クルマも科学だ! 月刊科学絵本「かがくのとも」に取り上げられたクルマたち
創刊から50年を迎えた月刊科学絵本「かがくのとも」。科学的な見方で身の回りのさまざまなものに目を向け、たくさんの子どもたちの好奇心の芽を育ててきた「かがくのとも」にはクルマをテーマにした絵本も多くあります。
「かがくのとも」から生まれた、大人も子どもも楽しめるクルマの科学絵本を紹介します。
月刊科学絵本「かがくのとも」とは?
「かがくのとも」は子どものための科学絵本として福音館書店から1969年4月に創刊されました。2019年に50周年を迎えた「かがくのとも」は、増刊号も含めてこれまで600冊以上が発行されています。
科学と聞くと、難しいもの、学習に直結しているもの、と捉えられがちですが、「かがくのとも」が取り上げるのは、自然、動植物、人間の体、日々の暮らしなど身の回りのすべてのもの。それらを科学的な見方や考え方を通して分析し、子どもたちが楽しめるよう豊かな絵とともにまとめられています。知識や情報ばかりではなく子どもたちの好奇心の芽を育て、世界を見る目を豊かにするための絵本です。
身の回りのすべてのものが対象ですから……クルマも、もちろん科学なのです。
「消防自動車ってこんなに種類があるのか」という驚き
1976年1月号「しょうぼうじどうしゃ」、単行本としては「はたらくじどうしゃ4 しょうぼうじどうしゃ」は、消防自動車の機能を細やかな絵で表現、解説しています。
- 「はたらくじどうしゃ4 しょうぼうじどうしゃ」 山本 忠敬 作・絵 福音館書店刊
普通型ポンプ車から、はしご車、装甲化学車、無線指令車まで、その種類の多さには驚きです。火災の状況で出動する消防自動車がそれぞれ違うことがよくわかります。クルマのメーカーや車種とともに、シンプルな線と主に赤を使って描かれた絵は、まるで図面のように的確。細部まで描きこまれた装備品はじっくり見ることをおすすめします。
赤いねじは消防自動車のどこに?
さとしくんの「たからもの」の箱から、ひかるちゃんは1本の赤いねじを見つけました。さとしくんのお父さんは消防自動車を作る工場で働いています。この赤いねじは消防自動車のどの部分のものなのでしょう。
2002年3月号「しょうぼうじどうしゃのあかいねじ」では、消防自動車がどのように作られるのかひかるちゃんの目を通して描かれます。
- 「しょうぼうじどうしゃの あかい ねじ / かがくのとも 2002年3月号」 たるいし まこ 作 福音館書店刊 (版元品切れ)
ひかるちゃんが消防自動車を作る工場に訪れると、白くて背中がからっぽのクルマが置いてありました。これが赤い消防自動車になるのだとおじさんは言います。ポンプやいろいろな部品が積み込まれ、クルマのからっぽだった背中が埋まっていきますが、まだ消防自動車には見えません。どのような過程で消防自動車が組み立てられ、いつ赤くなるのかを、ひかるちゃんと一緒に知ることができます。ねじはたくさん使われていますが、赤くないねじばかり。さて、赤いねじはどこに使われているのでしょうか。
夜から朝にかけて働くクルマたち
街が寝静まった真夜中、働き始めるクルマたちがいます。
2009年10月号「どうろせいそうしゃ」は、道路をきれいにする道路清掃車の活躍を紹介します。
- 「どうろせいそうしゃ / かがくのとも2009年10月号」 鎌田 歩 作 福音館書店刊 (版元品切れ)
水がびっしり入ったタンクを積んだ散水車、集めたごみを積み込むダンプカー、ごみをブラシで集めて吸い込むロードスイーパーが道路清掃車の仲間たちです。安全を確かめる先行車に続いて、3台はひっそりとした街へ出発します。散水車が水をまき、ロードスイーパーのブラシが道路の形に合わせて角度を変えて、落ち葉やごみをかき出し吸い込んで道路はあっという間にきれいになっていきます。外側から見ても知ることができないロードスイーパーの仕組みもわかりやすく解説。清掃しながら進んでいくと、夜の街で働く他のクルマたちにも出会います。朝日が輝き出す頃、道路清掃車の仕事は終わりを迎えるのです。
あらゆるところが伸びるクルマが大集合
伸びるクルマと聞いて思い浮かぶのはどんなクルマでしょうか?
2016年5月号「のびるじどうしゃ」では、さまざまな作業のために伸びるクルマが7台も登場します。
- 「のびるじどうしゃ / かがくのとも2016年5月号」 平山 暉彦 作 福音館書店刊 (版元品切れ)
最初に出てくるのは消防はしご車。はしごを「ウイーン!」と伸ばして高いところで逃げ遅れた人を助けます。では、他のクルマはどこが伸びるのでしょう。見えない、安定しない、届かない……とピンチの時には、足や運転席や荷台の背を伸ばします。意外な方向に伸びるゴンドラもあります。作業の種類によってこれだけいろいろなところを伸ばすクルマがあるとは知りませんでした。働くクルマ好きにはたまらない1冊です。
長い月日をかけてていねいに作られる科学絵本
月刊誌でありながら1冊の「かがくのとも」が完成するまでには少なくとも3年以上の月日が費やされるそうです。テーマ決めから始まり、テーマに合った著者を探し、絵本作りがスタート。幾度も文章と絵を練りなおし、科学的根拠の裏付けもしっかりと取った上で、原画を完成させ印刷、発行にこぎつけます。それだけの時間と手間をかけるのは、正しい情報を伝え、さらに子どもたちに心の底から「楽しい」、「面白い」と感じてほしいから。
創刊50周年記念誌「かがくのとものもと」には、そんな「かがくのとも」の秘密がたくさん詰まっています。
- 「月刊科学絵本『かがくのとも』の50年 かがくのとものもと」 福音館書店刊
科学絵本の世界に触れることで、街を走るクルマも違った視点から観察できるかもしれません。これまでとは違うクルマの楽しさを味わってみてはいかがでしょうか。
(選書・文:わたなべひろみ 編集:奥村みよ+ノオト)
<画像提供>
福音館書店
https://www.fukuinkan.co.jp/
<関連リンク>
かがくのとも50周年記念特設サイト
https://www.fukuinkan.co.jp/kagakunotomo50/
[ガズー編集部]
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