとは直接関係ないが、SUGO内のレストラン「KUNUGI」にある日高見牛の「牛バラ角煮丼(930円)」はかなりのボリューム。耐久レース観戦にはうってつけの一品!
レースとは直接関係ないが、SUGO内のレストラン「KUNUGI」にある日高見牛の「牛バラ角煮丼(930円)」はかなりのボリューム。耐久レース観戦にはうってつけの一品!

今回は、第2戦 SUGOスーパー耐久3時間レースを通じて、スーパー耐久のおもしろさをお伝えしてきましたが、いかがだったでしょうか? 耐久レースではありますが、スーパー耐久は比較的、観戦しやすいレースです。サーキット初心者の方も、ぜひシーズン中にサーキットに足を運んでみていただきたいと思います。ちなみに、次戦は富士スピードウェイで行われる「富士SUPER TEC 24時間レース」です。国内レースとしては10年ぶり、富士スピードウェイにとっては50年ぶりの24時間レース開催となります。こちらも楽しみ!

(取材・文・写真 クリハラジュン 編集:木谷宗義+ノオト)

[ガズー編集部]