渋滞を楽にする10 の知識 渋滞対策を予報士に聞いてみた!
NEXCO 東日本には、渋滞のプロと呼べる人が存在します。それが「渋滞予報士」です。NEXCO 東日本管轄の高速道路の渋滞発生を、一年を通して予測し、その対策も考えるのがお仕事。その担当として、現在、NEXCO 東日本には 4 人の渋滞予報士が働いており、今年(2019 年)6 月に初の女性渋滞予報士・小宮奈保子さんが誕生しました。ちなみにNEXCO 中日本では「高速道路ドライブアドバイザー」、NEXCO 西日本では「渋滞予測士」と呼ばれています。そこで、今回は、渋滞のプロである小宮さんに高速道路の渋滞への対応策などを聞いてみました。
- 第 6 代目の渋滞予報士として 2019 年から担当となった NEXCO 東日本関東支社の小宮奈保子さん。
その 1 渋滞の半分はサグや上り坂で発生する
「渋滞の理由には、さまざまなものがありますが、実のところ全体の約8割が交通集中の渋滞です。いわゆる自然渋滞です。意外にも工事や事故による渋滞は、それほど多くはありません。そして、その交通集中渋滞の約 7 割がサグや上り坂で発生します。渋滞全体で言えば、サグや上り坂で発生する渋滞が半分にもなるのです」(小宮さん)
- 道の勾配が変化して、微妙な上り坂になるのがサグと呼ばれる場所。
サグとは、「たわみ」「たるみ」を意味する英語で、下り坂から上り坂に差し掛かる凹になっている場所のこと。ここを通るクルマのドライバーは勾配の変化に気づかずに、無意識のうちに速度を落としてしまいます。すると、その後ろを走っているクルマは、前を走るクルマとの車間距離が詰まった! とブレーキを踏むことに。そして、さらに後ろのクルマもブレーキ! そして、流れ全体が遅くなって渋滞となるのです。
そのため渋滞の発生を予防するには、サグや上り坂で速度を落とさないことが重要となります。
- サグの場所を知らせるために高速道路にある標識。
その 2 詰めすぎた車間距離が渋滞を発生させる
「サグや上り坂があっても交通量が少なければ渋滞は発生しません。ところが交通量が多くなって、走っているクルマの車間距離が縮まると、後続車がブレーキを踏むことになり。その波が後ろに伝達することで渋滞が発生します。その発生を防ぐ方法のひとつが、十分な車間距離です。適度な車間距離がクッションの役割を果たし、後続車へブレーキの波が伝わることを防ぎます」(小宮さん)
車間は距離ではなく、時間を目安にするのが良いとアドバイスします。道が空いているときは、前方の車両との間は約 4 秒。混雑したときでも、つかず離れずの約 2 秒がおすすめとか。ちなみに首都高速道路などの都市高速道路では、走行速度が異なるので、車間は、もう少し詰めても良いかもしれませんね。
- 前車との車間距離は、時間で確認する方が適切。
その 3 渋滞中の車線変更は控える
「渋滞の中に入ってしまえば、どの走行車線を走っても進む速度は同じです。必要以上の車線変更は、危険ですし、さらなる渋滞の悪化を招きます」(小宮さん)
右へ左へと、車線変更をして、わずかに先に進んでも、渋滞が解消されてしまえば、その差もすぐに解消されてしまうというわけです。
その 4 渋滞が始まるのは右側の追越車線から
「渋滞の多くは追越車線から発生します。早く走りたい気持ちから追越車線にクルマが集まり、各車線が均等に使われないことで渋滞発生が早まります。みんなでキープレフトを心がけることで渋滞を緩和することができます」(小宮さん)
高速道路の一番右は追越車線と呼び、追い越しのときだけに使うのがルールです。追い越し が終わった後でも、えんえんと追越車線を走り続けることは道路交通法違反となる場合があるのです。追越車線に居座り続けることは、交通違反になるだけでなく、渋滞を引き起こす遠因にも。さらには、最近話題の“あおり運転”の被害者になる可能性も生みます。追越車線は、追い越すときだけ使って、キープレフトを心がけましょう。
その 5 渋滞時の速度は時速 20 ㎞前後
「NEXCO東日本での渋滞の定義は、一部の区間を除き、時速40 ㎞以下の低速走行状態となることです。ただ、交通集中による渋滞の場合は完全にクルマが止まってしまうことは少ないですが、事故渋滞の場合は、状況により流れが止まってしまうこともあります」(小宮さん)
通常の渋滞は“時速 20 ㎞”で流れていると覚えておけば、例えば、「ここから渋滞 10 ㎞」などの表示があったときに「時速 20 ㎞で流れていれば、30 分ほどで通過できる」などと目安を計算することができます。覚えておきましょう。
その 6 渋滞表示は機械がリアルタイムに自動で
「高速道路で表示される渋滞情報は、車両感知器による自動検知で渋滞を把握し、自動で表示しています。渋滞中の走行速度を計測してリアルタイムに表示しています。」(小宮さん)
都市間を結ぶ高速道路の場合、路面内に埋め込んだセンサーの上を鉄の塊が通りすぎるときに発生する電流を検知するループコイル式が中心となっています。首都高速などの都市交通は、道路横に設置した超音波センサーを利用する超音波式が多くなっています。
その 7 渋滞が増加するか解消するかの表示がある
「渋滞が増加していくときは、道路情報板に赤い三角マークが表示されます。これが出ているときは、“渋滞が増加していく”と理解してください。逆に、めったにありませんが、渋滞が縮小傾向の時は緑色の三角のマークがでます。」(小宮さん)
その 8 専用アプリやツイッターを活用しよう
「お出かけする前に、ぜひとも渋滞予測をチェックしてください。スマートフォンの無料アプリ『ドラぷらアプリ』を使えば渋滞予測を加味した目的地までの所要時間も検索できます。また、ホームページの『ドラとら』では渋滞予測を見ることができます。ツイッターでも事故や渋滞に関する最新情報が提供されています」(小宮さん)
出発前に渋滞の予測をチェックして、それを避ける計画を立てるのがスマートでしょう。ちなみに渋滞予報の精度は 80%ほどとか。
- 入社より 7 年。これまでは新規にできた高速道路の交通量の変化や効果などの評価を行ってきた小宮さん。
「これがジレンマなんですけれど、精度100%というのは、私どもの予測が活用されていないことになります。予測を見て、行動を変えていただきたいというのが本心なんですけれど、そうなると精度率が下がってしまうんですね」と困り顔の小宮さんでした。
その 9 急がば回れ
「鉄道の場合、何かトラブルで使えない路線があると、別ルートを使いますよね。同じように、高速道路も交通状況に応じて“乗り換え”する時代です。複数のルートを事前に想定しておくのがおすすめです。そして最新の交通情報をチェックして、交通状況に応じた最適ルートを使って、快適なドライブを」(小宮さん)
関東エリアでいえば、最近になって外環道や圏央道が開通するなど、迂回ルートが組みやすくなっています。走行距離が少しくらい長くても渋滞状況によっては、目的地まで早く着くこともあります。
その 10 渋滞対策は予報×ドライバーの掛け算
「渋滞は私どもが行っている渋滞対策だけでは解決できません。渋滞予測を見て、ドライバーのみなさんが回避してくれることや、サグや上り坂で速度低下注意していただくことで、渋滞を減らすことが可能となります。つまり、私どもとドライバーのみなさんとの掛け算なんです」(小宮さん)
- 過去の渋滞情報に、連休のパターン、道路状況の変化、周辺イベントの開催状況を考慮して予測が完成する。
渋滞は、利用するドライバーの動向によって、増加したり解消したりするもの。渋滞発生のメカニズムを知れば、渋滞を走るときの不快さもやわらぐかもしれません。
(文・写真:鈴木ケンイチ 編集:ミノシマタカコ+ノオト)
<関連リンク>
ドラぷら
https://www.driveplaza.com/
ドラとら
https://www.drivetraffic.jp/
NEXCO 東日本(関東)ツイッター
https://twitter.com/e_nexco_kanto
[ガズー編集部]
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