ドライブの休憩のお供! 日々進化するSA・PAの「カップ式自動販売機」

高速道路の走行で大切なのは適度な休憩! サービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)でつかの間、クルマから降りてトイレに行ったり、ノビをしたりするひとときは、安全な走行の助けになりますよね。そんな時、ちょっとコーヒーが飲みたくなりませんか? 近年のSA・PAにはコーヒー専門店があったり、カフェが充実していますが、カップ式自販機もなかなかのクオリティなのです。

年間845万杯を販売

NEXCO東日本管轄のSA・PAはなんと324箇所。そのうちカップ式自販機を設置しているエリアは152箇所にあります。総数はなんと386台。年間およそ845万杯販売しているそうです。845万杯って! その数がわかると圧倒されてしまいます。

元は「噴水」だった!

そもそもですが、カップ式自販機がいつ頃登場したかご存知ですか。

歴史を紐解くと、1962年、星崎電機(現:ホシザキ)が噴水式のジュース自販機「オアシス」を販売したことが始まり。マシン上部にガラスボトルがあり、その中でオレンジジュースが噴水のように上がる画期的なデザインで爆発的なブームとなりました。なんでも当時は日本中のデパートの屋上や街角に置かれていたとか。お客さんは据え付けのカップ収納筒から手動でカップを引き抜き、所定の販売口にセット、お金を投入すればジュースが注がれます。また、現在では当然の機能である「冷凍装置」が初めて搭載されたのもこちらの自販機から。1967年に100円硬貨が改鋳されて以降は、1台の自販機で10円玉・50円玉など複数の硬貨を受け付ける技術も進化。カップ式自販機は工場の休憩室などにも多く設置され1973年までの7年間でなんと年率48%という驚異的な伸び率を示したそうです。

ちなみに、アペックス社が1963年の創業当時に取り扱っていたコーヒーを主力とするカップ式自販機は、現在のものと調理方法に大きな違いがあります。当時は、機内の容器の中でお湯と原料を混ぜて、飲料ホースを通してカップに注がれる仕組み。現在は、原料や砂糖・クリームはカップの中だけで調理する「カップミキシングシステム」を採用し、風味を損なわず、素材の特徴を十分に引き出した高品質なものになっています。もちろん従来に比べて清潔性・安全性も向上し、販売時間も大幅に短縮されました。

時代ごとに目覚ましい進化

時代ごとにカップ式自販機は目覚ましい進化を遂げています。1972年に氷入りコールド機が登場。その後、1981年にはアペックス社が業界で初めてホットとコールド両方の機能を1台に備えた自販機「APEX 2400」を発表。それまでは同じロケーションでも、冬はホット機、夏はコールド機と入れ替える作業がありましたが、1台で年中販売することが可能になりました。その後、車いすの方も利用しやすい位置にテンキー式の購入ボタンを搭載したり、レギュラーコーヒーなら「ブラック」「砂糖入り」……と、一つのボタンで購入できるダイレクトボタンになったり、片手で取り出せる自動扉に変更されたりと、時代ごとにユニバーサルデザインを採用していきました。

2012年には、魔法瓶搭載の超省エネ自販機が誕生し、消費電力量が従来に比べ約70%も削減。省エネという課題は、湯タンクの小型化やLEDへの変更など、日々新たな技術が採用されているそうです。近年でいうと2016年、ダイドードリンコが日・英・中・韓の4か国の言語で購入方法をガイダンスする自販機を導入。最近では大型モニターで近隣の情報などを配信するデジタルサイネージ型も登場しています。

厳選豆を使用し、徹底管理された味わい

NEXCO東日本管轄のSA・PAに設置されているカップ式自販機の中で、アペックス社の機器を導入しているのは191台ありますが、こちらの自販機、豆にもこだわっています。ブラジルでコーヒー鑑定資格(クラシフィカドール)を取得した社員が監修し、厳正に豆を精査・選定し、焙煎度合やブレンドなどの細かい仕様に至るまで製造企画を行っています。

ドライバーに合わせた、苦みと飲みごたえのある「キリマンジャロ ブレンド&エスプレッソ」など、SA・PA限定の商品も導入。また、販売する商品は、徹底した鮮度管理された豆を使用し、豆の焙煎度合・使用量・蒸らし時間・お湯を注ぐタイミング・抽出速度なども、砂糖やクリームの有無も含めて商品ごとに細かく設定することで、どのSA・PAでどの商品を買っても、一番おいしい状態で提供できるようになっています。さぞかし細かくプログラミングされて、一杯のコーヒーを淹れるものと思いますが、具体的なお湯を注ぎ込むタイミングや蒸らし時間は企業秘密、内緒でした。
ちなみに一台の寿命ですが、稼働状況・設置ロケーションによって異なるものの、およそ10年だそうます。特に、SA・PAの自販機は街中の自販機に比べて利用されるお客さんの数が多いので、もちろんしっかりとメンテナンスを行って稼働しています。

このように見てくると、日々、最新の技術を搭載し、より美味しいコーヒーを短時間で提供していることがわかります。「たかが自販機のカップのコーヒー」と思うことなかれ。カップ式自販機のコーヒーは「美味しいコーヒーを飲んでもらいたい!」と考える企業努力の結果なんです。

(文:別役ちひろ 編集:ミノシマタカコ+ノオト)

<取材協力>
▼NEXCO東日本
URL:https://www.driveplaza.com/

[ガズー編集部]

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