R31スカイライン専門ショップからラジコンメーカーへ! その理由とは?
岐阜県加茂郡坂祝町でR31型スカイラインの専門ショップを運営する柴田自動車。ショップ名を「R31HOUSE」として、「東京オートサロン」や「ノスタルジック2デイズ」といったイベントにも毎年出展していることから、R31愛好家のみならず旧車ファンの間ではよく知られた存在です。しかし実はこの「R31HOUSE」にはもうひとつ、ラジコンメーカーとしての顔があります。
なぜ、中古車ショップがラジコンメーカーに? その理由を代表取締役の柴田達寛さんにうかがいました。
きっかけは、「キッズコーナーのコンテンツ」として
R31HOUSEは、柴田自動車がR31型スカイラインを専門に扱うために作ったショップです。この名称は今から22年前、柴田さんが学生時代の友人3人でR31に乗り、チームを作っていたことに由来するそう。そして2010年、とあることをきっかけにラジコンに深く関わることになります。
「オイル交換や車検にやってきたお客様のお子様向けに、社屋にキッズコーナーのコンテンツとして、ラジコンサーキットを開設したのが始まりです。ところが、当時流行りだしていたドリフトラジコンに特化したサーキットの作りが話題となり、徐々にマニアが遊びに来るようになりました。それにともなって自社でドリフトラジコンの大会を開催するまで。すると、その様子がYouTubeやFacebookで拡散され、大会の規模も大きくなっていき、世界中のラジコンファンが集まるようになったんです。おかげでキッズコーナーはなくなってしまいました」(柴田さん)
最盛期では、ラジコンサーキットの利用だけで、年間の来場者がなんと6000人を超えたそうです。
大会で勝つために自社でシャーシを開発、そしてメーカーへ
ドリフトラジコンの人気の高まりとともに多くの大会が開催される中、「自社の技術が活かせるのでは?」と自作のラジコンカーを開発し、ワークスドライバーも採用して各大会に参戦します。
「自動車を扱う会社の技術を活かしてラジコンマシンを開発し、大会に参加するようになりました。もともとは『大会で勝てるマシンを作る』という目的で開発を始めたのですが、2011年の冬にスーパーラジコン主催の『最強ドリフターは誰だ?』で優勝すると、その優勝マシンを欲しいと言う人が増えたので、ラジコンメーカーになりました」(柴田さん)
R31HOUSEが開発したラジコンシャーシ「GRK」は、その後2012年に問題点を改良し「GRK2」として登場。このころから、大会でよく優勝するシャーシとして注目されるようになっていきます。そして今では、シリーズ累計12車種をリリースするまでに。ラジコン開発のための研究は、クルマ用のパーツ開発でも参考になることが多いと柴田さんは明かします。
「始めは、実車でやっていたカーボンとアルミの切削を応用して、シャーシだけを開発していました。その後、金属、プラスチック、ゴム、樹脂、電子部品など、さまざまなパーツを手掛けるようになり、ラジコン総合メーカーとして、すべてのアイテムを自社で設計・開発・生産するようになりました。そこで得たノウハウは、実車のパーツ作りにも応用できることがたくさんあります、具体的な話は企業秘密ですが、大きく役に立っていることは間違いないです」(柴田さん)
勝てるマシンの開発と同じぐらいこだわっているのが、本物のクルマのような操作感です。その試行錯誤は、本物のレーシングカー開発に匹敵するやりがいのある仕事なのだとか。
「ドリフトラジコンの大会に参戦しているので、特にジオメトリーやアライメントといった足回りが重要だと考えています。この部分にこだわることで、実車のような迫力のある走りができるんです。ラジコンシャーシを開発していると、実車との相互関係を強く感じますね。やっていてびっくりするほどです。ラジコンが実車に近づくと同時に、本物のレーシングカーも、テクノロジーの進歩でラジコンカーに寄ってきているので、この差異はこれからもっと少なくなると思います。個人的な考えですが、将来的には大きいか小さいかだけの違いで、どちらも同じような構造になるのではとも思っています。そう考えるとおもしろいですよね」(柴田さん)
目標は総合的なモータースポーツ企業
ファンから求められる形で、ラジコンメーカーとしても動きだしたR31HOUSEには、目標にしていた会社があります。
「実は、アメリカのTRAXXAS(トラクサス)という会社に憧れて、ラジコンメーカーを立ち上げました。トラクサスはドラッグレース、モンスターレースといった実車のモータースポーツを開催していて、そのレースイベントには、必ずラジコンのイベントがセットになっているんです。子どもたちがラジコンで遊んでいる姿を見て、感銘を受けました。モータースポーツとラジコンをセットにすることで、未来のクルマ好きや、ラジコン好き、メカ好きを増やすことができる成功例だと心底思っています。ラジコンを始めたときから『あんな風におもしろいことがたくさんできる会社にしたい!』と真剣に思っていました」(柴田さん)
その言葉通りR31HOUSEは2018年より実車のドリフト競技にも参戦しています。ドライバーはラジコン競技でワークスドライバーを努めていた蕎麦切広大選手です。蕎麦切選手は、ラジコンから実車への転身で話題となった若手有望ドライバーの一人。2019年にはR31スカイラインでFormula Drift Japanにも参戦し、世界からも注目されています
「実車の大会に出るようになり、新たなユーザーとの出会いが増えました。子どもからできるラジコンを通じて車の魅力に触れてもらい、将来は蕎麦切選手のように実車のドライバーになりたいという夢も抱いてもらえる活動ができていると思います」(柴田さん)
キッズコーナーから始まった同社のラジコン事業は、ショップ一角の枠を超え広く子どもたちに夢を与える存在へと進化しています。これからも子どもたちがますますクルマが好きになる取り組みを期待したいですね。
(取材・文:斎藤雅道 写真:柴田自動車 編集:木谷宗義+ノオト)
<関連リンク>
R31HOUSE
https://www.r31world.com/
[ガズー編集部]
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