「86」デビューまでのコンセプトカーの変遷をたどる 前編(2007~2010年)
2000年代前半、国内メーカーのスポーティーモデルが次々に姿を消していく中、2011年末に同じメカニズムを持つ2台の小型FRスポーツ車が登場します。それがトヨタとスバルが手を組み開発されたトヨタ「86(ハチロク)」とスバル「BRZ」です。
86のネーミングは、4代目「カローラレビン/スプリンタートレノ」の型式名に由来します。1983年に登場したこの4代目レビン/トレノの中でも、スポーティな4A-G型エンジン搭載モデルにのみ与えられた型式が「AE86」でした。そして、30年近くもの時を経て、新しい小型FRスポーツの車名で復活したというわけです。
86/BRZは、2つの会社の共同開発で生まれたゆえ、さまざまな開発ストーリーがさまざまなところで取り上げられていますが、ここでは発売までに発表されてきたコンセプトモデルを振り返っていきます。
2007年:FT-HS
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- ハイブリッドスポーツコンセプトモデル「FT-HS」(2007年デトロイトモーターショー)
「FT-HS」は2007年の北米国際自動車ショー(デトロイトモーターショー)に出品されたトヨタのコンセプトカーです。V6ガソリンエンジンとモーターを組み合わせたハイブリッドスポーツコンセプトとして発表されたこのクルマのスペックは、86とはまったく違います。
しかしながら、トヨタがアメリカに設立したデザイン拠点「CALTY(キャルティ)」が手がけたフォルムは、次に紹介する86のコンセプトモデル「FT-86コンセプト」登場時に頭をよぎった人も多かったようです。参考までに紹介しておきますが、みなさんは今振り返ってみてどう感じるでしょうか?
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- 「FT-HS」のリア(2007年 東京モーターショー)
ちなみにこのFT-HSは、同年の東京モーターショーでも展示されたので、記憶にある方もいるかもしれません。
2009年:FT-86コンセプト
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- 「FT-86 concept」(2009年 東京モーターショー)
2009年10月に開催された東京モーターショーにて、86の名前を盛り込んだコンセプトカーが世界で初めて公開されました。2008年4月にトヨタと富士重工(現スバル)で交わされた、小型FRスポーツ車の共同開発の合意に基づき生まれたクルマ「FT-86コンセプト」です。
これがわれわれの前に初めて姿を現した86の原型。掲げられたコンセプトは「クルマ本来の運転する楽しさ、所有する喜びを提案する小型スポーツ」で、この時点で富士重工製の2リッター水平対向自然吸気ガソリンエンジンを採用することがすでに発表されています。
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- 2010年 北京モーターショーで展示された時の表記は「FT-86 concept car」
東京で初公開されたこのコンセプトモデルは翌年、中国・北京モーターショーやフランス・パリモーターショーなどにも展示されます。ちなみにFT-86コンセプトのスタイリングは、トヨタデザイン部が担当したもので、このちょっと青みがかった赤いボディカラーはFlash Redと名付けられています。
2010年:FT-86 Gスポーツ コンセプト
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- 2010年の東京オートサロンで発表された「FT-86 G Sports Concept」
2009年の秋に初公開されたばかりの「FT-86コンセプト」は、年が明けた2010年1月の東京オートサロンで、早くもカスタマイズパーツを装着した「FT-86 Gスポーツコンセプト」が登場します。
まだ量産モデルが存在しないタイミングで発表されたG'sモデルは、エアロパーツとターボチャージャーで武装。しかし。G's流の味付けがなされたコンセプトモデルはこの1代限りで、その後継のコンセプトカーはその後も発表されませんでした。
前置きインタークーラーに描かれたG'sのロゴも誇らしげなFT-86 Gスポーツコンセプトは、開発主査の多田哲也氏がオートサロンで語った「ユーザーの方が自由にいじれるような“素材”となり、カスタマイズをして自分だけのクルマを仕上げられるようにしたい」という「想い」を具現化した、ユーザーに対するひとつの提案だったのかもしれません。
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- 「FT-86 concept」のイメージを崩すことなく非常にアグレッシブなフォルムとなっている
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- 前置きのインタークーラーに描かれた「G's」のロゴがとても印象的
次のコンセプトモデルはヨーロッパで登場
当時、わが国ではすっかり影をひそめてしまった感のあった小型FRスポーツ車は、トヨタとスバルによって開発決定からわずか1年半でわれわれの前にその姿を現し、その3ヶ月後には早くもカスタマイズモデルまでお披露目されました。
いずれも初披露の場に東京が選ばれましたが、のちに86と名付けられるこのクルマは、2011年末のデビューに向け、次のコンセプトモデルの発表の場をヨーロッパに移しさらなる進化を披露してくれます。後編に続く。
(取材・文・写真:高橋学 編集:木谷宗義+ノオト)
[ガズー編集部]