ホイール好きによる、ホイール好きのためのフリーペーパー「ON THE ROAD MAGAZINE」の深すぎる世界

アメリカを感じる表紙。ページを繰ればクルマにモーターサイクル、自転車、ファッション……。『ON THE ROAD MAGAZINE(オンザロードマガジン)』は、「Wheel Junkie(乗り物好き)」をコンセプトに、編集長であるイラストレーターでデザイナーのGAO NISHIKAWA(西川雅生)さんの「好き」を詰め込んだA4サイズのフリーペーパーです。今回はその編集部にお邪魔しました。

GAO NISHIKAWAという人

「小さい頃からアメリカ映画が好きでした。劇中で繰り広げられるカーチェイスだけでなく背景のクルマや街並みにも魅力を感じました。これがアメリカに興味を持った原体験だと思います」(GAOさん)

GAO NISHIKAWAさん。背景のイラストはGAOさんが描いたもの
GAO NISHIKAWAさん。背景のイラストはGAOさんが描いたもの

1963年生まれのGAOさん。当時、少年は皆クルマに憧れた時代。GAOさんも19歳でトヨタ「スターレット KP61」を手に入れました。ラリーに魅了され、美大に通いながら富士スピードウェイでレース用のタイヤフィッティングのアルバイトもしていたそうです。卒業後はタイヤメーカーの関連会社にクリエーターとして就職し、週末にはプロダクションカーレースに出場していたそうです。

「アメリカへの憧れが再燃したのは20代後半。特にNASCARストックカーレースに興味を持ち、フロリダ州のデイトナにも観戦に行きました」(GAOさん)

30代半ば、オートバイ「ハーレーダビットソン」に乗り始めると、夢だったアメリカ横断をすぐに実行したいと思い立ちます。会社を辞めて2001年の春に単身渡米、ロサンゼルスから旅をスタートします。1カ月半をかけてニューヨークまでバイクで走破、違うルートでまたロスにもどったそうです。

GAOさんが通い続けているルート66の路面に描かれたロードサイン。 画像提供:GAO NISHIKAWA
GAOさんが通い続けているルート66の路面に描かれたロードサイン。 画像提供:GAO NISHIKAWA

さらに2003年、40歳で再度アメリカに渡り、ルート66の正規ルート(シカゴ〜ロサンゼルス)を2週間弱で走破。今度は同じ志向を持つカメラマンとの旅だったそうです。

GAOさんのイラストを使ったポストカード集。アメリカの風景の中のクルマがいっぱい
GAOさんのイラストを使ったポストカード集。アメリカの風景の中のクルマがいっぱい

経験や出会いを1冊に

「退職後のいろいろな出会いや旅での経験がとても刺激になり、そのまま独立の道を選びました。イラストと文章を月刊誌に寄稿したりする傍ら、自分でも雑誌を作りたいと思うようになりました。アメリカではフリーペーパーがたくさん流通していたし、ひとまず自費でこれを作ってみようと思いました」(GAOさん)

「ON THE ROAD MAGAZINE」 創刊号。当時はA5サイズ。創刊から一貫して、GAOさん自身のイラストが表紙を飾る
「ON THE ROAD MAGAZINE」 創刊号。当時はA5サイズ。創刊から一貫して、GAOさん自身のイラストが表紙を飾る

「クルマやバイクなどの専門雑誌はたくさんあるので、同じことをしてもつまらない。僕はホイールがつくすべてのものが好きなので、友人がくれた『Wheel Junkie』という造語をコンセプトにしました。自分のイラストで表紙を飾り、面白いと思ったモノや、日々出会う様々な業界のユニークな人たちを紹介したいと思ったのです」(GAOさん)

2003年12月「オンザロードマガジン」を創刊。GAOさんの視点で、ホイールがついている乗り物を軸に、アパレルやガレージ、食など、あらゆるジャンルの記事がぎゅっと詰め込まれた、こだわりのライフスタイルが見て取れます。最初の発行部数は2000部でしたが、次第に「どこで手に入る?」「うちの店でも置かせてほしい」「広告を載せさせたい」という声が集まり、現在では毎号の発行部数3万部、1000店舗以上の配布協力店があるそうです。

オンザロードマガジンだからできること

初期にはイラストカレンダーを誌面に入れた号も。後半には記事ページがある
初期にはイラストカレンダーを誌面に入れた号も。後半には記事ページがある

「情報提供してくださる方も多くてネタには困りません。毎回どんな誌面にしようかと考えるのも楽しいものです」(GAOさん)

オンザロードマガジンならではの展開も。若者のクルマ離れという風潮に一石を投じる企画として、最近「バイク・クルマを愛する若者たち!」と銘打った連載ページを開始。現代の20~30代Wheel Junkieのリアルな声をインタビュー記事にしています。

「彼らの志向は僕たちが若かった頃とそう変わりません。ただ、情報の収集やコミュニケーションの手段がネットやSNSを介することが主流になっただけ」(GAOさん)

新企画「バイク・クルマを愛する若者たち!」
新企画「バイク・クルマを愛する若者たち!」

他に、近年多発している災害への対策啓蒙を呼びかける「THE SURVIVAL~危機管理のプロが教える“もしも”に役立つミニ知識~」という連載も。ジープで日本全国を回り、災害対策や危機管理の講演を行っているプロとともに作っているページもあります。

こちらも新企画「THE SURVIVAL~危機管理のプロが教える“もしも”に役立つミニ知識~」
こちらも新企画「THE SURVIVAL~危機管理のプロが教える“もしも”に役立つミニ知識~」

GAOさんの目はずっとキラキラしていて、表情は少年そのもの。オンザロードマガジンを「何のフリーペーパー」とカテゴライズするのは無粋。ホイール好きな人、ホイール好きが憧れるライフスタイルが詰め込まれたフリーペーパーです。季刊ペースで発行。次号となるvol.62は、2020年1月末頃発行予定です。興味のある方はぜひホームページにアクセスしてみてください。

(取材・文・写真:別役ちひろ 編集:奥村みよ+ノオト)

<取材協力>
ON THE ROAD MAGAZINE
http://orm-web.net/

[ガズー編集部]

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