レーシングシミュレーターの見本市「SimRacing EXPO」でeモータースポーツの最新技術を体感
日本でも注目を集めているレーシングゲームを使った競技「eモータースポーツ」。PlayStation向けの「グランツーリスモSPORT」が、日本では主なソフトで、それに見合ったドライビングデバイス・レーシングシミュレーター(ステアリングコントローラー、ペダルセット、シフターなど)が発売されています。
- このイベントの期間中、サーキット側では「ブランパンGTヨーロッパ」が開催されており、その公式ゲーム「Assetto Corsa コンペティツィオーネ」を使ったeモータースポーツ大会も併催されていた
海外、とりわけ欧米ではすでにモータースポーツの1カテゴリーとして定着しており、このカテゴリーを戦うためのデバイスを開発・販売するメーカーが数多く存在しています。そういったメーカーが一堂に集まり製品を披露するのが、ドイツのサーキットであるニュルブルクリンクで毎年、開催されている「ADAC SimRacing Expo」です。ちなみに、ADACは「ドイツ自動車連盟」の略称で、日本のJAFに相当する団体です。
さまざなアイディア光る最新レーシングシミュレーター
まずは「ADAC SimRacing Expo」に展示されていた、最新のレーシングシミュレーターをご紹介していきましょう。
■ImSim
今回のイベントでもっとも注目を集めていたメーカーが、ポルトガルのImSim社。同社のシミュレーターには、3つの特徴があります。
・流線形のスマートなデザイン
・搭載された3つの駆動軸によってクルマの動きをスムーズに再現
・使用するドライバーに最適なドライビングポジションを容易にセッティングできる機構
eモータースポーツのドライバーでもある筆者が実際に体験してみたところ、クルマの中心を軸にした回転「ヨーイング」が見事に再現されることに驚きました。レーシングシミュレーターの大半は、駆動軸の上下の動きでクルマの荷重移動を再現していますが、これの機構ではカーブを曲がる際に発生する遠心力(G)を再現しにくいもの。しかし、ImSim社のシミュレーターでは、最大10.6度の回転角を発生させる機構を組み込むことで、より多くの情報をドライバーに伝達できます。ドリフトを多用するラリー、D1GPといった専用競技のトレーニングマシンとしても有用かもしれません。
なおImSimのブースでは、イタリア・ランボルギーニ社が世界各地で開催しているワンメイクレース「ランボルギーニ・スーパートロフェオ」に使用される「ウラカン・スーパートロフェオEVO」の基本ドライビングポジションと、実車と同じステアリングを装着したシミュレーターも公開されていました。
■Wave Italy
F1マシンのボディがそのまま使われたシミュレーターと、コンパクトなモデルを展示しているのは、イタリアのWave Italy社。
このF1シミュレーターは、同国のフェラーリ社も採用しているもので、先に紹介したImSim社のシミュレーターと同じくヨーイングが再現されています。F1カーの視線で体験できるだけあって、体験予約の枠はあっという間に埋まっていました。
もうひとつのコンパクトなモデルは、シート下に可動機構が埋め込まれています。ポイントは、コンパクトなパッケージングにすることで、運送・設置を容易にしたこと。表立ってアピールしていませんでしたが、他メーカーの一部製品にもそういった工夫が見受けられました。
■ポルシェ
唯一自動車メーカーとして参加していたのは、ポルシェ。モータースポーツ活動が活発なだけに、シミュレーターにも力を入れています。展示されていたのは、シートが可動式のコンパクトなシミュレーターと、レーシングカー「911 GT3Cup」の実車にシミュレーターのシステムを組み込んだもの。
これらは、主にワンメイクレース「ポルシェ・カレラカップ」に出場するドライバーがトレーニングとして使用しています。
ごくわずかな時間ですが「911 GT3Cupシミュレーター」を体験することができました。基本的にレーシングカーそのものということもあり臨場感は抜群でした。
あくまでも「勝つため」のツールである
「ADAC SimRacing Expo」では、最新鋭のレーシングシミュレーターを展示しているだけではなく、レーシングシミュレーターを使ったeモータースポーツ大会も行われます。「iRacing」というシミュレーターソフトを使った「ポルシェ911GT3カップカー」のワンメイクレース、チーム対抗(ピットインした時にドライバー交代する)の耐久レースなどが、朝から夜遅くまで行われていました。
出場している選手たちは、リアルのレーサーと同じくチームに所属し、チームには企業やモータースポーツチームなどがチームと選手をサポートしている、れっきとした「プロ」のアスリート。彼らにとってこうした大会は、レーサーがサーキットを走るのと同じ、人生をかけた戦いの場となっています。
- こちらのブースはシミュレーターのレーサー、「シムレーサー」を育成するレーシングスクール・VRSのブース
- リアルのモータースポーツと同じく、タイム、ハンドルの切り方、加減速をデータロガー(ハンドル右横のRACELOGICという機械)で記録・分析してフィードバックしていく。「VBOX」ブースにて
モータースポーツとの新しい関わり方
今回の「ADAC SimRacing Expo」には、FIA(世界自動車連盟)のメンバーやFIAから招待された自動車メーカーの人たちも視察に来ており、注目度が高まっていることを実感しました。レーシングシミュレーターを使ったモータースポーツの利点は、低コストで安全、そして幅広い年齢層が挑戦できることにあります。ゲームとはいえ、スポーツである以上、身体能力や健康管理は必要ですがそれでも挑戦できるハードルはかなり低いものとなりました。
シミュレーターを個人購入するのは難しいですが、国内にはこういったシミュレーターを常設しているショップがいくつもあります。今からでも、「モータースポーツに挑戦したい」という夢は叶うかもしれないのです。「ADAC SimRacing Expo」を取材して、eモータースポーツの世界が着々と広がっていることを感じました。
(取材・文・写真:クリハラジュン、編集:木谷宗義+ノオト)
[ガズー編集部]
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