自賠責保険料が3年ぶりに引き下げ その背景とは?
2020年4月から自動車損害賠償責任保険(自賠責)の保険料率が改定され、平均で16.4%の保険料引き下げ実施となりました。これは2017年4月以来3年ぶりの引き下げですが、決定の背景にはどのような理由があるのでしょうか? 保険料率改定はどこでどのように検討されるのか、どうして保険料率が引き下げられることになったのか、解説していきます。
「自賠責保険」とは、どんな種類の自動車保険?
自賠責保険は、交通事故の被害者保護を目的としている保険です。そのため、対物や事故車両に対する補償は対象外となります。対物や車両、運転者自身のケガに対する補償などは任意保険に加入することでカバーしているという方が多いのではないでしょうか。
また自賠責は原則として、原動機付自転車を含むすべてのクルマ(農耕作業用小型特殊自動車や構内専用車など一部の適用除外車を除く)に加入が義務付けられています。自賠責保険への加入を証明するものが「自動車損害賠償責任保険証明書(自賠責保険証明書)」で、クルマにはこの証明書を必ず備え付け、いつでも提示できるようにしておく必要があります。
みなさんの愛車にも、車検証や任意保険の証券などとあわせて自賠責保険の証明書が載せられていますよね。車検の対象となるクルマは自賠責保険証明書がないと車検を受けることができないため、自賠責保険は「強制保険」とも呼ばれています。
自賠責の保険料率はどのように決められている?
保険料率の改定については、金融庁に設置された「自賠責保険審議会」において、改定要否の審議が毎年行われています。自賠責保険審議会とは、弁護士や大学教授、損害保険業界や自動車業界などの有識者13名で構成される組織です。いわばクルマや保険、事故などに関するプロフェッショナルが集まり、自賠責の保険料率改定が妥当かどうかを検討しているわけですね。
保険料率改定までの大まかなプロセスとしてはまず、「損害保険料率算出機構」がさまざまな調査を行って、検討にあたり必要なデータを収集します。その結果として算出された「基準料率」が自賠責保険審議会の諮問にかけられ、保険料率改定の要否が判断される流れとなっています。保険料率を改定すべきだと判断された場合は、さらにいくつかの審査や認可の手続きを経て、損害保険会社が販売する自賠責保険に新保険料率を適用できるようになる仕組みです。
今回、3年ぶりに保険料率が引き下げとなったのはどうして?
3年ぶりに保険料率の引き下げ実施となった背景には、おもに保険料率の適性化を図る目的が挙げられます。自賠責保険の基本料率は「ノーロス・ノープロフィット」と呼ばれる原則に従って、保険会社に利潤や損失が生じないように算出されています。つまり、お金の「入りと出」に偏りが生じないようにするということです。
ところが近年ではクルマの性能そのものが進化し、とくに安全性能の向上が大きく奏功したことによって、交通事故の発生件数が減少しつつあります。クルマを選ぶうえで、走行性能や燃費、デザインといった要素に並んで安全性能に注目するようになった方も少なくないと思います。しかし、こうした社会状況の中でも、自賠責への加入が必要なクルマの総台数自体に大きな変化は見られません。つまり、保険料収入よりも支払保険金が少ない状態が発生するのです。
さらに、自賠責は無保険状態を防ぐため、車検満了日をカバーできるよう数年単位の長期で加入する契約が多く、毎年細かな保険料改定を行うのは公平性の観点から難しくなっています。すると今回のように、社会状況の変化によって保険金の支払いが減少するような場合には、当然ながら滞留資金が蓄積されます。そのため「ノーロス・ノープロフィット」の原則に基づき、滞留資金を契約者に還元する目的も含めて、2020年4月からの保険料率引き下げが実施される運びとなりました。
クルマのオーナーさんにとって、愛車を維持していくうえでのコストが減るのはうれしいですよね。日頃の安全運転に対する意識が交通事故を防ぐのはもちろん、社会全体の損失を減らし、自賠責の保険料カットにもつながっていきます。こうしたプラスの循環を未来にも維持していけるよう、ゆとりと思いやりを持ったドライブを心がけ、安全安心なカーライフを満喫していきましょう!
(文:吉田奈苗 編集:奥村みよ+ノオト)
<関連リンク>
金融庁
https://www.fsa.go.jp
損害保険料率算出機構
https://www.giroj.or.jp
[ガズー編集部]
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