フロントバンパーやグリルの「穴」が果たす役割りとは?
スポーティ、エレガント、軽快、重厚……、さまざまなクルマの表情を作り出すグリルやバンパー。しかし、よくよく見てみれば必ず“穴”になっていて、エンジンルームにつながっていることに気づきます。
ではこの穴、なにか意味があって開けられているのでしょうか? それともデザインのためだけのもの? この疑問を解決すべく、実際に大学で流体力学の研究をされている大学教授にお話をお伺いしました。
一番の目的は「冷やす」ため
教授によれば、一番の目的はエンジンを冷やすためだそう。
「フロントグリルやバンパーの穴は、冷却風を取り入れるため。これらの内側には、エンジンの熱で温まった冷却水を冷やすための“ラジエーター”が設置されています。ここに走行風を当て、冷却水を冷やすのです」(教授)
フロントグリルの別名を「ラジエーターグリル」というのは、そのため。もともとは、ラジエーターを守るためにつけられたグリルが、デザインの進化とともにボディと一体になっていったようです。
穴を開けると燃費が悪くなる?
走行風で冷却をするならば、穴の開口部を大きくしたりたくさんの穴を開けたりすれば、より多くの走行風が取り入れられてよいのでは、と思うかもしれません。しかし、穴を大きくすることで弊害も出てきます。
「走行風を取り入れるために穴を拡大することは重要ですが、単純に穴を大きくしていくと“走行抵抗”が増えてしまい、燃費が悪化する原因となってしまいます。また、取り入れる走行風が多いと、それだけ空気を車体外部へ排出しなければいけません。すると、床下を抜ける空気が増え、空気が車体を持ち上げる力である“揚力(ようりょく)”が増してしまいます」(教授)
「また、バンパーやボンネットなど、車体前方に装着されている外装部品は、衝撃吸収の役割も担っています。それに加えて、エンジンの搭載位置や搭載方法も走行抵抗に影響してきます。このように、さまざまな要求を満たさなければならないため、フロントバンパーやフロントグリルの穴の形状は簡単に決めることができません」(教授)
穴を開けなければオーバーヒートで車が走れなくなってしまうし、燃費性能は現代の自動車として無視できない、さらに揚力が大きくなるとハンドリングや車体の安定性に悪影響を及ぼしてしまう……。さまざまな要素を踏まえて設計されていることがわかりますね。
「エンジンルームに冷却風を取り入れることによる空気抵抗は、車体全体で発生する空気抵抗の約10%を占めているため、無視できない要素です。車体形状の改善が進んだ現在では、冷却風による抵抗の削減に力が入れられています」(教授)
現在、自動車設計のさまざまな部分でシミュレーションが行われているように、冷却風についても風洞実験を行い、最適化が図られています。
「私たちも大学にある風洞設備と模型を使用して、風洞実験を行っています。エンジンを縦置きにした場合と横置きにした場合や、冷却風取り入れ口の大きさを変更した場合など、さまざまな場合をシミュレーションして、抵抗や空気が流れる速さ、揚力などを測定し、どのような影響があるか研究しています(澤口,高倉,日本機械学会年次大会2018,J0550204)」(教授)
空気の流れをイメージしてみよう!
普段は、デザインにばかり注目しがちなフロントグリルやバンパーの穴にこんなにもいろいろな機能や要件があるとは、クルマの設計は奥が深いものですね。さらにレーシングカーの場合は、これらに加え、空力によって車体を押さえつける“ダウンフォース”(負の揚力)といった要素も考えなければいけません。
空気の流れを可視化した風洞実験の動画は、インターネットでも観ることができるので、自分のクルマや身の回りで見かけるクルマの空気の流れをイメージしてみると、新たな発見があるかもしれません。
(取材・文:西川昇吾 編集:木谷宗義+ノオト)
[ガズー編集部]
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