大切なクルマを守る「カーポート」積雪地での仕様とは?

ドライブのパートナーである大切なクルマを守ってくれるカーポートやガレージ。北海道をはじめとする積雪地と雪のほとんど降らない地域とでは作りや仕様が違うはず。具体的にどのような違いがあるのかを株式会社LIXIL(リクシル)北海道エクステリア営業部の皆さんに教えていただきました。

どのくらい雪が積もるかが強度の違いに現れる

――雪の降る地域で使われているカーポートや車庫は雪の降らない地域とはどのように違うのでしょうか?

カーポートやガレージは、高強度のものと一般地域用の2種類に分けられます。

現在、弊社で主流となっているのがカーポートですので、その仕様で説明させていただきますが、一般地域用のものは基本的に柱が長手方向の片側に2本あり片側で屋根を支える形になります。専門用語でいうところの片流れ、片側支持というものです。

雪・風の影響の少ない一般地域の片流れのカーポート(1台用)
雪・風の影響の少ない一般地域の片流れのカーポート(1台用)

高強度・耐積雪仕様のカーポートは基本4本の柱で屋根を支えます。屋根の上に積もっても耐えられる雪の高さを30㎝、50㎝、100㎝、150㎝、200㎝(※注)と区分して、それに伴い柱の本数が4本、6本、8本と増えていきます。そして、柱の本数とともに屋根を支える梁の材料のアルミの肉厚を厚くしたり、梁自体を大きくしたりしていきます。
※注:積雪量の目安は新雪(比重0.3)で試算

耐荷重を上げるために柱を増やす(1台用)
耐荷重を上げるために柱を増やす(1台用)
雪の荷重が大きくなるほど梁も大型に
雪の荷重が大きくなるほど梁も大型に

雪の量は北海道内でも地域によってそれぞれ違います。例えば、札幌市内でも中心部では140㎝、南区の定山渓温泉の辺りでは190㎝と多いですし、新千歳空港のある千歳市では80㎝とあまり降りません。ですから、建築基準法施行令第86条第3項に基づいて自治体がその地域ごとに示す垂直積雪量を基準として、どの強度が適切であるかを選びます。

耐積雪地仕様のカーポートは北海道ではもちろん、東北、新潟、北陸3県、京都や兵庫の一部でも使われていますね。

雪だけじゃない! 高強度カーポートは鹿児島でも

――高強度のカーポートというのは雪の降る地域以外で使われることはないのですか?

積雪地のイメージが大きい高強度カーポートですが、実は、風の強い地域でも耐風圧のために使われているのです。耐積雪と同じ形で最大耐風圧強度54m/秒相当(数値は自社設定値)の風圧に耐えられるものまであります。主に太平洋側の台風による影響が大きい地域……鹿児島などで使われています。

また、強風にあおられやすい高台やビル風の強い地域でも使われることもあります。最近は、台風による被害も大きくなっていますよね。そのため、通常の基準よりも強度の高いものを希望されるお客さまもいらっしゃいますよ。

デザインと安全のバランスをとって

――カーポートが主流とのことですが、最近はガレージよりもカーポートを選ぶ方が多いのですか?

これまで北海道ではガレージを希望する方が多かったのですが、現在では、カーポート(アルミ製+スチール製)の出荷が、ガレージを抜き、エクステリア業界で話題となっています。

そもそも、積雪地とそうではない地域とでは、カーポートやガレージにクルマを収めることにより「何を防ぎたいか」の目的が違います。雪が降らない地域では、紫外線予防などクルマの塗装を守るためと雨を除けるため。

一方、積雪地では、何といってもクルマが雪に埋もれてしまわないようにというのが一番の目的でしょう。ですから、これまで積雪地では雪が吹きこまないガレージが主流でした。これは、夏冬のタイヤ交換をしなければならないため、タイヤの保管場所を確保するのに都合がよかったというのもあります。

積雪地では除雪とともにクルマの屋根の雪下ろしは大仕事
積雪地では除雪とともにクルマの屋根の雪下ろしは大仕事

しかし、住宅の外観デザイン全体を考えると、クルマの置き場所は大きな影響を与えます。そのため、最近は若い方を中心にガレージを敬遠する傾向があるのです。その結果がカーポートとガレージの逆転に繋がったのでしょう。

――デザインからカーポートの種類を選ぶ方もいらっしゃるのではないですか?

デザインから選ぶ方もいらっしゃいます。やはり、せっかく建てる家の外観にぴったり合ったものを取り付けたいと思われるのは当然ですから。ただ、やはり、カーポートやガレージはクルマを守り、安心して使い続けていただくことが第一です。まずはその地域の積雪や風の状況を説明の上ご理解いただき、それに見合った強度を備えたものを選んでいただけるようご提案しています。



強度の高いカーポートが積雪地ばかりでなく風の強い地域でも使用されているということを初めて知りました。大切なクルマをしっかり守るためにも、住んでいる地域の気候を把握し、無理なく使い続けられるものを選びたいものです。

<取材協力>
株式会社LIXIL北海道エクステリア営業部
https://www.lixil.co.jp/

<画像提供>
株式会社LIXIL

(取材・文:わたなべひろみ 編集:奥村みよ+ノオト)

[ガズー編集部]

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