【気になる珍しいクルマ図鑑】その2:レクサスLFA まるで走る管楽器。響きわたる快音で気絶できそう
レアなクルマを紹介し、接した印象をお届けする「気になる珍しいクルマ図鑑」。今回はレクサスのスーパーカーLFAを紹介しましょう。レクサスが生み出した、ほぼ手作りで少量だけが販売された希少なクルマです。
LFAってどんなクルマ?
LFA(エルエフエー)はレクサスが2010年12月からわずか500台を販売したスーパーカーです。車体はもちろんエンジンもLFAのためだけに専用で開発されたもので、排気量4800ccのV型10気筒。出力は標準仕様が560馬力。スペシャル仕様は570馬力でした。
スーパーカーの多くはエンジンを座席よりも後ろに積む「ミッドシップ」ですが、LFAは車両前部に積むのも特徴です。レクサス(トヨタ)の最高の技術を集結し理想を追求した、夢のモデルといってもいいでしょう。
世界中で販売されましたが、もちろん限定500台に対して申し込みは予約時点でオーバー。抽選に当たった人だけが購入できました。
生産工程の多くは熟練の作業者が手作業で組み立てるため、生産は月に20台ほど。2012年12月に500台目の車両がラインオフし、生産が終了しました。そのうち約50台は、走行性能を高めたニュルブルクリンクパッケージです。
LFAのココが凄い!
なんといってもLFAのすごいところは、フェラーリやランボルギーニなど世界のライバルたちと互角のポジションを得ているスーパーカーだってこと。ボディはレーシングカーと同様にカーボン&アルミ製。エンジンはレクサスの一般的なモデルとはまったく関係のない専用設計のV10で、出力もライバルのスーパーカーと肩を並べるレベルの500馬力台後半。そして価格は、国産量産車の記録をダブルスコア以上で塗り替えて史上最高額となった3750万円。すべてがスーパーな存在です。
今でこそ2世代目のホンダNSXがほぼ同じポジションへ到達しましたが、スーパーカーの魂ともいえるNSXのエンジンはセダンにも搭載しているV6がベース。いっぽうLFAは専用開発のV10を採用するなど、構成要素が贅沢で特別感もありますね。
0-100km/h加速はわずか“3.7秒以下”。最高速度は“325km/h以上”と公式にアナウンス。新幹線よりも速い世界を所有できるのです。
乗ってみたらどうなの?
乗り込もうとドアを開けて気が付くのはサイドシルの厚さ。しかしサイドシル自体はそれほど高過ぎず、乗り降りに関しては一般的な2ドアクーペとそう変わりません。しかし着座位置はグッと低く、戦闘的なポジションです。コックピットを見回すと、後にレクサスの一般モデルにも展開されることになるリングが左右にスライドするデジタルメーターが特徴で、これは思わずニヤリとするほどのカッコよさ。メーターパネルの左右に走行モード切り替えなどのダイヤルがあるのも、後に最新のレクサス車に波及したテイストですね。
ナビ画面もダッシュボードに埋め込まれていて、そのコントローラーはセンターコンソールの手の届きやすい位置に。シフトレバーらしきものが見当たらないと思ったら、存在せず。エンジン始動で「N」となり、右側のパドルを引くと「D」へ、メーターパネルの左にあるレバーを引くと「R」へ、停止状態でパドルの左右を同時に引くと「N」となる仕掛けになっていて、これはレクサスの一般車とも異なるスーパーカースタイルというわけです。
トランスミッションはシングルクラッチ式のセミATなのでクラッチペダルはありませんが、足元を見るとここでも驚き。アクセルペダルもブレーキペダルもレーシングカーのように床から生えています。しかも金属製でいちいちカッコイイ! シートベルトを引き出そうと手を掛けると妙に重量感を感じましたが、実は世界で初めてエアバッグが内蔵されたシートベルトだから。インテリアはクルマ好きをときめかせるワクワク・ドキドキが満載ですね。
最大の感動は、走り出してアクセルを踏み込むと現れます。目には見えない「官能性」という形で。
まずエンジン音が素晴らしい。「放つ」というレベルではなく「響かせる」。音のチューニングは関連企業に楽器メーカーや音響機器メーカーもあるヤマハ発動機が担当。自然吸気V10エンジンを選んだ理由のひとつが人間の感性に訴える音を奏でるためともいわれるほどですが、その響きには聞き惚れるばかりです。エンジン回転を高くしていく加速中の車内は、あまりの美音にまるで管楽器の中にでもいるかのような気持ちになってきます。
そして超高回転までウルトラスムーズに回転が上がるエンジンの吹け上がりも、爽快そのもの。加速が速いのはスーパーカーなのだからあたりまえ。脳を突き抜けるかのように極上で爽快な回転フィーリングと響き渡る音による感性に訴えかける官能性は、スーパーカーのなかでもトップクラスですね。
正式に存在するのは、世界でわずか500台。その多くがカーコレクターの手にわたっていると思われますが、ずっと大事にしてほしいと願わずにはいられません。
(文:工藤貴宏 編集:ミノシマタカコ+ノオト)
[ガズー編集部]
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