除雪方法は? 排雪はどこへ? 『さっぽろ雪の絵本』で雪国の雪対策を知ろう

除雪・排雪作業は、雪国での生活において生命線と言っても過言ではないでしょう。年間降雪量が平均で6mを超える北海道札幌市では毎年除雪や排雪に多くの労力や予算が費やされています。今回は、札幌市が行っている雪対策がわかりやすく説明されている『さっぽろ雪の絵本』をご紹介します。

雪対策は除雪・排雪だけではない

『さっぽろ雪の絵本』は札幌市建設局土木部雪対策室計画課から発行されています。現在、冊子版と札幌市のウェブサイトから見ることができるPDF版とがあります。

PDF版の『さっぽろ雪の絵本』の表紙 (『さっぽろ雪の絵本』より)
PDF版の『さっぽろ雪の絵本』の表紙 (『さっぽろ雪の絵本』より)

札幌市は年間の降雪量が平均で6mを超えるにもかかわらず190万人以上の人々が暮らす世界でも他に類を見ない都市です。半年近くに及ぶ雪の降る期間でもクルマやバスで出勤したり、学校に通ったりと市民の日常生活を守るためにはさまざまな雪対策が必要とされます。
雪対策と聞くと、雪が降った時の除雪作業だけをイメージしてしまうかもしれません。しかし、実際には、道路の脇に溜まった雪を運ぶ排雪、運び出した雪を置いておく雪堆積場や融雪施設、凍ってツルツルになった路面を解消するための凍結路面対策など、作業は多岐にわたります。それらの内容がコンパクトにまとめられているのが『さっぽろ雪の絵本』です。

項目別でわかりやすい構成になっている (『さっぽろ雪の絵本』より)
項目別でわかりやすい構成になっている (『さっぽろ雪の絵本』より)

市民の市政への関心28年連続第1位の雪対策

『さっぽろ雪の絵本』の発行のいきさつや現在の活動などを札幌市建設局土木部雪対策室計画課の柳澤岳さんに伺いました。

――『さっぽろ雪の絵本』はいつから発行されているのですか?

『さっぽろ雪の絵本』は2006年に作成、初年度は35,000部発行しました。その後2007年、2009年と追加で発行し、2014年には内容を改訂しています。『さっぽろ雪の絵本』以外にもこの内容をもとに、もっと読みやすく、わかりやすいようマンガ形式にした『まんがさっぽろ雪の絵本』も2007年に発行しています。こちらは、Q&Aの形で雪対策に関する疑問を解いていく内容になっています。

除雪をするかどうかの判断や作業の流れを図解で (『さっぽろ雪の絵本』より)
除雪をするかどうかの判断や作業の流れを図解で (『さっぽろ雪の絵本』より)

この他、札幌市雪対策室の公式キャラクター「ゆきだるマン」を主人公としたアニメ『パパは雪だるま!』をマンガ化した冊子も2010年に発行しています。

札幌市雪対策室の公式キャラクター「ゆきだるマン」
札幌市雪対策室の公式キャラクター「ゆきだるマン」

――『さっぽろ雪の絵本』を発行することになったきっかけは何ですか?

初めて発行した2006年当時、世論調査で「市政にもっと力を入れてほしい施策」に28年連続1位となるほど雪対策は市民からの関心が非常に大きいものなのです。また、それと同時に雪対策に関する苦情は、多い年で約4万件にものぼります。苦情の中には誤解によるものも多く、もっと市民の皆さんに雪対策について理解してもらい、長い冬の間も気分よく過ごしてもらえるよう情報を提供することを目的として発行されました。

排雪された雪は雪堆積場へ。ひと冬で札幌ドーム12杯分くらい運ばれるとは驚き! (『さっぽろ雪の絵本』より)
排雪された雪は雪堆積場へ。ひと冬で札幌ドーム12杯分くらい運ばれるとは驚き! (『さっぽろ雪の絵本』より)

――各項目とてもわかりやすい内容になっていますね。

市民からよく寄せられる声をもとにして、どんなことが知りたいのか、あるいは、どんなことを知らないのかを挙げ、札幌市の雪対策全般について理解を深めることができるよう事細かにまとめています。

ツルツル路面対策にもさまざまな方法が (『さっぽろ雪の絵本』より)
ツルツル路面対策にもさまざまな方法が (『さっぽろ雪の絵本』より)

――現在、冊子を手に入れることはできますか?

発行当初は地域で行われるイベントや雪対策に関する出前講座などで配布しておりました。現在、冊子はイベント時や要望のあった小学校などに配布しています。ただ、『さっぽろ雪の絵本』『まんがさっぽろ雪の絵本』のいずれも札幌市のウェブサイトでPDF版を公開しており、どなたでもご覧いただけるようになっています。

人力と馬そりで行われていた除雪の歴史も (『さっぽろ雪の絵本』より)
人力と馬そりで行われていた除雪の歴史も (『さっぽろ雪の絵本』より)

――道外の方にも見ていただけるということですね。では、現在は雪対策について市民に知らせるためにはどのような活動をされていますか?

札幌市民向けには、札幌市広報課が毎月全戸配布している『広報さっぽろ』という広報誌の12月号に『冬のくらしガイド』を同封しています。主に『さっぽろ雪の絵本』の中でも市民の皆さんに関わりの深い部分の内容を掲載しています。
また、除雪車や除雪作業員の仕事をもっと知り、身近に感じてもらうためのイベント「冬のはたらくクルマ博」や小学校で雪対策について学べる雪体験授業なども行っています。


札幌市は2019年12月に今後10年間を見通した雪対策プランを策定したそうです。雪国の生活をスムーズにするために行われる雪対策。『さっぽろ雪の絵本』をめくって雪とともに生きる人々の暮らしに思いをはせてみてはいかがでしょうか。

(取材・文:わたなべひろみ 編集:奥村みよ+ノオト)

<取材協力>
札幌市建設局土木部雪対策室計画課
https://www.city.sapporo.jp/kensetsu/yuki/index.html

[ガズー編集部]

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