シトロエン100周年を記念して歴代モデルが大集合!「CITROËN Centenary Gathering」
デザインの面でもメカニズムの面でも個性的なことで知られてきたシトロエンは、今年で創業100周年。そこで、それを記念したイベント「CITROËN Centenary Gathering」が、9月17日(火)~23日(月)にかけて、東京・赤坂のアークヒルズ アーク・カラヤン広場で開催されました。
このイベントには、1923年製の「5HP(タイプC)」、1951年製の「トラクシオンアヴァン」を始めとした歴史的モデルから最新モデルまで、およそ20台のシトロエンが展示されたほか、コラボレーションカフェやグッズ販売、試乗なども実施。さらに、最終日にはヒストリックシトロエンによるパレードランが、行われました。
山あり谷ありの100周年
イベントの内容に触れる前に、まずはシトロエンというメーカーを簡単にご説明しましょう。
シトロエンは、1919年にアンドレ・シトロエンにより創業されました。タイプAというモデルを送り出して以降、成長を遂げますが、1934年の終わりにシトロエンは財政難からミシュランの管轄下に置かれてしまいます。翌1935年の7月には創始者であるシトロエン自身も病死し、混迷の時代へ。
- シトロエン2CV
そして、ひとつのコンセプトによりある名車の開発が始まります。「2CV」です。3リットルのガソリンで100㎞の距離を走れる低燃費や、ジャガイモ50㎏と大人4人を乗せて時速60キロメートルで走れる走行性能などを条件に開発されたこのクルマは、第二次世界大戦後の1948年にデビュー。当初こそ「醜いアヒルの子」などと言われましたが、徐々に生産台数を伸ばし、フランスの国民車となっていきます。
1955年には、アバンギャルドなデザインと油圧によるハイドロニューマチック・システムを駆使した「DS」を発表。またたく間にヒットモデルとなると同時に、この独創的なシステムが、シトロエンらしさのひとつとして多くの人に印象付けられることとなったのでした。
- シトロエンDS19
しかし、華々しさの裏側で1970年代に入ると再び経営が悪化し、1974年にはプジョー傘下に。以後は、プジョーとプラットフォームやエンジンを共用するようになります。現在も、その体制は変わりませんが、プジョーとシトロエンではまったく別の個性を持ったクルマが作られていることはご存知のとおり。まるで人生のように山あり谷ありの歴史をたどってきているのです。
ただの販促イベントにしたくなかった
それでは本題の「CITROËN Centenary Gathering」にスポットを当てていきましょう。
主催はプジョー・シトロエン・ジャポン株式会社となっていますが、関わっていたのはインポーターだけではありません。CCCカーライフラボ株式会社 カーライフ研究所 所長の堀江史朗さんも、この企画を進めていた一人。今年の6月末から7月にかけて、本国フランスでもイベントが開催されており、プジョー・シトロエン・ジャポン(以下:PCJ)から「日本でも何かできないか?」と相談を持ちかけられたそうです。
「記念イベントを開催するのであれば、きちんと100周年をわかってもらい、シトロエンというブランドを知ってもらいたい。そう考えて進めていきました」と堀江さん。一般に、こうしたイベントはメーカーやインポーターの販促的なカラーが強くなるものですが、このイベントに関してPCJからの注文はほとんどなかったと言います。
「おかげで、とてもこだわったイベントができました。たとえば、100年を1日で知ってもらうことは難しいので、開催期間を1週間としたのもそのひとつ。また、展示車をフェンスで囲わないことにもこだわりました」(堀江さん)
- タイプC 5HP
- トラクシオンアヴァン
- 2CV
展示車は、オーナーさんから借りた貴重なクルマばかりですが、見に来た人たちとの垣根を少しでも低くしたいと、オーナーさんに思いを伝えて実現したのだそうです。
- DS 21
- アミ8
- BX
1週間にわたってイベントは、「クルマを並べるだけでは伝わらない」との考えから、歴代車両を並べるだけではなく、シトロエンが出てくる映画や作品の展示なども行われました。単なる懐古趣味ではなく、かつてこうしたモノがあり、これが今につながっているということを知ってほしい。本当の意味での温故知新を目指した展示を心がけたそうです。
最終日には展示車が都内を走った
最終日である22日には一度、展示車たちは姿を消しました。それは代官山モーニングクルーズに参加するため。実はこれも100周年記念イベントの一環で、そのフィナーレを飾るものでした。ここから都心を回り、青山や銀座を周回したのちに六本木アークヒルズの会場へ再び戻ってくるパレードランです。
今回、筆者はパレードに参加した「CXプレステージ」に同乗させていただき、オーナーである福田さんにお話を伺うことができました。CXは、1974年~1989年に生産されたシトロエンのフラッグシップモデル。中でもプレステージは、フランス大統領車としても使われたロングボディのサルーンです。福田さんは、このCXのプレステージを実用車として普段から乗られています。
福田さんは「シトロエンは、究極の実用車である」と話します。ハイドロニューマチックサスペンションを採用するシトロエンは、レバーなどその操作系も特殊だと思われがちですが、自然に手が届くようにできているそう。重い荷物を積み込んで下がったリアを自動的に上げてくれる車高調整も実用的な機構ですが、CXにはさらにステアリングを自動的にセンターに戻すセルフセンタリング機構が備わっており、ロングドライブでは軽くステアリングを支えているだけでまっすぐ走ると言います。
さらなる100年へ
独創的なデザインやメカニズムから、愛好家も多いシトロエン。こうして歴史を追って並べられてみると、その独創性が際立って見えますが、シトロエン自体は一貫して乗り心地を追求したクルマづくりを続けてきたのではないかと感じられました。今年、日本でも発売が開始され「C5エアクロスSUV」でも、プログレッシブ・ハイドローリック・クッションと呼ばれる新しいサスペンションシステムが採用されています。
100周年を迎えたシトロエンが、次なる100年に向けてどんなクルマを送り出してくるのか? 今回のイベントからその答えが少し見えたような気がします。
(取材・文・写真:きもだこよし 編集:木谷宗義+ノオト)
[ガズー編集部]
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