車いすからクルマへ。心のバリアフリーを描いた映画「リスタート:ランウェイ〜エピソード・ゼロ」出演者が語るクルマへの思い

2018年4月、不慮の事故により車いす生活となったアイドルグループ「仮面女子」のメンバーである猪狩ともかさん。その彼女が主演を務める「リスタート:ランウェイ〜エピソード・ゼロ」の完成披露上映会が9月20日に開催されました。

会場となったのは同映画のビューティディレクション担当の原田忠氏(資生堂トップヘアメイクアップアーティスト)が所属する資生堂のグローバルイノベーションセンター S/PARK。上映は1階ロビーにある世界最大のソニー製16K Crystal LEDディスプレイを用いて行われました。

上映会が行われた会場。走行シーンでは、世界最大サイズで大迫力の映像が楽しめた
上映会が行われた会場。走行シーンでは、世界最大サイズで大迫力の映像が楽しめた

主人公はクルマオタク女子。クルマを軸に心のバリアフリーを描く

この映画は、父親の影響でカーレーサーになることを夢見ながら、不慮の事故によって車いす生活となってしまったクルマオタクの引きこもり女子ヒナタ(演:猪狩ともか)が、納屋に眠っていた1台のスポーツカーに乗る、と決意したことからストーリーが動き始めます。

今回の準主役と言ってもいいこの車両は手動操作装置の装着だけではなく、鮮やかな赤い幌やマットブラックのレーシングストライプ、ホイールなどが監督のこだわりで選ばれ装着されたスペシャルな一台。ノーマルとの違いをチェックするのも面白いかもしれません。また、後半ではポルシェのカップカーも登場するなど、クルマ好きの視点から見ても目が離せない作品となっています。

脇を固める俳優陣も豪華で、ヒナタの母親役に手塚理美さんを起用。ヒナタのクルマを手動運転車両に改造する整備士役に忍成修吾さん。伝説のレーサー役に大澄賢也さんが出演しているほか、元バイク世界選手権参戦ライダーで、カーレーサーに転向し挑戦を続ける青木拓磨氏や(レーシングシーン監修としても参加)、車いすのファッションモデルとして活躍する日置有紀さんも出演。作品に奥行きを与えています。

撮影現場での青木拓磨さん
撮影現場での青木拓磨さん

今回はそんな映画「リスタート:ランウェイ〜エピソード・ゼロ」完成披露上映会で、主演の猪狩ともかさん、整備士役の忍成修吾さんにお話を聞くことができました!

実際に自ら劇中のロードスターを運転! ヒナタ役 猪狩ともかさん

最近マイカーも購入したという猪狩ともかさん
最近マイカーも購入したという猪狩ともかさん

もともと自動車免許を持ち、運転経験もあったという猪狩ともかさん。事故後、手動運転装置用の講習を受けて免許を書き換えたそうです。

「手だけで運転することに最初は慣れなかったのですが、だんだん慣れるにつれて今まで通りに運転できるようになりました。ただ、練習は普通のハイブリッド車を使っていたので、今回の撮影でスポーツカーに乗ってみると手動でも操作感が全然違いましたね。スポーツカーらしい重低音もあったのが新鮮でした。あと、オープンカーということもあって爽快感もありましたね。花粉症だったのが辛かったですけど(笑)」(猪狩さん)

劇中シーン
劇中シーン

実際劇中でもロードスターを運転している猪狩さんですが、実はケガをするまで、手だけで運転できることを知らなったとのこと。

「この映画を通じて手だけでも運転ができることを広く知ってもらい、障がいによって夢を諦めそうになっている人にも届いて欲しいと思っています」(猪狩さん)

ファーストカーはVW タイプ3ヴァリアント! 実生活でもクルマ好きな整備士・茅野役 忍成修吾さん

実生活では初めて買った愛車である、フォルクスワーゲン・タイプ3ヴァリアントに乗り続けているという、クルマ好きな一面もある忍成修吾さん。「この映画はクルマが走るシーンが多くて映像も綺麗なので、純粋にクルマ好きの方にも楽しんでもらえると思います」というクルマ好きへのメッセージとあわせて、今回の役どころの印象も伺いました。

撮影期間はわずか1日! 短くて寂しかったという忍成さん
撮影期間はわずか1日! 短くて寂しかったという忍成さん

「実際に福祉車両を作る工場や、映画にも登場する部品庫を見せていただいたのですが、本当に数多くの部品が用意されていて、それを使う人ひとりひとりに合わせて作っていく。まさにオーダーメイドで作られているという点に驚きました。車いすの方の多くは“誰かに頼まないと出かけられない”と気を遣ってしまう人が多いと思いますが、こういった車両があれば、自分の力だけで自分の好きな場所、時間に行くことができる、というのは気持ちが変わるんだろうな、と思います。そういうことを知らない方もまだまだ多いと思うので、この映画を通じて知ってもらえればうれしいですね」(忍成さん)

帆根川監督は、自らの愛車も映画に登場させるほどのクルマ好き! 

なお、監督・脚本を務めた帆根川廣(ほねかわこう)さんも実は大のクルマ好き。過去の作品「エンプティー・ブルー」では自らの愛車、マツダRX-7も登場させています。そんな監督からもメッセージをいただきました。

「本作は堅苦しいことを抜きにして楽しめる作品に仕上がっていると思います。映画『リスタート:ランウェイ~エピソード・ゼロ』を通して自然に車椅子ユーザーの方々の気持ちや生活に触れていただくことでいつの間にか理解と共感が深まって、“誰もが活躍できる社会”が少しずつでも実現していけばと希望しています」(帆根川監督)

映画「リスタート:ランウェイ〜エピソード・ゼロ」は現在、Amazon Prime Videoで配信されているほか、猪狩ともかさんのトークショーとセットで企業向けの上映会も開催したとのこと。今後も企業、学校、団体や一般向けに各地で自主上映会を開催していくそうです。車いすユーザーだけでなく、クルマ好きの視点から見ても十分楽しめる映画ですので、気になる方は公式サイトをチェックしてみてください。

(取材・文:小鮒康一 編集:ミノシマタカコ+ノオト)

<関連サイト>
リスタート:ランウェイ〜エピソード・ゼロ 公式サイト
http://barrierfree-film.org/restart/

[ガズー編集部]

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