学べて楽しい工場見学! 日産リーフやノートを生産する日産自動車追浜工場へ
自動車メーカーの中には、クルマを組み立てて完成させる工場を一般に公開しているメーカーもあります。日産自動車もそのひとつ。今回は、神奈川県横須賀市にある「日産自動車追浜(おっぱま)工場」の工場見学をご紹介します。
- 日産自動車追浜工場の看板 ※工場内外は撮影不可
1年間で約6万人が訪問する人気の工場見学
日産自動車追浜工場は、ノート、日産リーフ、キューブ、ジューク、シルフィの5車種を生産しています。
- 日産自動車追浜工場で生産する車種
車種ごとに専用ラインで生産するのではなく、1本のラインで混流生産しているのが特徴。ガソリン車とe-POWER(ハイブリッド)車、電気自動車というまったく異なる車種を製造する日本で唯一の工場です。
- 日産自動車の組み立て工場は全国3ヶ所。それぞれ車種と役割が異なる
- 日産自動車の工場は世界中にあり、日本で走るクルマの一部のモデルは海外生産とのこと
追浜工場が誕生したのは1961年。敷地面積は、東京ドーム約37個分にあたる 1,707,000平方メートル。就労する従業員は約2,800名と、日本国内でも屈指の規模を誇ります。
- 日産自動車追浜工場の航空写真
工場見学の受け入れは1964年から。現在は関東近県のみならず、遠くは北海道から、年間約5万4000名の小学生が社会科見学に訪れるそうです。
- 工場見学をする小学生たち
事前に予約をすれば、一般の方の工場見学も可能で、昨年は小学生たちと合わせて約6万名もの方が追浜工場を訪れました。ちなみに、日産の全国での工場見学の受け入れは、年間16万名にも及ぶとのことです。
自動車工場のイメージとは大きく異なる
- 工場見学の入り口であるゲストホール
追浜工場を訪れると、まずはメインゲート近くのゲストホールに案内されます。ゲストホールは2017年4月にリニューアルされたこともあり、とても綺麗。ロビーには日産リーフとノートe-POWER、そして栃木工場で生産されているNISSAN GT-R(MY2020)が展示され、自由に試座ができます。
- ゲストホールに入ると日産車たちがお出迎え
- 展示されているノートe-POWER(左)とNISSAN GT-R(MY2020)
フロントには、SNS投稿に便利な楽しいポップなども。また受付で誕生月だとプレゼントがもらえるそう。さらに、日産グッズの自動販売機もあります。
- ロビーに置かれたSNS投稿に便利なポップたち。専用台紙に押すとクルマが完成するスタンプになっている
- 日産グッズがいっぱいの自動販売機
入館したらゲストホール2階に上がり、プロジェクターを見ながら日産自動車の歴史や概要、そして自動車ができるまでの工程を学びます。
- クルマができるまでをプロジェクター映像で学びます
鉄板をプレスしてパーツを作る工程から始まり、溶接と塗装を行ってボディが完成。そこにエンジンをはじめとする、さまざまな部品が取り付けられて完成するのですが、工場見学では、そのうち部品が装着されていく様子を見学できます。
その後、1階の展示スペースで、クルマができる工程を、実際のパーツを見ながら説明されます。ちなみにクルマが1台完成するのに要する時間は、約24時間だそうです。
- ゲストホール1階の展示エリア
- 日産自動車の取り組み「ニッサン インテリジェント モビリティ」の展示解説
- 自動車製造の最初の工程となる「プレス」作業の解説
- 鉄板のロールからクルマのボディなどが作られる。ひとつのロールでおよそ300台分とのこと!
- プレスした鉄板を溶接する説明のコーナー。1台のクルマで行われるスポット溶接の数は約3000ヶ所
- 溶接の種類と工具。作業はロボットが行うとのこと
- 溶接が終わったボディに塗装を行う説明。クルマの塗膜は0.1ミリというから驚き!
- 塗装工程の説明。大きく4工程に分かれて行う
- 塗装が終わった車両にパーツを取り付ける。その点数は約3000点!
- 部品の取り付け作業を体験するコーナーも用意されている
- 展示コーナーには、車の基本動作「走る」「曲がる」「止まる」の構造説明ブースもある
- 過去に追浜工場で生産された車種をミニカーで紹介
展示エリアにはクルマの仕組みが学べる体験型の展示もあり、包括的にクルマについて学ぶことができます。一通り説明を受けたら、いよいよ工場の建屋へ移動し、クルマが組み立てられる現場を見学します。なお、展示ホールは撮影可能ですが、工場内は撮影不可です。
- ゲストホールから組み立て工場へと続く廊下
- 廊下から降りる階段から見た工場の様子
建物内にはさまざまな作業車両が通っているため、信号や横断歩道まで用意されており、見学者は案内スタッフの指示に従って、一旦停止をしたり、左右確認をしたりしてラインへ近づいていきます。見学ポイントにはパネルや液晶画面が用意され、それらを見ながら、すぐ近くで行われている各種作業を見学します。
- 組み立てラインの様子
ラインに近づいて思うのは、「想像以上に静か」で「床がとてもピカピカして綺麗」、そして「とても明るい」こと。その中をさまざまなクルマがゆっくり流れていくのですが、よく見ると、作業しやすいようにクルマが上下に動き、見ていてどこか楽しさを感じます。
- 組み立てラインの近くには作業内容を説明するパネルが設置されている場所もある
ここで製造される車種は5車種ですが、同じ車種でもいろいろなグレードやオプション設定がありますから、流れてくるクルマは千差万別。どれひとつとして同じものはありません。工場では間違えずに部品を取り付けられるよう、取り付けるパーツの仕分けなどに工夫がされていました。ラインのすぐ近くに、見学者向けに間違い防止を説明するコーナーも設置されていました。
- 組み立てラインの近くにある部品の供給方法の模式図
- 部品を間違えずに分類する工夫の紹介
そして、組み立て工程の中で、日本では追浜工場だけだという「同じ場所で、車種によりガソリンタンクかリチウムイオンバッテリーを取り付ける」ラインを見学。下の写真の手前にはガソリンタンク、その奥にはバッテリーが用意され、ガソリン車の場合はガソリンタンクを、日産リーフがやってきたときはバッテリーを作業員が取り付けていきます。ボルトの閉め忘れなどの作業ミスを減らすためのモニターシステムもありました。
- 日本では追浜工場だけだという、電気自動車のバッテリーとガソリンタンクの混合設置ライン
- 手前側にガソリンタンクなどが流れ、車体下側のラインに日産リーフ用のバッテリーのラインがある
- 日産リーフの車体が流れてくると、バッテリーを乗せたリフトが上がり、取り付け作業が始まる
一通り組み立てが完了すると、検査工程へと進みます。検査場はラインと同じ建屋にあるのですが、その場所までは自走する必要があり、ここで初めてクルマのエンジンやモーターが動かされます。いわばクルマが目覚め、初走行する場所です。
- 製造ラインの最終段階。赤いシャツを着た検査員が車両をチェックした後、検査ラインへと自走する
検査工程では、特別な資格を持った検査員が実際に走行させたりしながらチェックしていきます。検査項目は多岐にわたり、そこに関わる人の多さにも驚きます。溶接部分などはロボット化が進んでいるそうですが、最後の確認作業は人です。
こうしてでき上がったクルマは、自走して専用橋をわたり、ふ頭へ移動。工場見学では、このふ頭も案内されます。
- 追浜工場近くのふ頭で船積みを待つクルマたち
到着したふ頭からは、横須賀という土地柄、海上自衛隊の船も見ることができます。ここから北海道や九州、そして海外へと船で輸送されるとのこと。ちなみに関東近県は、専用の運搬車に乗せられて旅立つそうです。海外生産された車両もここに集められ、追浜工場で検査したあとに出荷されるそう。
こうして約3時間の工場見学は終了。見学は無料で、さらに子どもには「見学のしおり」といえる冊子と日産リーフのミニカーもプレゼント。しかもこのミニカー、シャーシとボディが分かれており、「自分の手で完成させてください」という工場ならではの粋な計らいです。
- 年少見学者に渡される見学のしおり(左)とミニカー
- ミニカーは最後は自分の手で完成させる、という趣向
工場見学というよりアミューズメントパーク
説明員の解説はとてもわかりやすいもので、工場に関するほぼすべての質問に答えてくれます。話を伺うと「業種を問わず全国のいろいろな工場見学に行き、どのように説明されているのか、どういう展示をしているのかを学び、会社に持ち帰って工場見学の質の向上に役立てています」とのこと。さらに参加される方の理解度によって、見学コースや内容を変えているそうです。また、作業員が小学生に対して手を振られている姿も。テーマパークで働くスタッフたちにも似ており、そのもてなし方に、工場見学というよりアミューズメントパークといった印象を受けました。学べて楽しい工場見学、ぜひ足を運んではいかがでしょうか?
(取材・文:栗原祥光 写真:栗原祥光、日産自動車 編集:木谷宗義+ノオト)
<関連リンク>
日産追浜工場|工場の紹介
https://www.nissan-global.com/JP/PLANT/OPPAMA/
[ガズー編集部]
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