レンタルキャンピングカーで地域の魅力発見! 全国初、長崎県による移住先探しの試み
いつか都会を離れ、地方でゆったりと暮らしたいという夢を持つ方も多いのではないでしょうか。地元にUターンするにしても、住んだことのない地域を選ぶにしても、移住先探しでは事前にしっかり地域について知る必要があります。
長崎県のながさき移住サポートセンターでは、全国初の試みとして、移住希望者へキャンピングカーの貸出を行っています。
この「キャンピングカーによるラクラク移住先探し」事業を始めたきっかけや、利用の仕方などを長崎県企画振興部 地域づくり推進課に伺いました。
自治体がキャンピングカーを貸し出すという全国初の試み
――移住先探しにキャンピングカーを貸し出すというアイディアはどのように出てきたのですか?
これまで長崎への移住を考える方のさまざまな相談にお答えしてきました。そんな中、多かったのが「豊かな自然環境の中で暮らしたい」という移住希望者のニーズです。
そういった方にはぜひ海や山などの自然を大いに感じながら、各地域を巡って移住先探しをしてもらいたいのですが、そのような地域は公共交通機関や宿泊施設が少ないという難点もありました。
そこで、キャンピングカーを利用して回ってもらってはどうだろうというアイディアが出ました。
キャンピングカーを低料金で貸し出すことにより、交通の便や宿泊先の心配をすることなく、実際に候補地に行ってその地域の環境や働く場所、住まいなどをご自身の目で見て、感じてもらえるのでは、と考えたのです。
また、やはり、何日もかけて移住先探しをしていただくとなると、宿泊費や交通費のご負担が大きくなってしまうという問題もあります。キャンピングカーでしたら、そのような出費の軽減にもつながりますので、納得いくまで現地を見ていただけるかと思います。
移住相談をすれば1日3,000円でキャンピングカーを貸出
――キャンピングカーは何台稼働しているのですか?
現在、稼働しているのは1台です。県の所有ではなく、委託先のレンタカー会社の車両を使用しています。
軽自動車のキャンピングカーで、車種はインディ727。お子さまを含めて4名まで寝られます。車内には、給排水設備、サブバッテリー、カーナビ、テレビ、電気ポット、シュラフ(寝袋)を装備。長崎空港またはJR長崎駅、佐世保駅、諫早駅のいずれかまで来ていただけましたら、レンタカー会社の担当者がお迎えに行きます。
――基本料金1日8,000円のところを3,000円で貸出をしているとのことですが、条件はありますか?
あくまでも、移住先探しのお手伝いのための貸出ですので、長崎県への移住に関心のある県外の方向けとなります。そして、各市町の担当者と住まい、仕事、暮らしなど、移住に関すること全般についての移住相談を1回以上行ってもらうことも条件となります。
――相談はどのような流れで行っているのでしょうか。
キャンピングカーを利用しての移住先探しを希望する場合は、まずは、ながさき移住サポートセンターへ予約の申し込みをしていただきます。予約の際に、日程やどんなところに行きたいかをお伺いして調整を行います。
現地に着き、キャンピングカーを受け取りましたら、まずは目的の地域の市町窓口に行っていただき、担当者と移住相談を行っていただく……という流れです。
全てサポートしますので、ご安心ください。
その他にも訪問先の各市町が移住に関連した体験を用意しています。
大半の市町では、医療機関や学校・保育園、スーパーマーケットや市場を担当者のアテンドで見学していただいたり、先輩移住者への移住相談を行ったりしていますね。一部の市町では、一定期間滞在して移住体験ができる「お試し暮らし住宅」の見学や先輩移住者の皆さんとの交流会を開催しているところもあります。
利用者は九州のみならず全国各地から
――これまでどのくらいの方の利用がありましたか?
この事業は2015年8月から開始し、今年2019年で5年目になりますが、2019年8月時点で、79組179人の方にご利用いただいています。そのうち、14組34人の方の移住が決まりました。利用者は九州からだけではなく、全国各地からお出でいただいています。昨年2018年の実績では関東地区の方が多い傾向がありますね。
――移住された方も含め、利用された方の反応はいかがですか?
「キャンピングカーを見て声をかけてくれるなど、地元の方と会話するきっかけとなり、良かった」、「おもしろい試みだと思った」、「多くのエリアを回ることができた」、「時間を気にせず滞在し、住んでいる感覚で体験もできて大変良かった」など、概ね、良い反応をいただいています。
ただ、「車中泊が可能なスポットを探すのに苦労した」などのお声もいただいていますので、今後の課題として考えていかなければと思っています。
- 「ラクラク移住先探し」と書かれたキャンピングカーを見て声をかけてくれる地元の方も
――今後の展開を教えてください。
この「キャンピングカーによるラクラク移住先探し」の動きや有人国境離島法(※注)による雇用拡充事業の効果、世界遺産登録で県内の各地区が注目を集めたことなどにより、長崎県への移住者は年々増加しています。
これからも、移住者の増加を見込んで、市町と連携してキャンピングカーの利用も含めて移住希望者にとって魅力的な移住施策を展開していきたいと思っています。
また、長崎県と県内全市町が協働で運営しているながさき移住サポートセンターのウェブサイト「ながさき移住ナビ」では東京、大阪など各地での移住相談会の日程や就職・転職支援の紹介など、U・Iターンに役立つ情報を発信しています。現在お住まいの地域からでも、長崎の良さを知ってもらったり、情報を集めていただいたりができるかと思いますので、ぜひ、ご利用いただきたいです。
(※注 有人国境離島法:人口減少が進む国境に近い離島地域が無人になるのを防ぎ、国境離島を保全していくことを目的に制定された法律)
地方に移住することへの憧れがあっても、実行に移すのは、なかなかハードルが高いもの。実際に暮らすことを前提に地域をきめ細かく回ることのできるキャンピングカーは、移住を考える方にとって大きな味方となってくれそうです。
(取材・文:わたなべひろみ 編集:ミノシマタカコ+ノオト)
<取材協力>
長崎県企画振興部 地域づくり推進課 ながさき移住サポートセンター
https://nagasaki-iju.jp/
[ガズー編集部]
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