超レアなクルマの船積み作業を見学&体験! 大人気企画マツダ「自動車専用船見学会」体験レポート

いきなりですが、ここで問題です。工場でクルマが完成すると、多くのクルマは何を使って、どのように運ばれるのでしょうか?

実は、自動車を運ぶためだけに作られた「自動車専用船」に載せて、各地へ運ばれていきます。ご存知でしたか?

マツダでは、毎年夏休みになると、小学4年生~中学生とその親を対象に、この自動車専用船の見学会を行っています。今年は7月26日、マツダ広島本社にて「自動車専用船見学会」が開催されました。

通常、目にすることのないラインオフ(=工場で完成)後の輸出車両を運搬する船が見学できるこのイベント。その作業を行っているのは、マツダ社員でも簡単に立ち入ることができないエリアということもあり、応募者は年々増加。今年はついに、過去最高の328組656名という応募があり、厳正な抽選の結果、39組78名が選ばれました。なんという狭き門!

マツダ本社正面玄関で集合した参加者。見学する自動車専用船アクアマリンエース号までバスで移動した
マツダ本社正面玄関で集合した参加者。見学する自動車専用船アクアマリンエース号までバスで移動した

まるで海に浮かぶ巨大な「立体駐車場」!?

筆者の記憶にある可動の建造物の中では、最大級のもの。多くの参加者も、船の大きさに圧倒されていた
筆者の記憶にある可動の建造物の中では、最大級のもの。多くの参加者も、船の大きさに圧倒されていた

今回の見学会の舞台は、商船三井が所有する自動車専用船「アクアマリンエース号」。ケイマン諸島船籍で2008年3月竣工のこの船は、長さが199.99mもあり、海に浮かぶ立体駐車場といった雰囲気です。

船内は12階建て。できる限り隙間を空けず、整然と車両が並べられていきます。ちなみに高さを変更できる階もあり、大きな車両も積載可能なのだそうです。

船内に進入するCX-5
船内に進入するCX-5

この広島で2日間かけて2,978台のクルマを積み込んだ船は、その後100kmほど離れた山口県の防府で1,652台を追加で積載。最終的には太平洋を横断して、北米方面に向かっていったそうですよ。

見学会では、デモンストレーションではない本格的なクルマの積み込みを目にすることができました。

この地で生まれたクルマはすぐに船へ。瀬戸内・広島の地を後にする
この地で生まれたクルマはすぐに船へ。瀬戸内・広島の地を後にする

素早く、確実に! プロの技でクルマを船に積み込む

気になるクルマの搬入作業は、見学会では最初のプログラムに組み込まれていました。

1台ずつ停車へ誘導される。動きに無駄がない
1台ずつ停車へ誘導される。動きに無駄がない

数台ずつの車列を組んで、安全な車間距離と車速を保ちつつ、できたばかりの完成車が船に積まれていきます。その作業は非常に整然としています。

まず、積み込み位置の近くにクルマが到着すると、向きを整えて待機。笛の合図が鳴ると、1台ずつ所定の場所に誘導されていきます。停止状態から動き出す時、ハンドルを切るタイミング、微調整で後退し停止するタイミングなど、動きをすべて笛一本で誘導しているのです。

合図があるとリバースギヤを入れて停止位置へ向かう。作業風景からプロの技を感じることができた
合図があるとリバースギヤを入れて停止位置へ向かう。作業風景からプロの技を感じることができた

停車位置が決まると、車両固定用具でクルマをしっかり固定していきます。こちらの作業は体験コーナーも用意。意外と子どもたちでも体験しやすい作業だったようで、体験者からは「もっと力のいる作業かと思った」という声が上がりました。

車両の固定は体験コーナーも用意された。ねじれを直して、まっすぐに固定
車両の固定は体験コーナーも用意された。ねじれを直して、まっすぐに固定

参加者は、貴重な積み込み作業の様子を熱心に見入っていました。「乗り物が好きなので船に積まれるクルマを見れてテンションが上がった」という小学生もいれば、「自分も車庫入れがそんなに得意ではないので、あの積み込みを見ていてすごいなと感心してしまいました」と話す親御さんも。みなさん、プロの技に、すっかり釘付けになってしまったようです。

船は乗組員にとって「暮らしの場所」

アクアマリンエースは、半年乗務すると3か月休みというシフトで、22名の乗組員が乗船しています。航海中、船員さんたちの生活の場となる船内の見学も、コースに組まれていました。

船内も見学。少ないスペースで昇降できるよう、階段の角度が急になっている
船内も見学。少ないスペースで昇降できるよう、階段の角度が急になっている

ここで、未知の世界。船の生活をご紹介。

まずは食糧事情。もしもに備えて、予定航海日数+1か月分の食糧が用意されています。加えて、ある程度のことは対処できる医薬品も一緒に積んで、もしものときに備えているとのことです。乗員には日本人、フィリピン人、ロシア人などさまざまな国籍の人がいます。ご飯の好みも違うので、船の中では、フィリピン人のシェフが、それぞれの船員さん用に3種類の食事を1日3食作っているそうです。しかも、とてもおいしいのだとか!

海上で気を付けなければいけない存在と言えば、海賊です。「今までに襲われたことはない」とのことですが、海賊が出没するエリアを航海することもあるため、不測の事態に備えて、防弾チョッキやヘルメットも用意されています。

生活面でも防犯面でも、「もしも」に備えながらも、快適な暮らしができるようになっているようでした。

自動車産業を身近に感じてもらえるきっかけに

このイベントについて、マツダのスタッフは「いわゆる『モノづくり』そのものとは違うかもしれませんが、これもクルマが完成して、出荷されていく上で大切なプロセスの一つ。自動車や自動車産業を身近に感じてもらえるきっかけになれば何よりです」。また商船三井の担当者は「なかなか一般ユーザーとの接点のない海運の現場を少しでも身近に感じてもらえたら」と、イベントへの思いを話していました。

参加者にとって、きっと忘れられない夏の思い出となったこのイベント。普段目にすることがないクルマ流通の一面に触れることができ、筆者にとっても思い出深い夏となりました。

(取材・写真・文:中込健太郎 編集:ミノシマタカコ+ノオト)

[ガズー編集部]

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