かつて高級車の象徴だった「ボンネットマスコット」を採用する車種が減ったワケとは?
メルセデス・ベンツのスリーポインテッドスターやジャガーのリーピングキャットをはじめ、立体的なエンブレムをボンネット上に装着した「ボンネットマスコット」は、かつて高級車のステータスのひとつでした。しかし、最近では採用するメーカーも減っており、ボンネットマスコットが高級車の象徴的なアイテムであるとは言いがたくなっています。それはなぜなのでしょうか? モータージャーナリストの工藤貴宏さんに聞きました。
安全性への配慮からその数を減らしてきている
今もロールスロイスやメルセデス・ベンツなど、欧州車を中心にボンネットマスコットは採用されていますが、装着車種は少なくなっています。その大きな理由は、安全面です。
「歩行者保護の観点から、自動車の外部には接触時において歩行者などに傷害を与える恐れのある突起を有してはならない、という国際基準が2009年から適応されています。ボンネットマスコットは、ボンネット上の突起物となるわけです」(工藤さん)
この国際基準の適用後、ちょっとした突起であっても、その危険性が無視できないことから、メーカーはボンネットマスコットを控える傾向になったそうです。
「たとえば、歩行者がボンネット上に乗り上げてしまうような事故が起こった場合、ボンネットマスコットは、凶器となる可能性があります。こうした負傷などを避けるために、メーカーが採用を取りやめるケースが多くなっているのです。国産メーカーやジャガーでは、ほぼボンネットマスコットの採用をやめてますね」(工藤さん)
また、高級車に対するイメージの変化も、ボンネットマスコットの減少に影響しているとのこと。
「高級車といえば、昔は威厳を感じさせるために角ばったデザインのクルマが多かったものですが、最近は流線型が主流。ボディと一体になったフロントグリルの中央に大きくエンブレムを配置するケースが増えています」(工藤さん)
最新のボンネットマスコットは安全性に配慮した設計に
それでもメルセデス・ベンツでは、Eクラスの一部グレードやSクラスに、安全性に配慮したボンネットエンブレムを採用しています。
「メルセデス・ベンツのエンブレムは、力が加わると押されて倒れる仕組みになっています。安全基準では、ボンネットの上の突起物は、たわんだ状態で突出部が10mm以下であればいいことになっています」(工藤さん)
そのほか、ロールスロイスではエンブレムが格納式となっているそう。
「ロールスロイスのマスコット『スピリット・オブ・エクスタシー』は、今でも多くの車種に採用されていますが、こちらは格納式で、衝撃を受けると瞬時に内部に隠れるようになっています。ロールスロイスのエンブレムは盗難も多いので、格納式にすることで駐車時の盗難対策も兼ねているようです」(工藤さん)
高級車に求められるデザイン性変化や安全性への配慮から数は減らしているようですが、ボンネットマスコットはやはり特別なもの。これからも高級車を象徴するアイテムのひとつとして、時代に合った進化をしながら残っていきそうですね。
(取材・文:斎藤雅道 編集:木谷宗義+ノオト)
[ガズー編集部]
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