伝統のレース! ロードスター・パーティーレースの1日を追う
2018年9月1日(土)、茨城県下妻市村岡にある筑波サーキットにて、ロードスター・パーティーレースIII東日本シリーズ第3戦が開催され、総勢54台が表彰台の頂点を目指して争いました。
日本で最も歴史が長いワンメイクレース
ロードスター・パーティーレースは、モータースポーツグレードのマツダ・ロードスター「NR-A」を用いたワンメイクレース(同じ仕様のクルマで走るレース)です。このクルマは、街中でもサーキットでも、走る喜びを味わえるベースグレード。走りを追求した部品が標準装備されている一方、一部の快適装備が省かれています。また、JAFが公認している、一般公道を走るときに必要なナンバープレートがついた車両でのレースでもあります。
イコールコンディション(同じ型式のクルマで最小限の改造範囲且つ調製できる部分が限定されているため参加者全員が同じ条件で戦えるということ=運転手の腕が試される)で、ライトウェイトスポーツ(1.5L~1.6Lクラスの比較的軽量なスポーツカー)を操る楽しさや、ドライバーの技が勝敗を決するレースとしてアマチュアレーサーに定着。2002年の開始から現在までに延べ4,000人以上のドライバーが出場しています。
当初は筑波サーキットだけで行われていましたが、近年ではスポーツランドSUGO(宮城県)、岡山国際サーキット(岡山県)の2つのサーキットが加わりました。それらを舞台に北日本シリーズ、東日本シリーズ、西日本シリーズ計12戦、年に一度の富士スピードウェイ(静岡県)での交流戦を加えて計13戦が行われます。
参戦クラスは、NC(先代型の第3世代ロードスター)シリーズ、ND(現行ロードスター)シリーズ、ND(同)クラブマンの3つに分かれています。クラブマンクラスは、勝ち負けにこだわらず安全にレースを楽しみたい人を対象とした入門クラス。各戦順位に応じてポイントが付与され、シリーズ通算ポイント数で年間チャンピオンが決まります。
初心者とは言え勝敗にこだわるため、レース中は熱くなりがちです。でも接触するとノーポイントとなる独自ルールがあるので、前走車にぶつけてでも前に行くというような走りは御法度。速さだけでなくクリーンな争いをする高い意識とコントロール技術も求められるのです。今回はNCシリーズ16台、NDシリーズ30台、NDクラブマン8台の計54台のエントリーがありました。
このレースはどんなレースなのか? 未経験者の方のためにざっとご紹介いたします。
こうやって進む! レースの一日
まず、レースの一日を大まかにご紹介しましょう。
1. 書類提出、確認と参加受け付け
●参加申し込み後に主催者から送られてくる参加受理書
●運転免許証
●A級ライセンス
●車検証
JAF公認レースに参戦するためにはJAF発行の「国内Aライセンス」が必要です。これはJAF国内Aライセンス取得資格である第一種普通自動車運転免許証以上の運転免許証が有効でなければ使えないライセンスなので、第一種普通自動車運転免許証も確認します。従って、免許が失効していたり免停中だったりという場合はレースに出場できません。
確認後、ピット(レース車両を駐車するスペース)がある「パドック」という場所への入場証(パドックパス)など、必要書類を受け取ります。
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- チームの拠点になるテントを設営。今回はメディア4耐と共催だったので駐車場が拠点に。通常はピットが使える
2. レース前車検
規則に違反した改造がされていないか、また安全に走行可能かをチェックします。
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- 車検場では、クルマの車検とドライバーの装備品のチェックも行われる。給油も忘れずに!
3. ブリーフィング
走行時の注意事項や、コース上で振られる旗の説明が行われます。これをまじめに聞かないとコース内外での事故につながる危険性があるので、みなさん真剣です。
4. 予選
決められた時間内にコースアタックし、その中のベストラップ(1周のタイム)で決勝のグリッド順(並び順)が決まります。上位にいればいるほど良い位置を確保できるため、レースの流れをコントロールできるなど作戦を立てやすく、接触リスクも低くなるなど何かと有利なので、できるだけ前を目指します。
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- NCシリーズクラス予選コースイン!
5. 決勝
スタート位置であるグリッドに、予選の順位を元に並びます。静止状態から走り出す、いわゆるスタンディングスタートなので、シグナルの合図とともに一斉にスタートするのですが、これがけっこうドキドキします。運動会の駆けっこの時になぜかピストルからワンテンポ遅れる同級生がいたように、パーティーレースでもスタートでワンテンポ遅れたり、スローだったりするドライバーがいるので注意が必要です。しかしそれはスタートで順位を上げるチャンスでもあります。全長約2,000メートルのコースを15周走って一着でゴールした人が優勝です。
ちなみにこのレースでは、パドックからグリッドにつくための走行時に「パレードラン」が行われています。この間だけ、座席にほかの搭乗者を乗せることができるので、手伝ってくれている家族や友だちにお返しができます。
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- 同乗者を乗せられるパレードランに出発
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- よーいドン!
6. 暫定表彰式
ゴール直後にコース内で1位から3位までの暫定表彰式が行われます。
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- ゴール! トップチェッカーを受けフィニッシュ
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- NCシリーズクラス暫定表彰式
7. レース後車検
入賞車両を対象に、規則違反の改造をしていないか、再検査がおこなわれます。また、全参加車両を対象に、このあと一般公道を安全に走ることが可能か確認するための「安全検査」もなされます。ここで違法改造が見つかれば失格、車両に不具合が見つかれば、自走で帰れなくなってしまいます。
8. 正式表彰式
ペナルティ、失格などを成績から差し引き、最終的に出た結果を元に正式表彰式が行われます。
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- NCクラブマンクラス正式表彰式
ロードスター・パーティーレースの魅力とは?
RX-8のパーティーレースに1年参戦、ロードスターで12年参戦していて、2011年から4年間はメディア対抗ロードスター4時間耐久レースのチーム「ENGINE」の助っ人ドライバーとしての参戦経験もあるNCシリーズクラス参戦の乃美浩一選手に、このレースを始めたきっかけや魅力についてきいてみました。
「運転がうまくなりたいと思って始めました。レース前には気分が乗らないこともあるんですが、チェッカーフラッグを振られると『ああレースしてて良かったな』と、いつも満足感いっぱいで家路についています。サーキットで出会うレース仲間とのあれこれ話も楽しいし、年に1回は現役引退した人も参加して、飲み会もやるんです。ここでしか会わない仲間ですが、日常では出会わない人たちとのおしゃべりは、とても楽しい時間です」
お金はいくらかかる?
何やら楽しげなレースでしょう! ちょっと興味を持った人のために費用を試算してみました。
■初期費用
マツダ・ロードスターNR-A: ¥2,705,400
車両用レース装備一式: \416,588
必要最小限の整備用工具・道具類: \100,000
ドライバー用レース装備一式: \500,000(モデルケースでの概算例)
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合計: \3,721,988
ドライバー用レース装備については、「stand21」というメーカーですべて揃えた場合の費用なので、安いメーカーを探せばもっと安く抑えることは可能です。しかし、安全性と耐久性を考えた場合このくらいの費用は必要だと思った方がいいと思います。また車両はナンバー付なので、普段使いできます。
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- 身を守るための安全装備のヘルメット、首を保護するHANSも必要。クルマにはロールケージ、ハーネス、レース用バケットシートを装備
■参戦費用
シリーズクラス: \40,000/レース
クラブマンクラス: \38,000/レース
これにガソリン代
これを見て腰が引けるか、「お、それやったらできるやん!」と思うかは、人それぞれでしょう。でもクルマや運転が好きなら、レースに参戦してみては。新たな楽しみが広がるかもしれません。
(取材・写真・文:大田中秀一 編集:ミノシマタカコ+ノオト)
[ガズー編集部]