目安は年に一度?「交通安全のお守り」の豆知識と付き合い方

神社やお寺へ初詣に行った際、その年の無事故を願ってお迎えする、交通安全のお守りや御神札(ごしんさつ)。しかし、手にしたお守りや御神札がどういった経緯から生まれ、またどのように扱うものなのか、知らない人も少なくないでしょう。

そこで以前、「大國魂神社に聞いた『クルマのお祓い』その意味は?」でお話を聞かせてくれた「武蔵総社 大國魂神社(むさしのくにそうじゃ おおくにたまじんじゃ)」権禰宜の猿渡諒さんに、交通安全のお守りや御神札が生まれた経緯や扱い方について、うかがいました。

お守りの原型は、神社に転がっていた「石ころ」

猿渡さんによれば、交通安全のお守りや御神札の始まりは、古代にまで遡る。さまざまな事情により故郷を離れることとなった人たちが、神様に道中の安全と無事の帰還を願い、石や木の枝を呪物として身につけて出立したことにあるといいます。

「道路事情も悪く、自分の身は自分で守らなければいけない旅路は、今よりもずっと危険で命がけでした。非常に原初的な信仰ではありますが、そういった呪物を持って旅に出たのは、神様を身近に感じることで心を強く持つためと解釈しています」(猿渡さん)

旅人たちの求めに応える形で、旅の安全を願うお守りや御神札(の原型となるもの)は生まれます。その後、道路の整備や移動手段の発達、治安の良化により、旅(長距離移動)の危険はグッと減りました。しかし、交通事故という新たな危険が身近なものとなり、現在では事故からの安全を願う形が一般的になったそうです。

「交通安全のお守りや御神札は、皆さんのお手元へお渡しする前に御社殿にてお祓いを行い、神様の御霊をいただいています。具体的には『神様のお力をお守りや御神札に頂き、ドライバーを見守ってください』と、神様にお願いをしています。お守りを持ち歩くということは、すぐ近くで神様に見守ってもらっているということです」(猿渡さん)

お祓いをする神主さんも、ドライバーが無事故で過ごせるよう祈ってはいますが、お守りや御神札をいただいているからと油断をしてはならないそう。

「例えば公道で危険走行をすれば、神様がドライバーを見限ることは容易に想像できると思います。見守ってもらうということは、神様がいつも見ているということ。危険な運転や無謀な運転をしているのに無事故を願っても、神様は力を貸してくれないので注意してください」(猿渡さん)

お守りはどのようにして作られている?

多くの神社で授かることのできる、お守りと御神札。いったいどのようにして作られるのでしょうか?

「まず、各神社の考え方や事情によって異なることを、あらかじめご理解ください。お守り袋の中には、神様のおしるしである御神璽(ごしんじ)が入っています。家内安全や縁結びといった色々なお守りは、それぞれに異なる御神璽が入っています。先ほども触れましたが、皆さんのお手元に渡されるお守りは、お祓いを行った御神璽を、お守り袋に入れたものです」(猿渡さん)

御神璽こそがお守りの本体ですが、無闇に人の目に触れていいものではないため、お守り袋から出してはいけません。そういう意味で御神璽とお守り袋は、「あわせてひとつのお守り」とのこと。

「御神札は、紙札や木札に御神号と御神璽を記したもので、本質的にはお守りと同じものです。当社では御祈願を受けられる方には、御神札に皆さんのお名前を記入します。その後、御社殿でお祓いを行い、あらためてお手元にお返しします」(猿渡さん)

新しい御神札のお迎えは「年に一度」が目安

一般的にお守りや御神札は、初詣の度に古いものを返納して新しいものに入れ替えますが、期限はあるのでしょうか?

「必ずしもそうとは限りませんが、御神札は1年でお焚きあげを行い、新しい御神札をお迎えしてお祀りするのが目安とされています」(猿渡さん)

本来、年末に各家庭で大掃除を行うのは、きれいな環境で神様をお迎えし、新年を迎えるためのもの。神様の魂が宿る御神札も、きれいな状態で維持するのが理想で、そのための目安が1年とのことです。

「私の見解ではありますが、お守りはお守り袋がきれいであれば、2年でも3年でも肌身に持ってくださってかまわないと思います。お守り袋が汚れ、神様に忍びないと感じたら、その気持ちに従ってください。神社に返納してお焚きあげを行い、新しい気持ちでお守りをお迎えするのがいいですね」(猿渡さん)

神様を身近に感じることで、ドライバーの心に落ち着きと強さを授けてくれるお守りと御神札。最後に猿渡さんから、お守りを迎える人たちに気をつけてもらいたいことがあるそう。

「お守りや御神札は記念品ではないので、やたらとお迎えするものではありません。御神璽には神様の魂が宿っていることを忘れることなく、よく考えてお迎えしてください」(猿渡さん)

こうしてお話を聞いてみると、お守りや御神札のありがたみを感じますね。神聖な気持ちを持ってお迎えし、安全運転に努めたいものです。

(取材・文・写真:糸井賢一 編集:木谷宗義+ノオト)

<関連リンク>
武蔵国総社 大國魂神社
https://www.ookunitamajinja.or.jp/

[ガズー編集部]

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