その名も「場巣」、琴参バスの廃車体を使った定食屋

香川県に琴参バスの廃車体を使った定食屋がある。そう聞いたのが今年のはじめ。調べてみるとSNSではたびたび話題になっているようです。お店の名前は「場巣」。バス好きとして「一度は見に行かねば」と、さっそく訪ねてみました。

バス車体は2台ある

高松市内から西の方にクルマで1時間弱。三豊市高瀬町の田園風景の中に突如、バスの廃車体が現れました。よく見たら2台あります。どちらもモノコック時代のボディで「日野RE」というバスのようです。中はどうなっているのか。探検してみましょう。

「自動扉」と書かれたドアがお店の入り口。もちろん手動で開けて入る
「自動扉」と書かれたドアがお店の入り口。もちろん手動で開けて入る

「自動扉」と書かれたドアを手動でごろごろと開けて中に入ります。“後乗り”で前ドアは締め切りという、現役時代にはないタイプです。手前の車体は一人から数人の少人数用のテーブル席に、奥にあるもう1台の車体は貸し切り宴会に使える座敷になっていました。うまい使い分けです。

手前のバスの車内前方は、カウンター席が中心。よく見るとハンドルが残されている
手前のバスの車内前方は、カウンター席が中心。よく見るとハンドルが残されている
もう1台のバスは宴会用のお座敷に
もう1台のバスは宴会用のお座敷に

一番のおすすめは唐揚げ定食。でも餃子も

昼食時の店内(車内)には、この近くで仕事をしている人たちが入れ替わり立ち替わりたくさん訪れていました。取材時はあいにくの雨模様だったのでそれほどでもなかったですが、晴天なら満席で外に列ができるほど盛況なんだそうです。

500円でおなかいっぱいの唐揚げ定食
500円でおなかいっぱいの唐揚げ定食

昼食のメニューは5種類の定食。どれもおいしそうですが、一番人気だという唐揚げ定食をいただくことにしました。熱々の唐揚げはほんとにおいしく、量もたっぷりです。価格はどれも500円! 流行らないはずがないですね。

夜のみ提供となる手作り餃子もとってもおいしい
夜のみ提供となる手作り餃子もとってもおいしい

車体を詳しく見てみよう

バス好きの視点で、少し細かく紹介してみましょう。押しボタンや方向幕を回すレバーはもちろん。よくよく見ると、当時の方向幕、バス会社のエンブレム、バスのエンブレムなどがそのまま残っていました。これはなかなかの値打ちものではないでしょうか。剥げている塗装の下からは琴参時代のカラーリングが見えているし、状態も良さそう。丁寧に剥がせば往時の姿を回復できるかもしれません。

このバスがこの地に据えられたのが、約40年前。しかし、車体については「昭和40年~50年ごろに現役で活躍していた車体だと聞いていますが、詳しいことはわかりません」と店主は言います。新車から高松にいたのか、あるいは中古でこの地にやってきたのか、見える部分は隈なく見たのですが、銘板の類いが見つからなかったため、それをヒントに素性を探ることはできませんでした。次なる課題は、この車体の歴史を調べることかもしれません。

経営は楽ではないけれど

前オーナーから引き継ぎ25年になるという現店主の村上さんにいろいろ訊いてみました。お客さんはほとんどが近所の常連さんで、忘れたころに日本各地からバスマニアがやってくるとのこと。しかし、昼定食は500円均一でやっていることもあり、経営は「正直かなりキツい」と言います。消費税率アップのタイミングで値上げをしたこともあるものの、客足が遠のいてしまったためやむなく500円を続けているそう。

右の女性が現店主の村上さん。左の男性は常連のお客さん
右の女性が現店主の村上さん。左の男性は常連のお客さん

目下の悩みは、値上げできないことと、塗装剥げが進んできたボディの補修費用がなかなか捻出できないことだそうです。それでも、この場所や村上さんの作るご飯が好きでやってくる人は多く、村上さんはそれに応え続けています。夜も居酒屋として営業しているので、「そちらの方にもぜひ来てください」とのこと。廃バスを使った定食屋「場巣」、香川県にいらっしゃる方は、ぜひ立ち寄ってみてください。

<場巣>
住所:香川県三豊市高瀬町下勝間1080-5
営業時間:昼11:30~14:00、夜16:00~22:30 (L.O.)
電話:0875-73-6946
定休日:火曜日(予約あれば営業)

(取材・写真・文:大田中秀一 編集:木谷宗義+ノオト)

[ガズー編集部]

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