コアなファンの想いは熱い。20年以上続く「CR-Xデルソルもてぎミーティング」
ひとつの車種に限定して行われるカーイベントは、オーナーズクラブはもちろん、メーカー主催で行われることもありますが、多くの場合、対象となるのは著名なモデルやベストセラーというべきクルマです。しかし、そんな常識を覆して20年以上も続けられているイベントがあります。「CR-Xデルソルもてぎミーティング」です。5月18日(土)に、第22回を数えるデルソルミーティングが「ツインリンクもてぎ」で開催されました。
驚異のメカニズム「トランストップ」を持つクーペ
まずは、ホンダ・CR-Xデルソルについて簡単にご紹介しましょう。1992年に登場したデルソルは、歴代CR-Xの中でも異質なモデルでした。その特徴は、トランク部分がせり上がりルーフを収納する「トランストップ」にあります。今でこそ一般的となった電動開閉式ルーフを備え、クーペとオープンの両立を図ったものです。電動開閉式ルーフという点では、先にトヨタ・ソアラ エアロキャビンなども存在していましたが、コンパクトでスポーティなモデルに採用されたのは画期的でした。
- トランストップの動作中の様子。トランクリッドがせり上がり、ルーフがスライド。トランクリッドの下に格納される。
バブル経済が終わり、スポーツカーやスペシャリティカーが好まれなくなっていた中でヒット作とはなれず、歴代CR-Xの中でもマイナーな存在ですが、その特異なスタイルもあって今もコアなファンがおり、生産終了から20年が経つ今も、こうしてクラブイベントが続いているのです。この日の参加台数は30台と、最盛期に比べれば多くはありませんが、販売台数を考えるといかに多くのファンが残っているかを感じさせます。
- トランストップを開けた状態。タルガトップのようなスタイルになる。このあと、リアウィンドウが下がってロールバー付きのオープンとなる
続ける理由は「楽しいから」
主催者のむーぶ氏は、デルソルミーティングをもう20年以上も継続しており、あまりにもデルソルが好きであるために同人誌を発行するほど。ツインリンクもてぎでのミーティングは、もともとも別の方が始めたものだそうですが、2回目からむーぶ氏が引き継ぎ、今回で22回目を数えます。
- ボディカラーが多彩なのもデルソルの特徴。写真はサンバグリーンパールというカラー
- ノーマルを維持されたクルマもカスタマイズされたクルマもあり、思い思いのスタイルで乗られている
なぜ、そこまでの情熱が傾けられるのかとお聞きすると「楽しいからですよ」と、とてもシンプルな答えが返ってきました。それはイベントが楽しい、集まるのが楽しい、何よりデルソルを走らせて仲間と一緒に過ごすことが楽しいということ。まさしく、楽天的なスタイルをもってデビューしたデルソルのコンセプトそのもののような答えでした。そして、「ミーティングは、続けられる限りは続けたいですね。乗れる限り乗り続けるこのクルマと同じです」とも。
- 中には、こんなカスタマイズも。ヘッドライトはN-ONEから流用で、ボディワークは腕に覚えのある友人とのハンドメイドとのこと
- こちらは、S2000のドアミラーに社外のウインカーレンズが組み込まれている。パーツ流用も長く乗るための術のひとつ
むーぶ氏の黒いデルソルはきれいに維持されているワンオーナー車で、全塗装から帰ってきたばかり。しかも、この全塗装は2回目だそうです。「乗り続ける想い」を感じさせます。ミーティングに参加するほかのオーナーも、その想いは同じ。「ほかのクルマは考えられない」「代わりがあればそうするかもしれません、でもないんですよね」と話してくれました。
- むーぶ氏のデルソル。無限のホイールを履くほかはノーマルの状態を保っている
もはや恒例!2人のトークショー
現在はモータージャーナリストとして活動中であり、デルソルの開発者でもある繁氏とエンジニアである川田氏のトークショーも、ツインリンクもてぎの会議室の一室を使って開催されました。2人のトークショーは、デルソルミーティングでは恒例です。開発時の裏話や今だから言える当時の笑い話、果ては現代の交通事情に絡んだ話までもが、飛び出しました。
過去にはデルソル開発時、当時の運輸省に世界でも初めての機構ゆえにキチンと申請をしておかなくては、とまじめに持ち込み「そんな前例のないものを作らせるわけにはいかない」と断られそうになったこと、訴訟大国アメリカでは故障時のトラブルを考慮してタルガトップスタイルの手動式ルーフを採用したことなども、このトークショーで披露されました。
(取材・文・写真:きもだこよし 編集:木谷宗義+ノオト)
[ガズー編集部]
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