知ってる? いざというときに心強い、クルマの緊急ボタン
みなさんは、警察や消防、そして救急車を要請する緊急電話をかけたことはありますか? 一度もかけたことがない人もいるかもしれません。一方で、電話したことがあっても緊急事態で焦ってしまい、冷静に対応できなかった人もいるのではないでしょうか?
実は、最近はそんな状況をサポートしてくれる力強い装備が付いているクルマが増えているのです。それが「ヘルプネット」や「SOSコール」と呼ばれる装備。
簡単に言うと、事故に遭遇したとき、警察や救急車、消防車の出動要請をアシストしてくれるもの。運転席からもすぐに手が届く天井付近(一部の車種はカーナビ内)に「SOSボタン」が組み込まれていて、それを押すと通信センターへ接続されて専門のオペレーターと通信を開始。クルマに組み込まれたマイクとスピーカーを通じてオペレーターが会話で状況を確認しつつ、必要に応じて警察や消防への連絡を代行します。
自分で電話しても同じだと思うかもしれませんが、慣れないこと、まして事故に遭遇すると気が動転して警察や消防への電話がサッとできないケースも少なくありません。
このシステムのまず優れていることは、ボタンを押すだけでオペレーターに繋がること。さらに、クルマの位置も通信センターへ自動送信されるので、位置がわからなくても正確な緊急車両要請が行えるのも心強いポイントです。
エアバッグ展開時には自動的に接続
とはいえ、事故被害の大きさによっては自分でSOSボタンが押せない状況になるかもしれません。実は、そんなときこそ、このシステムが絶大な効果を発揮します。クルマは事故である程度の衝撃を受けると、エアバッグが開きます。そこで、エアバッグが開くと「事故が発生した」とクルマが判断し、ドライバーや乗員がボタンを押さなくても通信センターへ自動接続。オペレーターが乗員へ呼びかけて、まずは乗員へのダメージを確認します。
その結果、緊急車両の手配が必要なしと判断されればいいのですが、大きな損傷を受けて乗員の反応がないなどのケースのときに、オペレーターが状況に応じて緊急車両を手配する手順になっています。乗員が意識を失うような状況になると、本人が電話で緊急車両を要請することはできません。しかし、このシステムがあれば、命を救うことができるかもしれないのです。
さらにはドクターヘリも出動要請
そしてこのSOSシステムは、さらに機能を広げています。それが救急自動通報システム「D-Call Net(ディーコールネット)」。なんと、状況に応じてドクターヘリやドクターカーで医師を現場に派遣するのです。
その取り組みのポイントは、事故発生時に車両データをセンターへ自動通報して解析すること。衝突の方向、衝突の激しさ、シートベルト着用の有無、多重衝突の有無などの情報がエアバッグ展開とともにセンターへ送られ、そのデータを車両ごとのアルゴリズムに基づいて解析。乗員の損傷状況を推定します。
その結果に応じて、オペレーターが地域の消防本部、もしくは協力体制が整ったドクターヘリ基地病院(2019年3月末時点で全国に54か所ある)へとドクターヘリやドクターカーの出動を要請。ヘリ基地病院へは事故発生場所や車種、色などのほか、事故発生からの時間、衝突の状況、280万件の事故データをもとにした死亡重傷確率推定アルゴリズムに基づく運転席と助手席の死亡・重症率算出結果などもデータとして送信。迅速に対応可能なシステムが構築されているのです。
万が一の大事故の際は、できるだけ早く治療をはじめられるかが命を左右します。「D-Call Net」は、クルマの通信機能を活用して一人でも多くの命を救えるように考えられたシステムで、今後はますます普及するでしょう。
このシステムは現在、トヨタ、ホンダ、日産、マツダ、スバルなどが参画し、最新モデルなどに採用。BMWをはじめメルセデス・ベンツやアウディなどの欧州ブランドへ拡大する気配もあります。
車両に通信端末が組み込まれていることがシステムを使う前提となりますが、トヨタはすでにいくつかの新型車に通信機能を標準搭載。ホンダは純正ナビ装着車には基本的に通信端末が組み込まれており、マツダも最新の「マツダ3」から主要グレードへの標準搭載がはじまりました。また、日産では軽自動車の「デイズ」にもオプションで組み込むことができます。
多くのクルマでは月々の使用料が必要ですが、万が一の状況で命を守るためにも機能を理解して契約しておくのがマストと言えますね。
(文:工藤貴宏 編集:阿部綾奈/ノオト)
<関連リンク>
緊急通報サービスHELPNET
https://www.helpnet.co.jp/
[ガズー編集部]
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