オールテレーンタイヤってなに? M+Sとは? SUVのタイヤ選びで知っておきたいこと
近年、人気とともに勢いのあるジャンルがSUV。車体の小さな軽自動車から全長5mを超えるような大型車まで、また、街乗りを重視した気軽なモデルから道なき道の悪路走行に対応する本格派まで、トヨタをはじめ多くのメーカーからバラエティに富んだSUVが発売されています。
そんなSUVを所有している人の中には、タイヤ交換を考えている人もいることでしょう。昨今、SUVの車種増加や方向性の多様化により、SUV用タイヤの商品ラインアップはますます拡大。それらは大きく分けると「舗装路重視」「全地形型」「オフロード重視」の3つに分類できます。
中でも増えているのが「舗装路重視」の特性を持つタイヤ。クロスオーバーSUVが増えていることを受けて、舗装路での操縦安定性や静粛性、乗り心地を重視したタイヤがトレンドになっているのです。
M+Sタイヤは軽い雪道も走ることができる
一方で、「オールテレーン」とも呼ばれる全地形型タイヤは、舗装路から悪路まで幅広い路面に対応できるバランスの良さがSUVにとって魅力。そして、そんなオールテレーンタイヤのなかには「M+S」と表記されているタイプがあるのですが、クルマの使い方によってはその「M+S」が大きな意味を持ちます。
- M+S規格のタイヤは、タイヤ側面に「M+S」と表示されている。
「M+S」のMは「マッド」で、泥でぬかるんだ路面などのこと。Sは「スノー」で雪を表し、「M+S」は「マッド・アンド・スノー」とも呼ばれています。そしてこの規格のタイヤは、通常の乗用車用タイヤに比べて条件の悪い路面にも対応できる設計になっているのがポイントです。まず、多少ぬかるんだオフロードでも滑りにくいよう、タイヤの溝などが工夫されています。
もう一つの特徴が、雪にも対応すること。「浅雪」ともいわれる、軽く降った程度の雪道であれば走れるように作られています。雪が詰まりにくい溝の設計と低温でも硬くなりにくいゴムを使っているのです。
アメリカの乗用車は、一般的に雪道も走れるオールシーズンタイヤを工場出荷時から装着しています。「M+S」というタイヤ側面の刻印は、アメリカでオールシーズンタイヤとして認められていることの証なのです(スタッドレスタイヤもM+Sと表記されています)。
とはいえ、本格的な雪道まで走れるわけではないので過信は禁物
しかしながら、M+Sタイヤは本格的に降り積もった雪にまでは対応しません。あくまで「少しの雪なら走れる」というものです。もしも、スタッドレスタイヤに履き替えることなく降り積もった雪の路面も走りたいのであれば、雪用タイヤとしての認定を受けたオールシーズンタイヤを選ぶのがいいでしょう。雪上性能に強いオールシーズンタイヤには、「スノーフレーク」と呼ばれる雪道に滑りにくい試験をクリアした認定マークがついています。.
高速道路のチェーン規制時は、スノーフレークマーク付きのオールシーズンタイヤならスタッドレスタイヤ同様にチェーンを巻かなくても通行できます。しかしM+S規格だけでは、夏タイヤと同じくチェーンを装着しないと通行できません。
- M+Sタイヤが対応できるのは、道路の表面が白くなる程度の積雪まで。それ以上深い雪の道を走るなら、雪用タイヤとして認められたオールシーズンタイヤやスタッドレスタイヤを履く必要がある。(写真:ボルボ)
また、M+Sタイヤは雪深い路面や凍った路面ではしっかりとグリップしません(凍った路面を苦手とするのはスノーフレーク付きのオールシーズンタイヤも同様)。なので、降雪地域に住んでいる人やスキー場に出かける人は、M+Sタイヤではなくスタッドレスタイヤを履きましょう。
キャンプに行く人などにはマッチング良好
では、M+S対応のオールテレーンタイヤはどんなユーザーに最適でしょうか。それは、東京をはじめとする「ごくまれに雪が降るけれど、すぐに溶ける」という場所に住んでいる人。「本格的な雪上走行性能までは必要ないけれど、ノーマルタイヤのままでも突然の雪でクルマが立ち往生するのは避けたい」というニーズなら十分に満たしてくれます。
また、キャンプなどに出掛ける際にも活躍します。一般的なキャンプ場であれば、ごく普通のタイヤを履いた乗用車で行くことができますが、雨が降ってぬかるんだ未舗装路はタイヤが滑りやすくなり、坂道などでスリップすることも。そんなシーンでも、M+Sタイヤなら滑りにくく心強いのです。
- 普通のタイヤに比べると、M+Sタイヤは悪路走行にも強い。(写真:FCA)
オールテレーンタイヤにデメリットはあるのか?
もちろん、M+Sタイヤはメリットばかりではありません。たとえば、舗装路での操縦性、乗り心地、静粛性、そして燃費などは舗装路重視のタイヤに比べて低下するのが一般的です。しかしながら、昨今はM+S規格のオールテレーンタイヤでも、舗装路用タイヤとの違いが感じられないほどの特性を持つ、オンロード系タイヤに近い性能の銘柄が増えています。
SUVタイヤは方向性がさまざまで、銘柄を選ぶ際には走る路面にあわせた選択が重要です。しかし、上手に選べば、カーライフにしっかりマッチしたタイヤに出会うことができるでしょう。
(文・写真:工藤貴宏 写真:ボルボ、FCA 編集:奥村みよ+ノオト)
[ガズー編集部]
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