車酔いはなぜ起きる? 耳鼻科医に聞く、乗り物酔いのメカニズムと対処法

楽しいお出かけのはずが、すぐに乗り物酔いを起こして気持ち悪くなってしまう。はたまた家族で出かけると、子どもたちが必ず乗り物酔いになってしまい、毎回酔い止め対策が大変。そんな悩みを抱える方も多いでしょう。

「乗り物酔いは三半規管の異常で起きる」くらいの知識はあっても、適切な対処や予防知識のある人は意外と少ないものです。今回は今すぐ活用できる乗り物酔いの知識を、山川耳鼻咽喉科医院の山川卓也先生にうかがいます。

子どもが乗り物酔いを起こすのは当然! 納得のメカニズム

「子どもはほとんど車酔いを起こすものですよ」そう話す山川先生ですが、そもそも三半規管の異常によって起きる乗り物酔いは『動揺病(どうようびょう)』という名前がついています。

「三半規管の中にはリンパ液が流れ、その中に砂が入っています。砂が動きにあわせて動き、脳に情報を送ることで、平衡感覚などを保っています。乗り物酔いの状態は、揺れなどによってこの情報伝達が異常をきたし、自律神経のバランスが崩れることで気持ち悪くなったりフラついたりといった症状が起きるのです」

運転手が酔わないのは、運転という行為で距離感覚や揺れも把握しやすいからなのだそうです。こうして考えると、人間の体ってちょっとのことで受け取る感覚が変わる繊細な生き物なんですね。

酔わない対処法。まずは“生あくび”に注意!

小学生の遠足などでは、必ずクラスで1人はバス酔いして辛そうな子がいたものです。

「子どもが乗り物酔いをしやすいのは、三半規管の成長と関係しているため、ある程度は仕方のないことです」

お子さんが酔いやすいと、家族でのドライブも一苦労。そんな時も、辛さをぐっと半減させるコツがあります。

「乗り物酔いの対処としては、初期症状が出る前か出た後に、しっかり対応することが重要です。吐き気の前には、生あくびや冷や汗、手足の冷感や顔色の悪さが発生します。この時にきちんと対処しておくとよいでしょう」

症状が始まってから、すぐにできる対処法としては、以下のことが挙げられます。

・窓をあけて換気をする
車酔いはニオイで起きることもあるそう。芳香剤や食べ物のニオイ、また他の人が嘔吐したニオイにつられて嘔吐することもありますので、換気をしてニオイが籠もらないようにすることが大切です。

・遠くを見る
一般的な対処法として知られていますが、遠くを見ることで適切な距離感覚が生まれ、狂った三半規管を整える効果があります。

・歌ったり話したり気を紛らわせる
意外かもしれませんが、車酔いは気持ちの問題も関係しているといいます。そのため歌ったりしゃべったり、他のことに夢中になるだけでも、症状が和らぐことがあるそう。

・氷水を飲む
氷水を飲む効果には、氷の刺激で自律神経が整うことと、刺激によって気が紛れるという2つの効果があります。ただし飲みすぎには注意しましょう。

意外と起きてからできる対処法は多い印象ですが、一般的な酔い止めも有効です。

「酔い止めには抗ヒスタミン薬が含まれていることが多いですが、この成分が吐き気などを緩和させてくれます。またクリニックでは自律神経に効果を発揮させるため、安定薬を一緒に処方することもあります」

ご自身の程度にあわせて、まずは色んな対処法をためしてみたいですね。

適切に慣れることが車酔い克服の最善策

大人になると緩和されることの多い車酔い。とはいえ、弱い人はいつまでたっても酔いやすいものですが、なんとか強くなる方法はないのでしょうか。

「やっぱり大人も子どもペットも、乗り物の揺れに慣れることと、気持ち的に酔いやすいという状態を手放すことが大切です。たとえば近場の楽しい場所へ酔わないように出かけること。それだけで酔わずに楽しめたという気持ちいい記憶が残され、だんだんと移動距離を伸ばせることもあります」

年齢が若ければ若いほど、今から克服できる可能性が高いのですが、とにかく無理せず慣れることが大事です。ご自身で苦手意識のある方は、少しずつ取り組んでみるのはアリかもしれません。

苦手な人は本当に辛い車酔い。大人であれば、運転手専門になってしまうのも1つの手かも……と話しを聞いていて感じました。ご自分やお子さんの症状にあわせて、ぜひ適切な対処法を取り入れて楽しいカーライフを送りましょう。

<取材協力>
医療法人社団青翔会 山川耳鼻咽喉科医院
http://www.yamakawa-clinic.com/
理事長 山川卓也先生

昭和61年順天堂大学医学部卒業後、順天堂大学耳鼻咽喉科教室へ入局。その後は順天堂大学に在職し講師を経て、平成12年港区北青山に山川耳鼻咽喉科医院を開設。専門は耳科学、耳鳴り、難聴、補聴器。また現在、日本耳鼻咽喉科学会代議員も務める。
昭和61年順天堂大学医学部卒業後、順天堂大学耳鼻咽喉科教室へ入局。
その後は順天堂大学に在職し講師を経て、平成12年港区北青山に山川耳鼻咽喉科医院を開設。専門は耳科学、耳鳴り、難聴、補聴器。また現在、日本耳鼻咽喉科学会代議員も務める。

(取材・文:おおしまりえ 編集:ミノシマタカコ+ノオト)

[ガズー編集部]

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