スマホがクルマに? 「運輸・交通システムEXPO」と「ワイヤレス・テクノロジー・パーク」レポート

5月23日(水)から25日(金)の3日間、東京ビッグサイトにて「運輸・交通システムEXPO」が開催されました。安全運転や事故防止、ドライバーの健康管理など、運輸業界の課題を解決するシステムや製品、技術を紹介する展示会です。また、同時開催の「ワイヤレス・テクノロジー・パーク」は、無線通信技術の研究開発に焦点を当てた専門イベント。こちらでもクルマ関連の技術や製品がいくつか紹介されていました。

今回は2つのイベントの中から、ドライバー目線で気になった展示を紹介します。

<外装・内装設備関連>

●株式会社三陽工業/フロントウィンドウ用飛び石対策フィルム「クリアプレックス」
クリアプレックスは、飛び石からガラスの割れを守るアメリカ製のフィルム。主にバスやタクシーなど商用車で使用されています。ワイパー傷のつきにくいハードコートで、紫外線も99%カット。
現在の制度では、車両保険を使用したガラス交換は1等級ダウンになってしまいます。担当者は「このフィルムを貼れば交換せずに済みますし、コストも安い。普通の乗用車であれば、施工費含めて5~6万円程度です」と話していました。

フィルムあり(左側)、フィルムなし(右側)でそれぞれ衝撃を与え、損傷具合を比較していた
フィルムあり(左側)、フィルムなし(右側)でそれぞれ衝撃を与え、損傷具合を比較していた

●JUKI株式会社/スリープバスター
国土交通大臣賞を受賞している「スリープバスター」は、ドライバーの体調をモニタリングするシステム。シートの中にセンサーが入っており、脈動による音や振動を検知します。生体信号をモニタリングすることにより、疲労度や気のゆるみを画面で表示。また、本格的な眠りに入る前にあらわれる「入眠予兆現象(自律神経の変化)」を検知して警告。ドライバーに休憩をうながすことで、居眠り運転を防止します。すでに物流会社や夜間の営業車などで使用されているそうです。

疲労度や集中度、眠気などを小型の画面で知らせてくれる。非拘束センサーなので、ドライバーへの負担はない。
疲労度や集中度、眠気などを小型の画面で知らせてくれる。非拘束センサーなので、ドライバーへの負担はない。

<ドラレコ・映像関連>

●株式会社アクト/ドライブレコーダーステッカー
車両のラッピングデザインや施工を行っているアクトは、「ドライブレコーダー録画中」のステッカーを紹介。担当者は「外に向けて表示することで、あおりや幅寄せなど悪質な運転を未然に防ぐ効果があります。実際に録画していなくても、ステッカーだけで抑止効果が出たという話もありますよ」と説明していました。

●BlackVue(韓国)/4Kドライブレコーダー
韓国のメーカー・BlackVueは、世界初の4Kドライブレコーダーを展示。ブース内では既存のフルHDと比較した映像を紹介していましたが、夜間の光やナンバープレートが鮮明に映し出されていました。日本での知名度はまだ低いようですが、欧米では画質の安定性などで高い評価を得ているとのこと。無料のアプリを使えば、スマホやパソコンで動画の編集・管理を行うことができます。

●株式会社システム計画研究所/AIによる運転中の通話・スマホ操作行為検出
こちらはAI(人工知能)がドライブレコーダーの映像から「携帯電話で通話」「スマホ操作」などの行為を検出するシステム。現状、多くの運送会社ではドライバーの安全運転チェックのため、ドライブレコーダーを導入しています。しかし、動画の量が多すぎて管理者がチェックしきれないという課題もあるようです。
このシステムではAIが危険運転の疑いをスコア化しピックアップ。ドライバーへの教育にも有効活用できます。

ドライバーが電話をかける様子を捉えたため赤く表示され(写真左)、同時に危険度スコアも上昇している(画面右)
ドライバーが電話をかける様子を捉えたため赤く表示され(写真左)、同時に危険度スコアも上昇している(画面右)

●株式会社INBYTE/サラウンドビューシステム
「サラウンドビューシステム」とは、クルマの上から俯瞰で見下ろしたような映像を作り出し、周囲360度を分かりやすく表示するシステムです。
クルマの前後左右に取り付けた4つのカメラによって映像を合成。駐車時に便利なだけでなく、死角になりがちな斜め後方もしっかりと確認することができ、見えづらい障害物も認識しやすくなります。大型トラックやトレーラーなど、死角の範囲が広いクルマには有効なシステムといえるでしょう。

クルマの前後左右に取り付けたカメラにより、「俯瞰映像」を合成して表示(写真左上の画面)
クルマの前後左右に取り付けたカメラにより、「俯瞰映像」を合成して表示(写真左上の画面)

<EV関連>

●スマートエナジー株式会社/量産型EVバス、トラック
リチウムイオン電池のインバーター開発を行っているスマートエナジーは、バスやトラックなど大型車のEVを紹介。すでにアメリカや中国で使用されているとのこと。
現状、日本で走っているEVバスはほとんど既存のクルマからの改造で、価格も9,000万円~1億円と高額。しかし、こちらのEVバスは半分以下の価格で提供できるそうです。
CEOの佐藤さんは、「昨年、テスラが“EVトレーラーを2019年に投入する”と発表しました。弊社はそれよりも早くリリースしたい」と、日本向けの20トンEVトレーラーを強くアピールしていました。

●ソニー株式会社&株式会社NTTドコモ/コンセプトカート「SC-1」
こちらのクルマは、“人を乗せて走るスマホ”というコンセプトでソニーが開発した電動カート。4Kの超高感度カメラが4台内蔵されており、取り込んだ画像を運転席の画面に映し出します。つまりドライバーは目視ではなく、カメラを通してモノをとらえることになるのです。
担当者は「現在の4Kカメラは人間の目をはるかに上回る能力を持っており、夜でも昼間と同じような状態で見ることができます。画像を転送し、離れた場所から遠隔操作する実証実験も行っています」と説明。
側面には4Kの液晶ディスプレイを搭載。近くにいる人をカメラで認識し、それに合わせて広告を表示するといったシステムを考えているそうです。

安全運転・事故防止に関する製品から最新型のコンセプトカートまで、予想以上に幅広いジャンルの企業が出展していた今回のイベント。
目指すものはそれぞれ違いますが、安全かつ快適な交通システムを願う気持ちは共通しているように感じました。

(取材・文・写真:村中貴士 編集:ミノシマタカコ+ノオト)

[ガズー編集部]