車カメラマンの別の顔を【世代を超えて2人展<永元秀和・風見規文>】で見る

2018年7月23日(月)から29日(土)にかけて、『モーターマガジン』誌で40年以上にわたりカメラマンを務めている永元秀和氏と、絵画作品を中心に多くの個展を開き数々の受賞歴もある画家、風見規文氏の作品展が、「銀座K's Gallery」で開催されました。

ちょっと魅力的なクルマとヒトの情景

「どんなクルマの写真が並んでいるんだろう?」と、期待しながら会場を訪れてみると驚きました。クルマも写ってはいるし、クルマが中心なのは間違いありませんが、どちらかと言えば、「そこにいる人」「そこにある風景」が主役のような写真が並んでいたのです。どれも「クルマ・人・場所」が重なり合った“奇跡の瞬間”が切り取られた、いい写真でした。

場所、クルマ、人、表情……、そのどれが欠けても、こんな作品にはならないでしょう。旅先でクルマの写真を撮るときに、車種や見え方、人の動き、景色などが「いい感じで重なり合う写真を撮りたい」と、何十分もその場所でねばる筆者としては、「俺が撮りたい写真はこれやねん!」と、パネルを剥がして持って帰りたい衝動に駆られたほど。このふと現われた一瞬を切り取った写真をよく選んだものだと思い、永元カメラマン本人に訊いてみました。

「出展する作品を選ぶため過去の作品を見ていたときに、たまたま“ちょっと魅力的なクルマとヒトの情景”が目に入り、『そうだ、これにしよう』と決めました。創作は、日ごろの生活や身近なことに美を見つける風見規文さんを見て教えられたもの。長年の道のりの中で自分にしかできなかったことが、かろうじて作品と呼べるのではないかと思っています」

永元カメラマンは、「これからはこのような写真を積極的に撮ってきたい」と、おっしゃっているので今後の作品も楽しみです。できればドイツの出版社「TASCHEN(タッチェン)が出版しているような大判の写真集も出してほしいなと思います。

永元カメラマンと一緒に個展を開きたかった

「世代を超えて2人展」のもうひとりの主役、画家・芸術家である風見規文さんは、「時間」をテーマにした写真を展示していました。

自宅の廊下に飾るというイメージの展示。印画紙が作る陰もまた作品か。作品のイメージに合うタイプの印画紙を選んでいるそう
自宅の廊下に飾るというイメージの展示。印画紙が作る陰もまた作品か。作品のイメージに合うタイプの印画紙を選んでいるそう

作品の路線も展示手法もまったく異なる(ように感じた)風見規文さんは、なぜ「2人展」をやりたいと思ったのでしょうか。実は、永元カさんと関係のあった撮影会社スタッフだったことがあり、身近で作品を見ていて、「いつか一緒に個展を開きたい」とずっと思っていたそうです。

今回のテーマ「時間」は、「被写体と自分の間に流れる時間」「被写体と対峙している時間」というようなことのようです。筆者は芸術方面の事柄をうまく表現する言葉を持ち合わせておらず、なかなか的確にお伝えすることができませんが、「時間」という点で、一見なんの関係性もないように思われる永元カメラマンの作品とも、深いところでテーマの共通性があるのかなと感じました。

風見さんは、もともとは絵画が専門で受賞歴も多い方ですが、写真家との10年に渡るつきあいの内に、自然に写真を撮るようになったのだそうです。暗室で写真を作る作業は「絵画制作に通じるものがある」と言います。ぜひ一度、作品をご覧になって風見さんと対話してみてください。

永元カメラマンの撮り下ろし作品「Reflection」

「2人展」には、永元カメラマンが今回のために撮り下ろした作品を展示するコーナーもありました。クルマの一部分のアップで、波打つ塗装面に何かが反射する様は、絵画に通じるものがあります。

筆者は、この直前に新型センチュリーの説明会で、「歪みなく主を映す」ために職人が手作業で塗装面を磨き上げるという話を聞いていたため、永元カメラマンの作品は非常に興味深いものでした。

米軍住宅の中の1台のクルマ、シボレー・インパラ・スポーツクーペに目を奪われ、フェンスの穴から覗くようにシャッターを切ったという永元カメラマンお気に入りの1枚。学生時代に初めて外国を意識した情景。1978年の作品
米軍住宅の中の1台のクルマ、シボレー・インパラ・スポーツクーペに目を奪われ、フェンスの穴から覗くようにシャッターを切ったという永元カメラマンお気に入りの1枚。学生時代に初めて外国を意識した情景。1978年の作品

永元カメラマンは、冒頭でお伝えしたように自動車雑誌などで撮影をするカメラマンです。しかし、ご自身ならではのテーマの作品も撮られています。今回の展示のような、媒体に出る作品とはちょっと違った作品が見られる機会も、もっとたくさんあるといいですね。クルマだけの写真を見ているだけではもったいない、そんな風に思います。

(取材・写真・文:大田中秀一 編集:木谷宗義+ノオト)

[ガズー編集部]

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