インストラクターに聞いて、走って、また聞いて。HDS「スポーティ&セーフティI」<後編>
ホンダが「交通教育センター」と「ASTP(アクティブ セーフティ トレーニング パーク)」にて開催する「HDS(ホンダ ドライビング スクール)」。幅広いHDSのプログラムの中、今回はツインリンクもてぎのASTPにて行われた「スポーティ&セーフティI」を取材してきました。
インストラクターも継続して行う目標制動トレーニング
「スポーティ&セーフティI」で使用するのは、「ホンダコレクションホール」の近くにある南コース。広いスペースを持つフラットな多目的コースで、のびのびとした運転ができます。インストラクターから受講者への指示は、事前に渡されるトランシーバーによって行われます。
- 南コースの面積は、およそ51,000平方メートル
講習に使用するクルマは、持ち込みとレンタルを選べます。持ち込みを選ぶことで、参加料金より5,000円の割引を受けることができます。
- この日のレンタル車両は、ホンダのコンパクトスポーティモデル「FIT(フィット)RS」。他にも「ジェイド」や「ヴェゼル」、「ステップワゴン」が用意され、車種は講習内容により選ばれる
ウォーミングアップを兼ねて軽くコースを回った後、まずは高速走行時からのフルブレーキトレーニングを行います。直線を加速しながら走行し、目標パイロンでフルブレーキ。1本目は時速80kmを上限とし、徐々に上限速度を上げながら複数回行います。
- 最大で時速120kmを上限とした速度からの急ブレーキを体験する
続いて「目標制動」トレーニング。直線走行を行い、黄色のパイロンで強くブレーキ。その後、一度だけブレーキをゆるめ、80m先にある赤パイロンちょうどの停車を目指します。この目標制動はHDSとして特に重要視しているようで、インストラクターもしっかりと体得するよう指示を受け、日頃から信号や一時停止線のある一般道で実践しているそうです。
- 開始当初は皆、パイロンに届かなかったり、大きくオーバーしたりと苦戦していたが、回数を重ねる毎に距離が合ってくる
ここまでで午前中のトレーニングは終了。コース脇にあるプレハブで軽くおさらいをし、お昼休憩に入ります。
日が暮れるまで目一杯、トレーニングができる
午後はコーナーを利用した、より実践的なトレーニングから始まります。まずは実際にコースを走行し、インストラクターのデモンストレーション走行を交えてブレーキングとコーナリングの解説が行われます。
最初はr(半径)の異なる2つのカーブが連続する、複合コーナーの曲がり方を学びます。ゆっくりとした速度で最初のカーブに進入し、赤パイロン通過後、ブレーキをかけながら2個目のカーブを曲がる。この、クルマと相談しながらブレーキとステアリング操作を行うことを、インストラクターは「協調操作」と呼んでいました。
- 持ち込むクルマは車検を通っていれば制限はない。受講者の愛車も、SUVからステーションワゴン、スポーティーカーと様々
この複合コーナーで協調操作を覚えたら、全コースを走り込んでの応用トレーニングに移行します。
- この日は積極的な受講者が多く、インストラクターは次々と同乗を求められ引っ張りだこ
応用トレーニング中、すべての車両にインストラクターが同乗し、それぞれの講習者に適したアドバイスを行います。また、一度アドバイスを受けた後でも、インストラクターに希望すれば時間の許す限り、何度でも応じてくれます。
- 応用トレーニング中は安全確保のため一定以上、車間を空ける(具体的には前走車が最初のコーナーに入るまで)よう指示されている
トレーニングの最後に、インストラクターによる「ドライビングチェック」が行われます。チェック項目は、適切な地点でブレーキを行っているかを評価する「ブレーキポイント」、ブレーキの強さを評価する「ブレーキの入力」、ブレーキが強くなったり、弱くなったりしていないかを評価する「減速Gの安定性」、そして適切な地点でブレーキを終えたか評価する「ブレーキリリース」の4項目です。
各項目5点の総合20点満点で評価され、次のステップである「スポーティ&セーフティII」に進めるかの判断基準となります。総合評価が14点以下だった場合は、もう一度「スポーティ&セーフティI」を受講するよう勧められます。また「スポーティ&セーフティIII」へとステップアップするには、「スポーティ&セーフティI」と「スポーティ&セーフティII」、両プログラムのドライビングチェックで一定以上の評価を獲得しなければなりません。
プレハブに戻り、その日のおさらいをしたら「スポーティ&セーフティI」は終了となります。トレーニングの内容から「まるでサーキット走行の練習会のよう」と感じました。その旨をインストラクターに伝えたところ、「サーキットを走行するための技術は日常運転の延長上にあり、基本的には同じものと考えています。このスクールで学び、習得した事柄は安全運転に生かせることはもちろん、サーキット走行を楽しむための下地にもなります。実際、スクールを経てサーキット走行を楽しむようになった受講者さんも大勢います」とおっしゃっていました。
街中(あるいはサーキット)を気持ちよく走行できない場合、どこか間違った運転操作をしているケースも考えられます。心当たりのある人は、HDSプログラムに参加してみてはいかがでしょう。
(取材・文・写真:糸井賢一 編集:奥村みよ+ノオト)
<関連リンク>
ツインリンクもてぎASTP
https://www.twinring.jp/astp/
[ガズー編集部]
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