視線と声で操作する! 音声認識の近未来をニュアンスで体験【CES2019レポート】

アメリカ最大の最新エレクトロニクスの見本市である「CES2019」が、新年早々の1月6日から11日にかけて、ラスヴェガスで開催されました。世界最先端の技術が集まる場として、自動車業界も積極的に参加しており、クルマに関するちょっと先の未来もうかがえるイベントになっています。

そんな「CES2019」のニュアンス・コミュニケーションズのブースにて、次世代のクルマの操作方法を体験しました。

最先端の技術が結集する「CES2019」で最新の音声認識技術に出会う

ニュアンス・コミュニケーションズは、音声認識のソフトウエアを開発するアメリカの会社で、自動車メーカーなどに、その技術を販売しています。最近でいえば、メルセデス・ベンツの最新のマルチメディアシステム「メルセデス・ベンツ ユーザー エクスペリエンス(MBUX)」にもニュアンス・コミュニケーションズの技術が使われています。「ハロー! メルセデス」と言うと、その後に音声でオーディオやエアコンなどの操作ができるというもの。いわゆる、アップルのSiriやOKグーグル、アマゾン・エコーやグーグル・ホームなどのAIスピーカー(スマート・スピーカー)や自動車版のような存在です。

ちなみに、これまでの音声認識サービスのほとんどは、常時、ネットに接続していることが前提とされていました。ところがクルマは、トンネルや地下駐車場など、ネット接続できない場所を走ることもあります。そんなときでもニュアンス・コミュニケーションズのソフトウエアは、高い精度で音声認識を可能としているのが特徴です。

また、「ハロー、メルセデス」や「アレクサ!」といったトリガーなしでも、会話の途中から急に操作モードに入ることのできる「ジャストトーク」という技術も完成しており、1~2年のうちに市販車に搭載されて登場するそうです。

視線を投げかけるだけで選択ができる

そんなニュアンス・コミュニケーションズが提案した次世代の技術が、視線検知&音声認識です。従来の音声認識にドライバーの視線を検知する機能を組み合わせたものでした。運転席の前には、ドライバーをモニターするカメラのようなものが設置されています。

実際にやってみれば、ちらりと右の窓に視線を投げて、それにあわせて「窓を開けて」と発話すると、右の窓だけ開きます。電話をかけるときは、「××さんに電話を」と発話。そのときに、XXさんの電話番号が複数登録されていると、フロントウインドウに複数の電話番号が表示されます。もちろん、表示は運転に支障のないように透けています。そして、複数の電話番号から、希望の番号を見ながら「ここに電話して」と言えば、そこで電話をかけてくれるのです。

デモンストレーションはブースに置かれた実車で行われましたが、ほとんどエラーがなく、レスポンスにも優れていたことに驚きました。アイデアではなく、本当に実現できるんですね。

さらに、すごかったのはクルマの外にある風景を見て、「あのビルは何?」と尋ねると、「あのビルは~です」と答えたのです。クルマの現在位置、周囲の地図、視線の先をミックスすることで、ドライバーが求める先を判断し、それを伝えるという仕組みです。電話番号が登録されていれば、そのまま電話もできます。ただし、こちらの技術は、まだ難しくて、開発中とか。さらに、クルマの中のCAN情報などからクルマの不調を検知してドライバーに通知する機能や、クルマの電子マニュアルを音声のやりとりでドライバーに伝える機能なども開発中と言います。また、ドライバーの状態を監視するモニタリング技術においては、「眠さ」「疲れ」や「よそ見」だけでなく、「怒り」「悲しさ」などの感情も検知し、それにあわせたコミュニケーションを用意するという開発も進んでいるそうです。

最近のクルマは、新しい機能が続々と追加され、安全性や利便性が高まっています。しかし、一方で、新しい機能の内容を理解し、その使い方を覚えるのも、意外と大変なもの。だからといって操作マニュアルを読んで勉強しようという人は、それほどいるわけではないでしょう。でも、今回のような技術が進化すれば、そうした問題もクリアになる可能性があります。音声で何でも質問でき、操作自体も音声でできるかもしれないからです。音声認識技術の進歩は、ユーザーにとっても大歓迎なもの。さらなる進化を期待しましょう。

(取材・文:鈴木ケンイチ 編集:ミノシマタカコ+ノオト)

[ガズー編集部]

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