中国メーカー「DFSK」も上陸! IIMS:インドネシア・インターナショナル・モーターショー2018の見どころを紹介

2018年4月19日(木)~29日(日)、インドネシア・ジャカルタにある「ジャカルタ・インターナショナル・エキスポ」にて、「インドネシア・インターナショナル・モーターショー2018」(以下:IIMS)が開催されました。今回は、インドネシアのモーターショー事情や上陸が続く中国ブランド車、そしてショーの見どころについてご紹介していきます。

ディーラー主導のローカルショー

「モーターショーウォッチャー大田中がオススメする『世界のモーターショー』前編」でもちらりとご紹介しましたが、インドネシアではモーターショーが4月と8月の年2回、開催されるほか、クルマやバイクの展示も多い「ジャカルタ・フェアー」という巨大夜店も5月~7月に行われるため、都合3回「クルマを見て・買う機会」があります。

4月のIIMSはディーラー主導のローカルショーで、8月開催の「ガイキンド・インドネシア国際オートショー(GIIAS)」というショーの方は、インドネシア自動車工業会(通称ガイキンド)が主催するメーカー主導の国際格式のショーです。しかし、ここのところの入場者数を見るとIIMSの方が多く、ローカルショーとは言え、メーカーとしても無視できなくなってきたという話もチラホラ聞こえてきます。IIMSには二輪・四輪あわせて38ブランド、350社の展示があり、会期中に52万5000人の入場者、3兆4000億ルピア(約273億円)の商談を見込んでいるとのことでした。

ジョコウィ大統領のスピーチも

ショーの開幕当日は、9時から開会式があり、そのあと大統領専用時間があるため、開幕は12時からというのが通例です。オープニングセレモニーでは何人かの来賓がスピーチするのですが、そのうちの一人が、「RI 1のナンバーを初めて見たよ」と発言して会場が笑いで包まれました。「RI 1」は、大統領専用車のナンバープレート。つまり、「ジョコ・ウイドド大統領(通称ジョコウィ)が会場に来たのは初めてだ」ということを意味します。これまでは「RI 2」、つまり副大統領しか来ていませんでしたから。

会場入口には並ぶ現大統領専用車(2002年式メルセデス・ベンツS600 Guard)と、初代大統領スカルノ氏の専用車(キャディラック・展示用)
会場入口には並ぶ現大統領専用車(2002年式メルセデス・ベンツS600 Guard)と、初代大統領スカルノ氏の専用車(キャディラック・展示用)

主賓は大統領なので当然スピーチもするのですが、ジョコウィ大統領が何を言うのかを筆者は密かに楽しみにしていました。なぜなら、ブディオノ氏が副大統領、ジョコウィ氏がジャカルタ市長だったとき、モーターショーのオープニングスピーチでブディオノ氏が、「毎日毎日ジョコウィからのプレッシャーを受けているんだ。この渋滞をなんとかしろと。渋滞解消は国の仕事だから」と発言し会場を沸かせたことがあったからです。ときは流れ、その本人が大統領になったわけです。さぁ何を言うのでしょうか?

開会式会場での大統領スピーチ
開会式会場での大統領スピーチ

結果は何もありませんでした。ただ、MRT(ジャカルタ都市高速鉄道)、LRT(ジャカルタ軽量軌道交通)、高速道路の重層化などの施策を着々と進めているので、本人としてはやることはやっていると思っているのではないかと想像しています。

大統領巡回を取材する記者の数もすごい。護衛の数も多く、油断しているとはじき飛ばされる
大統領巡回を取材する記者の数もすごい。護衛の数も多く、油断しているとはじき飛ばされる
やっと見えた。三菱の新型車トライトン・アスリートの説明を受けるジョコウィ大統領
やっと見えた。三菱の新型車トライトン・アスリートの説明を受けるジョコウィ大統領

中国メーカーからもう一社、「DFSK(東風小康汽車)」が進出

インドネシアでは昨年、中国のメーカー「Wuling(五菱)」の工場が稼働して納車が進んでいます。そこに今回、「DFSK(東風小康汽車)」が進出しました。どちらも販売するのは3列シート7人乗りのMPV。インドネシアでもっとも売れ筋のモデルです。

今回お披露目されたDFSKのGlory 580。インドネシア初の7年15万キロのワランティーに会場どよめく。
今回お披露目されたDFSKのGlory 580。インドネシア初の7年15万キロのワランティーに会場どよめく。

新車販売の90%以上を日本車が占めるインドネシア市場に挑戦した中国メーカーは、二輪車時代から何社もありました。しかし、いずれも数年で撤退してしまっています。言ってみれば“屍累々“の状態。しかしこの二社は、どうやら屍に学んだ節があるようです。いくつかあるのですが、大きなものが、DFSKが打ち出した7年ワランティー(保証)です。

1.5Lターボと1.8L自然吸気エンジンの2本立てで、価格は2億200万~3億5000万ルピア(約170万~270万円)。日本車と比べて特に安くはない
1.5Lターボと1.8L自然吸気エンジンの2本立てで、価格は2億200万~3億5000万ルピア(約170万~270万円)。日本車と比べて特に安くはない

この二社も屍になるのか? ちゃんと一定の地位を築けるのか? この答えは、早ければ3年後には出ているでしょう。クルマを資産と考え、またそれなりの価値があるこの国で最重要視されるのがリセールバリューです。日本では考えられませんが、5年で15万キロも走ったクルマが新車価格の70~80%で売れることもあります。いくら新車価格が安くても、中古価格がそれ以上に下がったり即時換金性が悪かったりすれば、この国では受け入れてもらえません。

それがどうなるかはそのときがこなければわからないことですが、リセールバリューに大きな影響を与えるのが故障率、ディーラーの数。WulingとDFSKが、そこにどんな手を打ってくるかが注目です。

ひと足先に来たWulingは同郷のコンペティターの登場に何を思う? 価格インパクトはこちらの方が大きく、Confero1.5の1億3200万(約100万円)~Cortez1.8の2億6400万ルピア(約200万円)と日本車よりかなり安い
ひと足先に来たWulingは同郷のコンペティターの登場に何を思う? 価格インパクトはこちらの方が大きく、Confero1.5の1億3200万(約100万円)~Cortez1.8の2億6400万ルピア(約200万円)と日本車よりかなり安い

ショーの見どころをピックアップ!

ここからはIIMSに登場したクルマの中から、筆者が注目したクルマやショーの見どころを写真とともにご紹介していきます。

スズキは新型「エルティガ」をワールドプレミア
スズキは新型「エルティガ」をワールドプレミア
ホンダは「スモールRSコンセプト」を初披露
ホンダは「スモールRSコンセプト」を初披露
トヨタの話題は「C-HR」。しかし輸入車のため価格が高く、4億8000万ルピア(約380万円)はフォーチュナーとほぼ同じ
トヨタの話題は「C-HR」。しかし輸入車のため価格が高く、4億8000万ルピア(約380万円)はフォーチュナーとほぼ同じ
現地生産からは撤退しているシボレーは、タイ製の新型「コロラド」と「トレイルブレイザー」をお披露目。トラック100周年だそう
現地生産からは撤退しているシボレーは、タイ製の新型「コロラド」と「トレイルブレイザー」をお披露目。トラック100周年だそう
メルセデス・ベンツはEクラス・プラグインハイブリッドを展示したものの市販予定はなし。ハイブリッド車は「エンジン2基搭載車」の扱いで天文学的な税金をかけられるためだ
メルセデス・ベンツはEクラス・プラグインハイブリッドを展示したものの市販予定はなし。ハイブリッド車は「エンジン2基搭載車」の扱いで天文学的な税金をかけられるためだ
ダイハツはモディファイコンテストを頻繁に開催している。このクルマはダイハツ「XENIA(セニア)」
ダイハツはモディファイコンテストを頻繁に開催している。このクルマはダイハツ「XENIA(セニア)」
三菱、久々のヒットモデル「Xpander(エキスパンダー)も素材になっていた
三菱、久々のヒットモデル「Xpander(エキスパンダー)も素材になっていた
屋内にもスカルノ大統領専用車が展示されていた。これもキャディラックだ
屋内にもスカルノ大統領専用車が展示されていた。これもキャディラックだ

このほか、二輪車メーカーも日米欧のメジャーなメーカーが出展していて、そちらでも熱い商談が繰り広げられていました。インドネシアでは150ccまでのスクーターが飽和状態にあるので、既存メーカーも高価なビッグバイクに力を入れ始めています。また、もともとビッグバイクが多い欧米のメーカーには、新たなビジネスチャンスになっているようです。今回初めて10億ルピア超(約780万円)のハーレーが展示されていましたが、SOLDの札が下げられていました。

さらにホンダは、世界初の2輪ハイブリッド「PCXハイブリッド」をさらりと展示。5000万ルピア程度(約40万円)で市販開始とのこと
さらにホンダは、世界初の2輪ハイブリッド「PCXハイブリッド」をさらりと展示。5000万ルピア程度(約40万円)で市販開始とのこと

大統領の挨拶から各メーカーの展示まで、「インドネシア・インターナショナル・モーターショー2018」の模様をお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか? 国や地域が変わればショーの雰囲気も大きく変わるものです。「GIIAS」も「ジャカルタ・フェアー」も、海外モーターショーの中では比較的参加しやすいショーだと思います。どれでもかまわないので、興味がある方は、ぜひ一度現地に足を運んでみてください。

(取材・写真・文:大田中秀一 編集:木谷宗義+ノオト)

[ガズー編集部]

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