「伝導よしみ」に「ピンクレディ」……キャニコムのネーミングセンスが面白い
福岡県のうきは市という小さな町に本社を置く「株式会社筑水キャニコム」は、農機具や山林などで使う器具の製造・販売を行うメーカー。決して大きいとはいえない会社ですが、驚くような商品のネーミングでヒット商品を連発し続けているのです。そのネーミングは、「え? 正式名称がその名前なの?」と思わず聞いてしまう「おやじギャグ」のオンパレード!
そこで、なぜこのようなネーミングをしているのかを株式会社筑水キャニコムの包行均(かねゆきひとし)会長にお伺いしました。
「面白ネーミング」は会長の経営哲学
- 株式会社筑水キャニコム 包行均会長
独自のものづくり精神とネーミング術は、多方面の経営者から大きな支持を集めている。「ものづくりは、演歌だ」(ダイヤモンド社)、「これぞ、ネーミング~」(日刊工業新聞社)などの著書がある他、講演依頼も多く寄せられており、毎年全国30カ所以上で講演会を行っている。
株式会社筑水キャニコムの創業は1948年。約70年も前から農機具や土木建設用の機械の製造、販売を行っています。そもそもなぜこのようなネーミングを思いついたのでしょうか。
「どんな業界でも他社との競争に必要なのは、よりよい品質であること、機能性が高いこと。しかしそれは当たり前であって、さらに重要なのは商品の名前です。中身が素晴らしいものほど、ネーミングが大切になってくるんです」
そんなキャニコムが手がける商品の名前は、思わず吹き出してしまうか、意味が分かるとニヤリとしてしまうものばかり。
- 面白ネーミングの原点となった農業用運搬車「ピンクレディ」
- ネーミング大賞へ応募して初受賞となった記念すべき「伝導よしみ」。発電機を搭載した運搬車です
- 乗用型草刈車「草刈機まさお」。ネーミングは、会長がひげ剃りの真っ最中にひらめいたそうです。
どれも親しみやすくて、愛着を持ってしまうネーミングです。さらにネーミング以外にも特徴的なのが、そのデザイン性です。カラフルで丸いボディは、機能性を重視する無骨な農機具のイメージと一線を画しています。
「ネーミングで認知度が向上しても、デザインが良くなければネーミングは生きてこないし、ブランドを築くことはできないと考えています。自社には『D(デザイン)・N(ネーミング)・B(ブランド)戦略室』というネーミングに合った製品デザインを担当する部署があって、お客様に製品を楽しく、かつ愛着を持って使ってもらえるように、日々探求をしているんです」
乗用車ならいざしらず、農機具メーカーにデザインを担当する部署があるのは、かなり珍しいことではないでしょうか。
そして、こうしたキャニコムのこだわりはネーミングやボディだけではなく、使いやすさもとことん追求しているのだそうです。そのため、「お客様にとって本当に良い商品であると納得がいかなければ、製品は一切作らない」とのこと。そこには、キャニコムの「ものづくり」へ対する情熱がありました。
ものづくりは演歌である
面白いネーミングと可愛らしいボディが目をひくキャニコムの商品ですが、ものづくりの原点は「義理と人情」にあると言います。
- 「ものづくりは演歌だ」と言う包行会長は歌が大好きだそうで、自身が作詞した「ものづくりは演歌だネ」も発表!
「製品を作る時には、どうしてもコストを重視して考えてしまいがちですが、それでは大手企業と同様に顔の分からない不特定多数を相手に製造している事になってしまいます。キャニコムは商品を製造する時には、『困っているたったひとりの人』のために作るんです。農業は体を酷使する重労働。どうすればつらい作業が楽になるか、あまった時間を余暇にまわすことができるようになるかを考えているんです。そのため、安く作ってほしいという要望は一切受けません。現在では自社の姿勢が受け入れられるようになって、こうしたリクエストはこなくなりましたね」
製品の価格も購入者にとっては重要なことですが、本当に大切なのは「どうして購入するのか」という現在抱えている問題を解消すること。キャニコムがいかに相手と真摯に向き合っているかがうかがえます。
包行会長いわく、「ものづくりとは演歌。人と人との心のつながりである」とのこと。
キャニコムは、決して大きいとはいえない会社です。だからこそ、大勢ではなく、目の前にいるたったひとりの相手に向き合うことができ、その結果、大きな成果をあげているのではないでしょうか。事実、現在では日本にとどまらず、世界46カ国に取引を広げています。
一見ふざけているようなネーミングにも、会長の「ものづくり」に対する深い想いと、採算よりも人への思いを重視した情熱がこめられていました。
(文:ヤマウチ 編集:ミノシマタカコ+ノオト)
[ガズー編集部]
取材協力
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