新東名が6車線化へ! どんな工事をするの? そもそも車線を増やすメリットは?

東京と名古屋を結ぶ新東名高速道路(以下、新東名)。2012年の御殿場JCTから浜松いなさJCTまでの静岡県区間の開通、2016年2月の浜松いなさJCTから豊田東JCTまでの愛知県区間開通を経て、以前からある東名高速道路とともに、日本の東西を結ぶ自動車交通の大動脈として活躍する道路です。

その新東名を6車線(片側3車線)にする工事が2018年に始まり、その一部区間が2020年7月16日に開通となります。では、この新東名の6車線化工事、どのような狙いがあって進められてきたのでしょうか? どんな工事が行われてきたのかとともに、6車線化のメリットを探りました。

どんな工事で車線を増やすのか?

7月16日に工事が完了し、片側3車線となるのは、新静岡IC~藤枝岡部IC(上り線)の約19㎞と、長泉沼津IC~藤枝岡部IC(下り線)の約72㎞です。工事している区間は、御殿場JCTから浜松いなさJCTまで全部で約145㎞ありますから、今回の工事完了で、上り線は8分の1ぐらい、下り線は半分近くが6車線化したことになります。では、その工事は、どのように進められたのでしょうか?

御殿場JCTから浜松いなさJCTまでの約145㎞が工事の対象。今回は、その一部の新静岡IC~藤枝岡部IC(上り線)と、長泉沼津IC~藤枝岡部IC(下り線)が完成する
御殿場JCTから浜松いなさJCTまでの約145㎞が工事の対象。今回は、その一部の新静岡IC~藤枝岡部IC(上り線)と、長泉沼津IC~藤枝岡部IC(下り線)が完成する

工事は、道路のある状況によって異なります。まず、もっとも一般的な区間となるのが、土工部(山を削ったり、谷を埋めたりしてできた区間)です。こちらは、最初に道路の路肩の土を取り除き、道幅を広げ、舗装や区画線をひいて、片側3車線とします。

続いて橋梁部(橋になっている区間)。すでに路肩にあるラバーポールなどを撤去して、舗装や区画線を引いて車線を増やします。また、トンネル部も橋梁部と同じように、ラバーポールを撤去し、舗装や区画線を施工。増えた車線にあわせて照明の位置を変更します。

工事区間の状況によって異なるものの、道幅を広げて、舗装と区画線をひくというのが工事の基本となる
工事区間の状況によって異なるものの、道幅を広げて、舗装と区画線をひくというのが工事の基本となる

ちなみに新東名は、もともと6車線(片側3車線)として工事を開始しましたが、途中で4車線に計画変更された経緯があります。そのため、橋梁部やトンネル部は、将来の6車線化工事にも対応できるようにスペースに余裕をもって作られていました。そのため、橋梁部やトンネル部は、それほど大掛かりな工事ではないと言えるでしょう。

工事前の写真。橋梁部区間とトンネル部区間は、もともと片側3車線分のスペースが用意されていたことがわかる
工事前の写真。橋梁部区間とトンネル部区間は、もともと片側3車線分のスペースが用意されていたことがわかる
こちらが工事後。工事によって左側に1車線が追加され、3車線となった。トンネル構造はそのままだ
こちらが工事後。工事によって左側に1車線が追加され、3車線となった。トンネル構造はそのままだ

6車線化のメリットは、渋滞を減らすこと

今回の6車線化の完了によって、さまざまな良い効果が期待されています。まず、下り線の渋滞緩和が期待できます。実のところ、今回工事を行った下り線の長泉沼津IC~新清水JCTは、新東名でもっとも渋滞の多いところ。2018年で5㎞以上の渋滞が、48回も発生しています。それが交通容量の増加で、緩和が期待できるのです。そのポイントは3つ。

今回、工事を行った下り線の長泉沼津ICから新清水JCTの間は、渋滞発生の多い箇所。新清水ICから新清水JCTの間にある3つのトンネルも渋滞が多く発生していた
今回、工事を行った下り線の長泉沼津ICから新清水JCTの間は、渋滞発生の多い箇所。新清水ICから新清水JCTの間にある3つのトンネルも渋滞が多く発生していた

1つ目は、トラック輸送の効率がアップすること。NEXCO中日本の調査によると、2車線区間には、遅い左の車線に59%もトラックが混入しており、その走行レーンの平均速度は84㎞/h。中央側の追い越し車線にも33%もトラックが混じっていて、平均速度は101㎞/hとなります。

それが片側3車線になると、トラックの71%が一番左の遅いレーンを走ることになります。そこの平均速度は平均79㎞/hまで落ちますが、逆に一番右の追い越し車線の速度は107㎞/hにまでアップ。速度差のあるクルマが分散されることになり、トラックも速い乗用車もどちらも走りやすくなるのです。

2つ目は、通行止めや災害時の迂回による渋滞が減って、スムーズになること。特に、東名高速の富士川SICから清水JCTの間にある由比地区は、高波による通行止めが発生しやすい場所で、過去5年間で上り線が3回、下り線では7回も通行止めが発生しています。今回の工事区間は、由比地区のう回路になりますから、当然、6車線化による交通容量の拡大によって、通行止めとなった時の渋滞抑制が期待できます。

3つ目のメリットは、東名リニューアル工事による迂回渋滞の減少です。全線開通から50年以上を経た東名高速は、老朽化が進んでおり、リニューアル工事が必須。9月から12月にかけて、御殿場IC~大井松田IC、清水JCT~裾野ICの工事が予定されています。そうした時に東名高速に並行する新東名の交通容量アップは、ユーザーにとってもありがたいものです。

山谷を削った土工部。まだ工事する前の片側2車線の区間。左側の土手が残っているのがポイント
山谷を削った土工部。まだ工事する前の片側2車線の区間。左側の土手が残っているのがポイント
左側の土手を削って、車線を拡大するスペースを作っていく
左側の土手を削って、車線を拡大するスペースを作っていく
左側に拡大したスペースに舗装を敷けるようにしているところ。その後に区画線を施行すれば3車線となる
左側に拡大したスペースに舗装を敷けるようにしているところ。その後に区画線を施行すれば3車線となる

新東名の6車線工事は2020年7月現在も進行中ですが、2020年度中の順次完成を予定しています。つまり、来年(2021年)の春までに御殿場JCTから浜松いなさJCTまで、約145㎞が6車線化されるのです。完成までの間は工事で不便になるかもしれませんが、その後は快適になることは間違いなし。完成を楽しみに待ちましょう。

<関連リンク>
NEXCO中日本 ドライバーズサイト
https://www.c-nexco.co.jp/
NEXCO中日本 新東名6車線化事業
https://tomei-info.com/6/

(取材・文:鈴木ケンイチ 写真提供:NEXCO中日本 編集:木谷宗義+ノオト)

[ガズー編集部]

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