道の真ん中を牛が闊歩しているって本当なの? インドの道路事情をウォッチング2020
13億人以上という壮大な人口、仏教発祥の地、そして世界最大の紅茶の生産地で、カレーにガンジス川。街を闊歩する牛は神様。インドといえばそんなイメージを持つ人が多いかもしれません。
ところで、インドは中国、アメリカ、そして日本に次いで世界で4番目に自動車販売台数が多い国だということをご存知でしょうか。車両交通ルールは、日本と同じく左側通行。だからクルマは右ハンドルです。ところが、日本では信じられないような光景がインドの道路では巻き起こっています。
先日、取材でインドを訪れた際に見てきた現地の道路事情をご紹介したいと思います。
クルマはコンパクトカーが多い。だからスーツケースは屋根の上に
インドでは大きなクルマは珍しく、ほとんどが全長4mに満たないコンパクトカー。ボディーカラーはホワイトが大多数でした。
- 屋根の上にスーツケースを積んでいます
この車両はタクシーですが、ラゲッジスペースが小さいうえに燃料のCNG(圧縮天然ガス)のタンクを積んでいるのでほとんど荷物が積めません。ではスーツケースのように大きな荷物はどうするのかというと、上の写真のようにクルマの屋根の上に積みます。
多くのタクシーは荷物を「置くだけ」でベルトやロープで固定しないことが多い様子。お願いですから落とさないでくださいねと願うばかりです(このタクシーも固定しませんでしたが、幸運にも荷物は目的地まで落ちませんでした)。
混雑した道路はまさにカオス。クラクションが常に鳴り響く
混雑した道路は、クルマとクルマの間隔を詰めまくりの超接近戦が基本。接触するのではないかと乗客のボクはヒヤヒヤです。
前後だけでなく左右も詰めるから、3車線の道路に5台が並んで走るのなんて日常茶飯事。それにしてもドライバーさんの車幅感覚はなかなかのものです。
インドではクラクションが絶えず聞こえてきます。このドライバーさんの手元を見てください。右手の親指はいつでもクラクションを押せる場所にスタンバイ。あまりにも押しすぎるので、クラクション周辺の塗装が剥げています。
ただ、インドでのクラクションは威嚇的なものではなく「俺はここにいるよ」という主張であり、周辺車両へ存在を知らせているそうです。当然、日本と違って鳴らされてもビックリしません。
とはいえ、やはり接触するらしく多くのクルマはダメージを負っています。
だから、周囲の車両と近づき過ぎだと(心の中で)言ったのに……。
ちなみに、インドの道路では日本のスズキのクルマをたくさん目にします。正確には「マルチスズキ」という現地企業との合弁会社のクルマなのですが、インドの乗用車市場では約5割のシェアを持っているのだそうです。凄いですね。
高速道路も接近しすぎ
高速道路の様子はどうでしょうか。
見ての通り、とにかくクルマとクルマが近づき過ぎ。車間距離を取らないので、日本だったら「あおり運転」と言われてしまうでしょうね。
しかも、車線を守らずにまたいで走るドライバーが多数。だから前後だけでなく左右方向も周囲のクルマとの距離が近いんです。
面白いと思ったのは車線変更。これだけ周囲のクルマとの距離が近いから、急な車線変更は事故のもと。多くのドライバーは、サッと車線を変えるのではなくユルユルと少しずつ進路を変え、隣の車線へ移っていきます。
そして、かなり多いのが路肩での逆走。高速道路を往復400kmほど移動する中で、5回以上見かけたのだから多すぎですよね。写真はバイクですが、時にはクルマも路肩を逆走しているのだからビックリです。
果たして、インドの道には牛が戯れているのか?
インドでは牛が神聖な生き物で、とても大切にされているそうです。
そんなインドでは「牛が道路を闊歩している」と言われますが、果たして……?
たしかに道端に牛がいる!
大都会であるデリー市内にも道端に牛がいました。
しかもこの牛、多くが野に放たれている「野良牛」。
ときどき家の前に鎖やロープで繋がれて飼われている牛も見かけますが、大多数は自由気ままに過ごしていました。
道端に野良牛がいるのもごく日常の風景。
ただし、道の真ん中に居座って交通を遮断しているような状況には出くわしませんでした。さすがにクルマなどを避けて道端を活動場所としているようですね。
インドの道路事情、いかがでしたか? 日本との違いに驚かれた方も多いのではないでしょうか。いずれにせよ、野良牛が道端で暮らしているのは衝撃。世界には凄い場所があるものだ…。
(文:工藤貴宏 編集:奥村みよ+ノオト)
[ガズー編集部]
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