アグレッシブでもルールに忠実? 現地で感じたスペインの交通事情

皆さんはスペインの交通事情と聞くとどんなイメージを思い浮かべますか? 私のイメージは、ヨーロッパの街並みをゆったりと走る優雅なイメージ。それが、現地に行ってビックリ。実際のスペインの交通事情は、驚くほどアグレッシブなものでした。

スペインは、都心以外に信号がない?

左ハンドルに右側通行と欧米特有の違いはあるものの、スペインの首都マドリードや人口第2位の大都市バルセロナなど都心部だけで見ると、交通事情は日本とそう大きくは変わりません。しかし、一度近郊に出てみると交差点に信号がない!

歩行者用の信号はあるものの、スペインでは都心部以外の交差点はラウンドアバウト(円形交差点)となっていて、クルマ用の信号がほとんどありません。

また、先にラウンドアバウトに入ったクルマに通行の優先権があるようで、右左折やUターンをしたいクルマは、進入前に一時停止。左側から来るクルマに注意して、タイミングを合わせながら進入し、右回りで行きたい方向に出ていくのです。

そのためクルマ通りの多い時間は、かなり激しい状態に。ラウンドアバウトの中心のサークルは、大小いろいろな大きさがあるのですが、上の写真のような小さなサークルでの混雑状態を初めて見たときは、無法地帯なのかと驚くほどでした。ギリギリで突っ込んでいくアグレッシブなクルマが多く、慣れていないと進入するのにかなり勇気が必要な状況です。

ちなみにラウンドアバウト直前には、その出口が向かう方向を現した標識が設置されているので、こちらの標識を見て出口の方向を確認します。

スペインの道はどこでも路駐OK!?

スペインの道路では、いたるところで路上駐車をしているクルマを見かけます。しかも、1台抜けてはすぐ次のクルマが入るので、その縦列駐車のテクニックはかなりのもの。「その隙間に停めちゃうの!?」とハラハラしてしまうような光景が、頻繁にありました。

そんな路上駐車が当たり前のようになっているスペインにも、日本と同じように路上にパーキングメーターが設置された正式な駐車スペースも存在します。緑色のラインで仕切られているのは近隣住民優先か専用、青色のラインは一般用。時間帯によって、有料・無料が決められているそうです。

ちなみに、どこにでも路上駐車をしているかに見えるスペインの人たちですが、決して交通ルールを破っているわけではありません。

それどころか日本よりキッチリ守る印象で、写真のように駐車禁止の標識がある場所に短時間でも路駐をしようとするクルマの姿は、1台も見かけませんでした。

スペインの路駐はとりあえずギリギリまで攻める!?

路駐での縦列駐車の凄まじさは前述の通りですが、それ以上に気になったのは路駐時の歩道への乗り上げ具合。SUVなどの車高の高いクルマなら理解もできますが、どんな車種でもほとんどのクルマが歩道の段差をタイヤ止めのように使用し、フロントやリアのバンパーを乗り上げて駐車します。

そのため、フロントバンパーの裏側を路面に擦ってしまっているクルマをかなりの頻度で見かけました。

これは、小さな傷でもすぐに直す方が多い日本の感覚からすると、かなり有り得ない状況ですが、スペインでは傷だらけのまま走行するクルマが多く、傷や汚れなどはあまり気にしないようです。

高速道路はほとんど無料

スペインの高速道路はほとんどが無料。今回は、マドリード空港→バレンシアサーキット(約340km) バレンシアサーキット→アルバセテサーキット(約180km) アルバセテサーキット→アルヘテ市街(約277km) アルヘテ市街→マドリード空港(約22km)と、クルマでかなり移動しましたが、料金所を通過したのはアルバセテサーキットからアルヘテ市街へ向かう1回のみ。それ以外の区間はすべて無料で通行できました。

タクシーのナビはスマホが主流

今回のスペイン滞在中の移動には、何度かタクシーも利用しました。そこで気になったのが、カーナビの存在。

インパネ部分にモニターはついているものの、基本的には音楽をかけるためのオーディオとして使用されていて、ナビはホルダーに装着されたスマホで設定します。しかも、それが今回利用したタクシーでは、100%の確率。スペインでは、あまりカーナビは利用しないようです。

また、タクシーの車種はプジョー、シトロエン、トヨタなどさまざまでしたが、中でも一番多く見かけたのが、日本ではあまり馴染みのない『S』のようなエンブレムが装着されたクルマ。これは、スペイン・カタルーニャ地方に本拠地を構えるフォルクスワーゲングループ傘下の自動車メーカー『SEAT S.A』のもので、日本への正規輸入・販売は行われていません。

しかし、まったく日本に馴染みのない会社というわけではなく、同じくフォルクスワーゲングループ傘下のアウディからラインナップされている『Q3』は、この.セアトのマルトレル工場で生産され、日本市場で販売されています。

スペインの交通事情は、一言で表現するとアグレッシブ。路上駐車や交差点で、クルマをぶつけ合っている状態と言っても過言ではありません。しかし、それはクルマを傷つけたくないという価値観があまりないため。クルマの運転はアグレッシブでも、横断歩道をわたろうとする歩行者がいると必ず停まって歩行者を優先したり、駐車禁止の場所には絶対に停めなかったりと、かなりルールに忠実な国でもありました。

(取材・文・写真:先川知香 編集:木谷宗義+ノオト)

[ガズー編集部]

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