今も愛されるエポックな車両が誕生。2019年に50周年を迎える国産車たち

今から50年前となる1969年(昭和44年)。日本では国民的映画と呼ばれた『男はつらいよ』の第1作目が公開され、ドリフターズの『8時だョ! 全員集合』の放送がスタートした年でもありました。

自動車業界では、今や日本を代表する車種となったあのモデルの登場や、いまだにオンリーワンの価値を持ち続けるあのモデルなど、エポックな車両が多く登場した年でもあります。そんな1969年に登場した国産車をピックアップしてみましょう。

日産 フェアレディZ

それまでのやや古典的なオープンスポーツカーだったフェアレディから、世界の名だたるモデルとも肩を並べることができるGTカーへと変貌し、名前も新たに登場したフェアレディZ。それまでの日本車のイメージを大きく変えたエポックメイキングな1台と言えるでしょう。

ロングノーズショートデッキのスポーツカーらしいフォルムに直列6気筒エンジンを搭載し、四輪独立懸架式サスペンションを採用。当時の水準でも非常に高いポテンシャルを持ち合わせたモデルに仕上がっており、その頃のポルシェなど、名だたるスポーツカーに匹敵する性能となっていました。

特に主力マーケットとしてターゲッティングされた北米市場では圧倒的な支持を集めたのは、フェアレディZの企画を立ち上げた、当時の北米日産の社長・片山豊氏の尽力であったと言われています。その片山氏は「ミスターK」や「Zの父」と呼ばれ、世界中のユーザー知られる存在となったのです。

日産 スカイラインGT-R

こちらもフェアレディZと並んで日産を代表するスポーツカーのひとつである「スカイラインGT-R」。現在は「スカイライン」の名前は外れ、「GT-R」という車名となりましたが、その源流が「スカイラインGT-R」にあることはいうまでもありません。

そんな「スカイラインGT-R」の初代モデルも1969年に誕生しました。

4ドアセダンであった「スカイライン」のフロント部に、当時のレーシングカーに搭載されていたエンジンをベースとした直列6気筒DOHCエンジンであるS20型エンジンを搭載したもので、前後に備わるGT-Rのエンブレム以外はほとんどベース車と同じという佇まいが「羊の皮をかぶった狼」というキャッチフレーズにピッタリと言えるでしょう。

1970年10月になると、ベースとなった「スカイライン」に2ドアハードトップが追加され、GT-Rもそれに合わせて2ドアハードトップベースとなります。ここで新たにリアフェンダーにFRP製のオーバーフェンダーを備えたため、一目見てGT-Rであることが分かるような意匠となったのです。

いすゞ ベレット GTR

「ジーティーアール」の冠が付けられたのは何も「スカイライン」だけではありません。1963年にデビューした小型乗用車の「ベレット」をベースに、よりハイパフォーマンスバージョンとしてリリースされた「ベレットGTR」もそのひとつだったのです。

ベースとなった「ベレット」には、このクラスの乗用車としては異例の四輪独立懸架式サスペンションやラック&ピニオン式のステアリングを採用。1964年には、2ドアクーペとなる「GT」を追加しました。このモデルこそ、日本車として初めて「GT」を名乗った車種であり、フロントにディスクブレーキを採用した初の国産車でもありました。

1969年10月に登場した「ベレットGTR」は、この「ベレットGT」をベースにレースで活躍していた「ベレットGTX」の市販車バージョン。「117クーペ」にも搭載されていた1.6リッターDOHCエンジンに換装し、足回りを強化したスパルタンな仕様だったのです。

マツダ ルーチェ・ロータリークーペ

ロータリーエンジンといえば、2012年に「RX-8」が販売を終了して以来、搭載車が途切れているにもかかわらず、いまだに多くのファンを抱え、マツダを象徴するもののひとつとなっています。「RX-7」に代表されるピュアスポーツの印象が強いと思いますが、実は前輪駆動のスペシャリティーカーも存在していました。

それがこの「ルーチェ・ロータリークーペ」です。

先にデビューしたセダン型の「ルーチェ」が持つ雰囲気を踏襲しながらも、日本車離れしたデザインには多くの注目が集まりました。その一方でマツダ初となる前輪駆動方式を採用した結果、熟成不足が響いたのか、メカニカル面でトラブルが発生する事態となってしまいます。

また、上級グレードで175万円という同時期の「クラウン」や「スカイラインGT-R」をも凌ぐ高価格だったことが影響し、およそ3年間で1000台弱を販売するにとどまってしまいました。しかしその貴重なFFロータリーというキャラクターから、マツダがレストアを実施した個体を保有しており、今も旧車イベントなどでその美しい姿を見ることができます。

50年前というとはるか昔のイメージですが、当時誕生した「フェアレディZ」や「GT-R」が今でも現役というのはうれしいところですね。一方でいすゞは乗用車部門から撤退していたり、ロータリーエンジンも現在はラインナップから消滅していたりと時代の流れを感じる部分もありました。果たして今から50年後はどんな自動車が走っているのでしょうか?

(文:小鮒康一 編集:ミノシマタカコ+ノオト)

[ガズー編集部]

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