タクシーやトラックで採用される「LPG車」の仕組みやメリット
タクシーを利用する際、荷物を入れるのにトランクを開けてもらったときに、トランク内に見慣れぬボンベをみた経験はありませんか? それはLPG(液化石油ガス)のタンク。実は、多くのタクシーはガソリンではなく、LPGを燃料として走る「LPG自動車」なんです。あまり馴染みのないこのクルマ、いったいどんな仕組みや特徴を持っているのでしょうか? ガソリンとLPG両方が使えるバイフューエル(併用)車に改造しているLPG内燃機関工業会にお聞きしました。
基本的構造はガソリン車と同じ! 改造も普通のクルマで可能なのが魅力
LPG自動車がそもそもどんなものなのかを聞いてみると、「基本的にガソリン車と構造は変わりません。燃料がガソリンか液化ガスかの違いだけ。だから、ガソリン車をLPG車に改造することができるんです」という答えが。使用しているガスも「家庭で使っているプロパンガスと、大きな違いはありません」とのことでした。法人だけでなく、個人でも所有することもできると言います。
- こうした小型トラックでもLPG車に改造されるケースは多い
ガソリン車をLPG車に改造する場合、スパークプラグなどもそのまま使えるそうですが、スパークプラグを持たず、圧縮により着火を行うディーゼル車がベースの場合はさらに細かい改造も必要になるそうです。改造費用は車種によってまちまちですが、通常のガソリン乗用車の場合50万円前後のようです。
- 乗用車のトランク内に設置されたLPGボンベ
仕組みはほぼそのままでいいとはいえ、燃料となるLPGを車載するには専用のボンベ(タンク)が必要となります。LPGボンベ自体は、10万円前後。燃料補給は、LPG専用のスタンドで充填します。
なお、LPGボンベには、車検とは別に6年に1度の検査が義務付けられており、社用車等の場合、ボンベ検査にもクルマが使用できるように、同型式ボンベ(リンク品)に載せかえるのが一般的なのだそう。「ガスボンベを車載する」と聞くと安全面が気になりますが、「安全対策が万全、丈夫な作りなので、万一の事故などでもガソリンタンクより安全なケースが多い」とのことでした。
魅力はなんといっても燃費! 業務用車両として重用される理由でもある
では、なぜわざわざガソリン車をLPG車に改造するのでしょうか? その答えはひとつ、「経済性」です。LPG内燃機関工業会によると「約5万km走行すれば、改造費を考慮しても経済性で有利になります。そのため、走行距離の多いタクシーや配達業のクルマの多くが、LPG車となっているんです」とのこと。
また、現状では、ガソリンよりもLPGの方が、価格の変動が穏やかだと言われています。コストの安定性という点も、クルマを走らせる業者にとってはメリットになるようです。チェッカーキャブ無線に加盟する都内のタクシー会社、平和自動車交通株式会社も「現在、法人タクシーのほとんどがLPG自動車となっています」と話します。
- このようにセダンタイプの場合、LPGガス車でも見た目は全く変わらない
なお、ほとんどのLPG車は、普通のガソリン車と見た目に大差がありません。LPG内燃機関工業会、平和自動車交通とも、イベントなどでLPG車を展示した際に「液化ガスで動く自動車なんですと」と説明する「え、そうなんですか!?」とビックリされることも多いと話していました。
見た目ではわからないので、気に留めていませんでしたが、さまざまな業種でLPG車は役立っているようですね。タクシーや運送会社のトラックを見たら、ちょっとその仕組に気を配ってみたいです。
■LPG内燃機関工業会
住所:千葉県佐倉市大篠塚1570
電話:043-483-6336
Web:http://www.lpg.gr.jp/
■平和自動車交通株式会社
Web:http://www.heiwajikou.co.jp/
(取材・文:斎藤雅道、編集:木谷宗義+ノオト)
[ガズー編集部]
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