クルマ整備の全国大会「全日本自動車整備技能競技大会」とは?

11月9日(土)、一般社団法人 日本自動車整備振興会連合会(JASPA)が主催する「第22回 全日本自動車整備技能競技大会」が、東京ビックサイトで開催されました。

全日本自動車整備技能競技大会は、自動車整備のサービス向上などを目的に1977年から2年に一度、開催されている、自動車整備の全国大会。各都府県からそれぞれ1チーム(面積の広い北海道からは7チーム)が予選で選抜され、計53チームが自動車整備の正確さを競います。

持ち時間は87分。接客の様子も採点される

競技の内容は、87分の持ち時間の間に、隠された6点の故障個所を探し、どこまで正確な整備が行えるかというもの。得点制で、獲得した点数で競われます。満点は1,000点ですが、6点の故障個所を直す「実車競技」だけでは、700点にしかなりません。ほかに、整備の基本がきちんとできているかを審査する100点満点の「基礎競技」、お客さまにクルマの不良点などを聞き出す200点満点の「アドバイザー競技」があり、3競技合わせて1,000点満点となります。

整備の正確さだけを見るだけではなく、接客態度も含めたすべての整備サービスを対象とするのが、JASPA主催の大会らしい特徴。今回の競技では、整備車両はトヨタ シエンタが使用されていました。

審査員のプレッシャーの中で作業をする選手たち

整備技能の大会と聞くと、地味な印象を受ける方もいるかもしれませんが、会場には全国の自動車整備振興会の関係者や、出場者の家族・同僚などが駆けつけており、たくさん観戦者がいました。また、地域によっては、選手応援用の横断幕やのぼりを持ち込む整備振興会もあり、とても華やかです。

しかし、ひとたび競技が始まれば、場内はクルマを整備する音だけが響きます。観客は静かに見守り、選手が故障個所をクリアしたときだけ、応援団の拍手が。常に審査員が目を光らせて採点しているため、選手はプレッシャーの中で作業を進めます。競技終了のブザーを聞いて崩れ落ちる選手や、緊張で上手くできなかったと嘆く選手もいました。

平均771.4点。期待を込めた厳しい評価に

今大会の平均点は、771.4点。前回の大会平均点 832.8点よりかなり下がっています。この大会結果を受け、閉会式の壇上で橋本昭朗 競技審査副委員長は「受け入れ時の問診でお客様に故障のキーワードを聞き出せていないチームが見受けられた」「設問に対して判断に苦慮している場面が見受けられた」と厳しい評価が。また、道具の扱いについても雑なチームが多かったそうで「(そのようなチームには)大きな減点をつけました。非常に残念です」と苦言を呈する場面もありました。

続けて橋本 競技審査副委員長は、来年から車載式故障診断装置(OBD)を使った、OBD車検なども始まることから「(出場者には)この新しい時代のリーダーになっていただきたいと思っています。技術力・応対力を磨くとともに、後身の育成と今後の業界の発展に努めてもらいたいです」とコメント。大会総括の際に、厳しい意見を語ったのは期待もあったからのようです。

大会では神奈川県チームの渡辺優樹さん、池田誠司さん(共に神中興業株式会社)が969点で初優勝。準優勝の釧路チームとは、わずか4点差というハイレベルな接戦を制しました。

日頃、安心してクルマに乗れるのは、整備士たちの高い技能があってこそ。私たちの知らないところで、整備士たちは技術を磨いているのですね。

(取材・文・写真:斎藤雅道 編集:木谷宗義+ノオト)

[ガズー編集部]

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