レクサス、プリウス……盗難車ワースト10から考える防犯対策
大切な愛車が盗まれてしまう……。あまり考えたくないかもしれませんが、現実に起こりうる話です。ではいったい、どんな車が盗まれやすいのでしょうか? また、その理由とは?
一般社団法人 日本損害保険協会は、自動車盗難事故の実態調査結果を毎年公表しています。今回は、自動車盗難の傾向やドライバーがすぐできる盗難防止対策について伺ってきました。お話を聞いたのは、一般社団法人 日本損害保険協会・損害サービス企画部の山口兼由さんです。
- 一般社団法人 日本損害保険協会 損害サービス企画部 山口兼由さん
解体され、パーツとして不正輸出されるケースも
――自動車盗難は、毎年何件くらい発生しているのでしょうか?
自動車盗難は2000年前後に急激に増加し、2003年には64,223件と過去最高を記録しました。このような自動車盗難の急増をきっかけに、2001年9月、警察庁等の関連省庁および関係団体を構成メンバーとした「官民合同プロジェクトチーム」が設置されました。
「官民合同プロジェクトチーム」では、損保協会が民間側の事務局となり、各種対策を実施してきました。例えば毎年10月に、ポスターの掲出や啓発動画の配信等を行う「自動車盗難防止キャンペーン」を実施しています。長年にわたって自動車盗難の防止対策を推進してきた結果、盗難件数は減少し、2018年は59年ぶりに1万件を下回りました。
- 自動車盗難認知件数の推移(1954~2018年) 資料提供:日本損害保険協会(警察庁統計データをもとに作成)
「官民合同プロジェクトチーム」では、自動車メーカーに対して、盗難防止性能の高い自動車、およびイモビライザーなど盗難防止装置の普及促進の働きかけを実施しています。また、盗難自動車の不正輸出防止対策として、関係省庁と連携し、使用済自動車が適正に解体されたことを確認する取り組みなども行っています。
――盗まれたクルマは、不正に海外へ輸出されるのでしょうか?
近年では、部品に分解されて海外に持ち出されるケースが増えているようです。特に茨城、千葉、愛知、大阪にはヤード(解体施設)が多く存在しており、そこに盗難車が運ばれてバラバラにされ、海外に持ち出されています。
――クルマをそのまま持っていくのではなく、解体してパーツとして海外へ不正輸出されるわけですね。
ただ近年は不正輸出を防止するため、税関でのチェックも厳しくなっています。例えば、電子的なマニフェスト(船積みされている貨物の明細書)がきちんと照合されないと輸出できないといった、水際の対策も強化されているようです。
車種別ワーストランキング、1位は?
――どんなクルマが盗まれているのでしょうか?
下記の表は、2016~2018年の車名別盗難状況をまとめたものです。2018年11月の調査では、レクサスが1位、次いでプリウス、ランドクルーザー、ハイエースとなっています。
- 車名別盗難状況(2016~2018年)、それぞれ11月(1ケ月間)の調査結果。 資料提供:日本損害保険協会
――順位をみる限り、必ずしも高級車だけが狙われるというわけでもないようですね。
プリウスは走行音が静かなので、二次犯罪に使われるという話を聞いています。また、ランドクルーザーとハイエースは馬力が大きく、海外の未舗装なデコボコ道でも使えるという理由が考えられます。特にハイエースは、不正輸出先で小型バスとして利用されているケースもあるようです。
――レクサスなどの高級車や、海外で使い勝手のいいランドクルーザー、ハイエースが狙われやすいということですね。盗難が発生している時間帯や場所についてはいかがでしょうか?
時間帯は「深夜~朝(22~9時)」が75.8%を占めており、窃盗犯が深夜から朝までの薄暗い時間に活動していると考えられます。場所は48.4%が「自宅(屋外)」、29.2%が「契約駐車場(屋外)」となっており、屋外駐車場に停めてある車両が圧倒的に狙われやすくなっています。しかも9割以上のクルマが、鍵を抜きドアをロックした状態で盗まれているので、「施錠しているから大丈夫」とはいえません。
- 盗難発生の時間帯。深夜から朝にかけて(22~9時)が最も多くなっている。 資料提供:日本損害保険協会
- 盗難が発生した場所の推移。屋外の盗難が圧倒的に多い。 資料提供:日本損害保険協会
自動車盗難を防ぐ有効な手段とは?
――車上狙いでは、どのようなものが盗まれているのでしょうか?
かつてはカーナビが上位だったのですが、セキュリティーコード機能を搭載した製品の普及や、盗難防止ネジの活用も進んでいるため、近年は狙われにくくなっています。最近はバンパーやドアミラーなど、高額で売れる外装部品にシフトしていますね。あとは、車内に置いてあるスポーツ用品、バッグ類などが上位に入っています。
- 車上ねらいの被害品ワーストランキング(2018年11月調査) 資料提供:日本損害保険協会
――車上狙い含め、盗難を防ぐためには、どうすればよいのでしょうか?
自動車盗難対策としては、下記の6つが挙げられます。
1. イモビライザーの装着
2. クルマを離れる際のドアロック
3. 盗難防止機器の活用
4. 貴重品の置きっぱなし厳禁
5. 自動車部品にも盗難防止対策
6. 安全な駐車場選び
ハンドルロックやタイヤロックなどを装着しておけば、犯人に対して「盗むのが難しそうだな」、「時間がかかりそう」と思わせることができ、抑止につながります。あとはガレージに監視カメラをつけたり、近づくと光るライトをつけたり、といった車外の対策も有効です。1つだけではなく、複数の対策を組み合わせればより安全でしょう。
下記の啓発動画も、ぜひご覧ください。
- 「私のこと愛してないの?」久松郁実が怒る理由(STOP THE 自動車盗難/啓発動画)
- 「STOP THE 自動車盗難」チラシ 資料提供:日本損害保険協会
▼STOP THE 自動車盗難 -自動車盗難等の防止に関する官民合同プロジェクトチーム
http://www.car-tounan-boushi.jp/
複数の対策を行うことで、「このクルマは盗むのが難しそうだな」と犯人に思わせる。さらに、実際に盗むまでに手間と時間がかかる状態にしておく。それが自動車盗難に対する有効な手段といえそうです。
大切な愛車を守るためにも、防犯グッズなどを活用しながら二重、三重の対策を心がけましょう。
(取材・文・写真:村中貴士 編集:ミノシマタカコ+ノオト)
<取材協力>
一般社団法人 日本損害保険協会
http://www.sonpo.or.jp/
[ガズー編集部]
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