もう家はいらない? 「バンライファー」という新しいライフスタイルを提案した「つくばVAN泊 2019」
「バンライファー」という言葉をご存知ですか? バンで生活する人を表す造語で、定住しない新しいライフスタイルを提案している人たちです。筆者もキャンピングカーで取材に出かけます。しかし、あくまでも自宅があって仕事場があって、そこが生活の中心です。それに対してバンライファーたちはバンに暮らし、バンの中や街中で仕事をしています。
そんなバンライファーの生活を垣間見ることができるイベントが、2019年3月21(木)~22日(金)に茨城県つくば市で開催されました。その名も、「つくばVAN泊 2019」。バンライファーたちが愛車(兼自宅兼仕事場)を持ち込んでの1泊2日のイベントで、それぞれの工夫を見せてくれました。イベント自体はバンライファーのトークセッションあり、つくばコーヒーフェステイバル参加店によるコーヒーの飲み比べあり、音楽ライブありの盛りだくさんな内容でした。
動くスナック!? 旧型バスを改造した1台にみんなが注目
会場でもダントツに目立っていたのは、こちらの「動くスナック アポロ」です。スナックというだけあり、日が暮れてからも人だかりが絶えない1台でした。1970年式のバスの内装を改造して、2018年5月から実際にスナックとして営業しているそう。拠点としている福岡から自走して来たというから驚きです。車内をみせてもらうことができましたが、外観に劣らぬ不思議な造形になっていました。
- バス時代に使われていたと思われるマイクが残っているなどユニークな運転席回り
- 後部座席はスナックとして使われるためコの字型のシート配列に改装
仕事がある場所に生活を合わせるのがバンライファー流
スナック アポロ号はとても目立っていましたが、「バンをどう使うか?」が目的となったものでした。しかしVAN泊に集まったバンライファーの多くは、ワークスタイルやライフスタイルの自由度を求めてバンライフを選んでいます。
たとえば、旅行ガイドを手がけるクリエイター集団「ON THE TRIP」は、ガイドを作成する場所に自分たちが行き、そこで時間を過ごし、旅行ガイドを作っています。「バンで生活をするというよりも、街で生活するようになりました」と、志賀章人氏は語っていました。バンで寝泊まりして、街中のカフェで仕事をしているそうです。おもしろいのは、ON THE TRIPの代表である成瀬勇輝氏は大型車の運転ができないということ。トヨタ・コースターをベースとした事務所兼住居の移動は、もっぱら志賀氏の役割。
- ON THE TRIP号の室内はシンプルで、いかようにも使えるデザイン
ON THE TRIP号の室内はシンプルで、ほとんどのスペースは快適に休むために作られています。仕事場というより、生活の場といった印象。キッチンも備わっていますが、ベースはキャンピングカーではありません。中古のマイクロバスを手に入れて、自分たちでしつらえたそうです。
毎日現場まで往復する時間は無駄--そう考えた大工がバンライファーに
働き方を軸にバンライフを選んだひとり、大工の鈴木大地さんは、メルセデス・ベンツのバンを改装して住居としています。大工は現場に行かなければ仕事ができないので、案件によっては移動時間が大きな無駄を生みます。そこで考えたのが、「現場で寝泊まりできればいい」ということでした。
- 立って移動できる室内高とコインパーキングにも駐車できるサイズとを両立できる、メルセデス・ベンツのバンを選択
- 後部は完全に大工の仕事場、プロ用の道具が整然と並んでいる
ゲストだけではなく出展者が使う電源もクルマから供給
バンではないけれど、最後に2台のクルマを紹介しておきましょう。トヨタ・ミライとホンダ・クラリティ FUEL CELLです。どちらもGAZOO読者の方ならきっとご存知の、FCV(燃料電池自動車)です。水素を燃料として使い、排出されるのは水だけ。このようなアウトドアの場ではピッタリな電源車と言えるでしょう。
イベント2日目の締めくくりには、大井川 和彦茨城県知事、五十嵐立青つくば市長も登場して新しいライフスタイルの持つ可能性についてコメント。最後に、五十嵐市長から「つくばバンライフ共同声明」として、普段は出会うことのなかったコミュニティが交流を行い、多様な生き方、災害や少子高齢化などの地域課題を解決するきっかけを、このVAN泊が担う旨が宣言されました。クルマを移動手段とは別の視点から切り取って見せたこのつくばVAN泊、ぜひ今後も続いてほしいものです。
(取材・文・写真:重森大 編集:木谷宗義+ノオト)
[ガズー編集部]
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