国内初のレベル2相当に対応!「三菱ふそう」の自動運転機能を試乗会で体験
三菱ふそうトラック・バスは11月12日(火)、喜連川研究所(栃木県さくら市)において、今年10月より発売した「レベル2」相当の自動運転機能を搭載する大型トラック『スーパーグレート』の試乗会を実施しました。これまでメルセデス・ベンツ「アクトロス」と、フレートライナーの「カスケディア」がトラック/バスとしてレベル2相当に対応していましたが、国内ではスーパーグレートが初となります。
スーパーグレートのポイントは、大きく4つあります。SAE(米自動車技術会)が定めるレベル2相当の高度運転支援機能「アクティブ・ドライブ・アシスト(ADA)」と、性能を一段と向上させた衝突被害軽減ブレーキ「アクティブ・ブレーキ・アシスト5(ABA)」。さらに「インテリジェント・ヘッドランプ・コントロール(IHC)」、「交通標識認識機能」です。
全車速追従+レーンキープでドライバーをサポート
中でも注目は「アクティブ・ドライブ・アシスト」でしょう。車両前部に搭載した高精度ミリ波レーダーと前方認識カメラにより、道路状況や車線の情報を分析.従来モデルにも搭載されていた「プロキシミティ・コントロール・アシスト」によるアクセルとブレーキの制御に加え、ステアリングも制御することで車両を同一車線内に維持する「レーンキープ機能」を搭載しました。これにより、先行車に全車速域で追従できるだけでなく、レベル2相当の高度運転支援機能の実現に至ったのです。
- 三菱ふそうトラック・バスの喜連川研究所で行われた、「レベル2」相当の自動運転機能を搭載する新型「スーパーグレート」の試乗会。前を走るのはメルセデス・ベンツの「アクトロス」
また、従来の「車線逸脱警報システム」をさらに進化させた「車線逸脱抑制機能」も搭載。60km/h以上で走行中、ドライバーの意図しない車線逸脱が発生した場合にステアリングを制御し、車両を車線内に戻します。
今回の試乗会は、こうした機能を体験することを目的に開催されました。なお、「インテリジェント・ヘッドランプ・コントロール(IHC)」と「交通標識認識機能」については、試乗の時間が昼間で標識のないテストコースだったため、残念ながらこの体験はできていません。
- 交通標識認識機能の解説図。カメラによって交通標識を認識してシステム内のデータと照合、最適な標識を表示する。進入禁止のみポップアップと警報音を発する
プロキシミティ・コントロール・アシストを体験
試乗場所は、三菱ふそうトラック・バスが所有する喜連川研究所内のテストコース。この日は、同じダイムラートラックの傘下にあるメルセデス・ベンツの「アクトロス」と、フレートライナーの「カスケディア」も用意されていました。両車とも日本国内では走行できないため、通行許可を取得した上で研究所まで自走してきたそうです。大型車免許を所持していない筆者は、助手席での同乗試乗となり、助手席で撮影をしながらその様子を観察することに。
- テストコース内を走るメルセデス・ベンツの「アクトロス」(左)と、フレートライナーの「カスケディア」(中央)、三菱ふそう「スーパーグレート」
試乗中は、スーパーグレートの「プロキシミティ・コントロール・アシスト」を中心とした体験になりました。スタートして間もなく、あらかじめ「プロキシミティ・コントロール・アシスト」でセットされていた速度(80km/h)にレジュームボタンで復帰すると、その速度までスムーズに加速。その時点から車線認識も行い、さっそく車線に沿って走るレーンキープ状態に入りました。
- 「プロキシミティ・コントロール・アシスト」がセットされるとメーター内には車線認識と速度が設定された状態が表示される
ここでステアリング制御の状況をわかりやすくするため、一時的に手放し運転で走行。直線路では細かくステアリングを動かし、緩やかなカーブにさしかかると車線のカーブに沿ってステアリングが追従していきます。その動きはまるでロボットが運転しているかのようです。
- デモンストレーションのため手放しで運転する。公道では手放しはNG
もちろん、手放し運転を公道で行うことはNGです。そのため、その状態を検知すると10秒ほどでメーター内には黄色の警告を表示し、さらに30秒前後で警告が赤色に変化。このまま手放し運転を続けていると警報音が断続的に鳴り始め、徐々にその間隔が詰まって60秒が経つと警報と同時にシステム解除となります。
- ステアリングに一定時間テンションがかからないと、まず保持を促す警告がメーター内に表示される。写真は「カスケディア」のもの
- 黄色の警告のまま走行していると警告は赤色に変化。断続的な警報音が鳴り、徐々にその間隔が狭まって60秒でシステム解除となる。写真は「カスケディア」のもの
また、スーパーグレートには赤外線カメラによってドライバーの視線も監視しており、仮にドライバーが前方から視線を長く外していることを検知すると「ポーンポーン」と別の警報を発する仕組みも備えられていました。
- メーターの上にはドライバーの視線を監視する赤外線カメラを搭載。前方から一定時間視線が外れると警報音を発する
「車線逸脱抑制機能」は、ウインカーを出さずにわざと車線を外れさせようとすると、スピーカーから「ブー!」という、かなり大きめの連続音で警告します。しかも、外れそうな側の、左右いずれかのスピーカーを使って鳴らすため、車線からどちら側が外れそうになっているのかが即座にわかるようになっていました。この機能は時速60km/hを超えた時にのみ動作するとのことです。
- ウインカーを出さずにわざと車線から外れようとすると「車線逸脱抑制機能」が働いて、警報音と同時に自動的に元の車線へ戻す制御が入る
ダミー人形を使った衝突回避テストも
この日は、歩行者に対する衝突被害軽減ブレーキとして機能する「アクティブ・ブレーキ・アシスト5(ABA5)」のデモも行われました。これまでもミリ波レーダーの搭載による制御を行っていましたが、新たにカメラを追加することで対象範囲を特に歩行者にまで広げたのです。もちろん、すべての事例で完全停止できるわけではありませんが、これによって障害物検知能力は大幅に危険回避能力が高められたというわけです。
こちらのデモでは、道路を横断する歩行者を想定したダミー人形を使いました。スーパーグレートが約30km/hで走行する中、ダミー人形がその前方を横切ろうと進んで行きます。ダミー人形がスーパーグレートのほぼ正面まで来たところでブレーキが作動。軽いブレーキ音がして停止直前でスキッド音が響かせたものの、スーパーグレートはダミー人形にぶつかることなく無事に停止しました。
衝突被害軽減ブレーキのデモでは、30km/hで走行する新型「スーパーグレート」の前をダミー人形が横切ったが、1mほど手前で自動停止した
この時ドライバーは、ブレーキを含め、回避操作を一切行っていないそうです。もっと激しいブレーキ音がするのかと思っていましたが、予想以上にスムーズに停止できた印象でした。
大型トラックの制御は乗用車より難しい
「これらの開発には困難な道のりがあった」と、同社開発本部メカトロニクス開発部マネージャー 木下正昭氏は言います。車幅が広く全長も長い大型トラックは、乗用車と違ってシビアなコントロールが必要で、その制御はかなり難しいのだそうです。木下氏によれば、「トラックは乗用車より車体が大きく重いため、操作してから実際にクルマが動くまでに要する時間は、乗用車の3倍かかる」と言います。そこで「カメラでの車線認識する際、遠方を認識して車線がどう変化するかを予測させる手法を採用することでこの解決を図った」そうです。
乗用車でのレベル2の体験でもわかるように、これを体験するとその快適さから多くの人が「二度と手放せなくなる」と言います。大型トラックでも同様の効果はあるわけですが、その最大の目的は、長距離を走るドライバーの疲労軽減と安全サポートにあります。このシステムが普及することでドライバーの労働環境改善と、悲惨な事故が少しでも減っていくことを期待したいものです。
(取材・文・写真:会田肇 編集:木谷宗義+ノオト)
<関連リンク>
三菱ふそうトラック・バス
https://www.mitsubishi-fuso.com/content/fuso/jp/index.html
[ガズー編集部]
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