クルマの未来のカギは「炭素繊維」? 帝人が目指す自動車部品のイノベーション
合成繊維、化成品などで知られる帝人株式会社(以下:帝人)は近年、自動車部品の分野にも力を入れています。一見すると、自動車と関連がなさそうな企業ですが、帝人が培ってきた素材の技術はクルマにも活きるものだそう。
そこで、帝人が考えるこれからの自動車部品などについて、同社のコーポレートコミュニケーション部(以下:帝人広報)にお話を聞きました。
素材メーカーから部品供給のパートナーへ
帝人は、2008年から先進複合材料の開発に注力しているそう。先進複合材料とは、鉄やアルミなどの金属よりも軽くて強度のある強化プラスチックなどのこと。クルマのほかに、航空機やスポーツ用品の骨組み材料としても使用されています。
2017年になると、自動車向け樹脂部品を手がけるアメリカのコンチネンタル・ストラクチュラル・プラスチックス(CSP)社を買収するなど、自動車部品開発にさらに力を入れていきます。
「当社は、『未来の社会を支える会社』となるため、高機能素材や素材の複合化を進めることで、ビジネスの変革を図ってきました。現在、自動車に関しては、環境性能向上を促す『軽量化』による貢献を掲げ、これまでの素材サプライヤーから、多素材の複合化を強みとした部品供給のパートナーに変革することを目指しています。CSP買収はそうした動きの布石と言えます」(帝人広報)
注目は軽くて強い「炭素繊維」
軽量化と強度の面で帝人が注目しているのは、炭素繊維を樹脂で固めたCFRP(炭素繊維複合材料)です。現在は、クルマや航空機のボディの軽量化のほか、ブレーキローターやロケットの耐熱タイルなど、高熱に耐える必要がある部分に用いられる材料ですが、これを帝人はもっと活用しようと考えています。
「CFRPは、次世代のクルマにはこの材料がもっと多くの場所に使用されるようになると考えています。鉄の約4分の1の軽さと、約10倍の強度を両立し、かつ変形しにくいという特徴が強みです。さらには酸やアルカリなどにも強いため、次世代型自動車向けの軽くて強い部材として期待されています」(帝人広報)
CFRPは軽くて丈夫なため、多くの自動車メーカーやサプライヤーが、車体の骨格などに用いる研究を行っています。しかしCFRPは、素材の性能としては申し分なくても、加熱すると固まる特性を持つ「熱硬化性樹脂」を使って作るため、成形から冷却までに数分~数時間を要します。コストも高く、量産自動車向けの部材としては安定した提供が難しいとされてきました。この問題を解決するため、帝人では別の樹脂に着目しました。
「時間のロスを改善するため、加熱すると軟化し冷えると固まる『熱可塑性樹脂』を使用した、CFRTP(Carbon Fiber Reinforced Thermoplastic)という材料です。これにより、部品をわずか1分間程度で製造することが可能となりました。CFRTPは、軽量で高強度なだけでなく、成形後に形状を変えられることから、リユースやリフォームなどのリサイクルも可能です。すでに量産車にも採用されています」(帝人広報)
たとえば、GMのピックアップトラック「シエラ・デナリ」の荷台も、この素材を採用しているそうです。シエラ・デナリの荷台は、CFRTPを使うことで自動車部品に求められる強度や耐久性を担保しながら、従来と比べて28㎏もの軽量化を実現したそう。今年5月にはこの技術が評価され、GMが発表した「第27回サプライヤー・オブ・ザ・イヤー」に帝人とCSPの両社が選ばれました。
「軽量化によって、燃費効率がよくなり、CO2排出量を低減できます。地球環境に与える負荷を軽減する観点からも、部品や車体の軽量化は重要になってくるでしょう」(帝人広報)
内装材やポリカーボネート製フロントウインドウも製品化
- 帝人はソーラーカーレースのマシンにも炭素繊維を提供している(筆者撮影)
炭素繊維以外では、耐久性や通気性などに優れる人工皮革やシート表皮の「しわ」や「たるみ」を防ぐワディング材、静音性能に優れる吸音材といった内装材や、ポリカーボネート(PC)製のフロントウインドウなども手がけているそうです。ポリカーボネートは、ガラスと比べると重さは約半分で、200倍もの耐衝撃性を持っているとのこと。
すでに帝人は、海外で自動車部品メーカーとしての存在感を高めつつあります。昨年度から、欧州での自動車部品の需要の高まりに注目し、北米、欧州、中国の3地域をベースとした自動車向け複合成形材料の事業展開を強化していくとのことでした。いつか、私たちが乗るクルマにも、帝人の部品が使われる日がくるかもしれませんね。
(取材・文:斎藤雅道 写真:帝人株式会社 編集:木谷宗義+ノオト)
<関連リンク>
帝人株式会社 TEIJIN
https://www.teijin.co.jp/
[ガズー編集部]
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