タイヤが黒いのはなぜ? 「ブリヂストンTODAY」はタイヤの知識が学べる日本で唯一の“ゴムとタイヤの博物館”

日本有数のタイヤメーカー、ブリヂストンが、日本で唯一の“ゴムとタイヤの博物館”を運営しているのをご存知でしょうか? それが東京都小平市にある「ブリヂストンTODAY」です。

ゴムがどんな風に生活の役に立っているかを知る博物館

ブリヂストンTODAYは、2001年3月に同社の創立70周年記念の一環として建てられました。現在は「ブリヂストンの歴史」「タイヤの基礎知識」「タイヤができるまで」「ブリヂストンの取り組み」「モータースポーツへの参戦」「地震から建物を守る免震ゴム」という6つのコーナーに分かれて、それぞれ展示物が設置されています。誰でも無料で入場でき、毎年1万人以上が来場するそうです。

同博物館の大きな狙いは「ゴムが生活の中のいろいろなところで役立っている」ということを知ってもらうこと。

副館長の遠藤俊行さんは、「創業者である石橋正二郎は、足袋の製造から事業を始め、『足をもっと守れるように』とゴム製の足袋の製造を開始しました。その後、モータリゼーションがすぐそこまできていると感じ、価格の高い海外製のタイヤに頼るのではなく、自国でタイヤを製造しようと、なにも知らないところからタイヤの開発に乗り出し、現在に至ります。その『人の生活をもっとよいものに』という心がけが、今でもブリヂストンには残っているのです」と、同社の歴史とポリシーを教えてくれました。

現在まで息づくブリヂストンの根幹を知ってもらうためには、ゴムやタイヤの展示物を通じて、目で見て感じとってもらうことが重要だったと言います。

なぜタイヤは黒い? タイヤの基礎知識を学ぼう

それでは、博物館の展示をご紹介していきましょう。まずは、「タイヤの基礎知識」です。ここでは、世界中のさまざまなタイヤの展示と、タイヤの構造や役割について学ぶことができます。ここで、遠藤さんから「なぜタイヤが黒いのか、その理由を知っていますか?」と質問されました。

答えを聞いてみると、「ゴムに黒いカーボン(炭素)を混ぜるからです。カーボンを配合することで、強度や伸縮性が上がります」とのこと。

タイヤの黒は配合物の色だったんですね。ちなみに、清潔感が大切な食品を扱う場所のフォークリフトなど、黒いタイヤの跡が残ると困る場所で使われる車両には、シリカを使用した白や緑のタイヤが使われているそうです。この「タイヤの基礎知識」コーナーには、ほかにも硫黄や合成ゴムなどといったタイヤの原料が展示され、それぞれどの部分に必要なのかもパネルで解説されていました。

またこのコーナーでは、装置を動かすことで実際のタイヤの特性を知ることができたり、タイヤの断面図などが展示されていたりして、文字通りタイヤの基礎を知ることができます。社会科見学に来た小中学生はもちろん、大人も「え、タイヤってゴムだけでできていて、その中に空気が入っているんじゃないの!?」と驚くそうです。

F1やインディで活躍してきたブリヂストンタイヤ

「モータースポーツへの参戦」は、モータースポーツ好きの人にぜひ見ていただきたいコーナーです。フロアに入ってまず目に付くのが、インディカーのレプリカ。

これは、佐藤琢磨選手が2017年シーズンのインディ500で優勝したときのマシンを再現したもの。タイヤサプライヤーが、ブリヂストンだったため、展示しているのだそうです。(タイヤはファイアストンブランドで供給)

優勝した際に履いていた本物のタイヤも展示されていました。オーバル(楕円)コースだったためか、片側にタイヤカスや摩耗が集中しているのがわかります。

ブリヂストンといえば、F1のタイヤサプライヤーとしての歴史も外せません。F1への挑戦は、欧州でのブリヂストンの認知度を高めることが目的だったとのこと。

1997年~2010年の参戦期間中に獲得した優勝バッジが並ぶ様は、まさに圧巻。同じ場所には、タイヤテストに使った無限のフォーミュラーマシンも展示されており、「このマシンで鈴木亜久里さんがテストしていたんです」と遠藤さんは話してくれました。

ほかにもミハエル・シューマッハ選手やミカ・ハッキネン選手が優勝した際にマシンが履いていたタイヤも展示されていました。

タイヤだけじゃない! 建物を支える免震技術

ブリヂストンが製造しているゴム製品は、タイヤだけではありません。地震から建物を守る免震ゴムもそのひとつ。免震ゴムの展示は、博物館を作る際に特に重視したことだそうで、「タイヤやゴム製品作りの技術を通じて、こういった部分でも社会に貢献していることを知ってもらいたい思いが強くありました」とのこと。

建物を支える免震ゴムは普段は目にできない部分です。特殊なゴムと鉄板を交互に織り交ぜたミルフィーユ構造の免震ゴムが揺れることで、ビルの揺れの軽減や、部材への負荷を減らす重要な役割を果たしています。

なお、この設備は後付けが可能で、銀座の三越本店や東京駅にも活用されているそうです。博物館の地下で見ることができる免振ゴムは、実際に博物館の建物を支えている免震ゴムそのものだそう。地震の際にどう揺れるかは、AR(拡張現実)で見ることができます。

クルマ好きならぜひ一度訪れたい

「ブリヂストンの取り組み」のコーナーで気になったのが、燃費や環境保護への取り組みです。普段、クルマを運転しているときはあまり意識しませんが、走行中に地面に接しているのは4本のタイヤだけです。そのため、タイヤの特性によって燃費も大きく変わってくると言います。燃費がよくなれば当然、CO2の削減にもつながるもの。タイヤの技術開発が進むほど、環境に優しいクルマが増えるのです。

しかし、「環境に優しいものを作ろう」だけではなく、ブリヂストンの企業理念は「ゴムを通じて多くの人々の生活をよりよいものに」という部分もあるとのこと。ほかにも、タイヤに触れるコーナーや映像で学べるコンテンツなどもある「ブリヂストンTODAY」。クルマが好きな方は一度訪れてみると、たくさんの発見や学びがありますよ! ただし、展示物はリニューアルすることもあるので、その点ご注意ください。

▼「ブリヂストンTODAY」
所在地:東京都小平市小川東町 3-1-1
電話番号:042-342-6363
開館日:月曜日~土曜日(日曜・祝日は休館)
開館時間:午前10時~午後4時(入館は午後3時30分まで)
入館料:無料
Web:https://www.bridgestone.co.jp/corporate/today/index.html

(取材・文・写真:斎藤雅道 編集:木谷宗義+ノオト)

[ガズー編集部]

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