デモカーのエンブレムに母校の校章を! 母校廃校によせた想い

兵庫県佐用町にあるダイハツ車を得意とするショップ「プロバイル」。そのプロバイルがミラトコットをベースに製作したデモカーをよく見ると、見慣れないエンブレムが装着されています。それは廃校になった地元の小学校の校章をモチーフにしたものだそうです。このエンブレム誕生についてプロバイルの竹田拓朗さんにお話を伺いました。

きっかけは社会科の授業

<利神小学校前にて撮影>
<利神小学校前にて撮影>

「大阪オートメッセ2020」に展示されたミラトコットベースのカスタムカー「ミラトコットTR-XXアバンツァートR with 利神小R21」に付けられたエンブレムのモチーフは、この車名にある2020年3月に廃校となった佐用町立利神(りかん)小学校の校章です。

「当初、この車の製作に関しては利神小との関係性はありませんでした。現代にダイハツの軽ホットハッチがあったら……という思いで昔の『ミラ アバンツァート』を懐かしんでトコットをベースに造ったのがこのクルマの出発点です。」(竹田さん)

そんな「ミラトコットアバンツァートR」がwith 利神小となったきっかけは、利神小の前身校出身の竹田さんが、社会科の授業で特別講師として招かれたことだったそうです。

「小学5年生の社会科の授業で自動車や部品の生産に関してお伝えする機会をいただきました。大手自動車メーカーなどの大量生産に対して、少量の受注生産はどのような特徴があり、どのようなメリットやデメリットがあるかなどを少しお話させていただきました」(竹田さん)

少量生産への理解を深めるためにエンブレムを生産することに

その授業の中で実際にパーツを生産し、少量生産がどのようなものか、教科書だけでなく実体験で知ってもらおうと始まったのがオリジナルエンブレムの生産でした。

「実際に目に見えて分かりやすいものが良いなと感じました。そこで児童の皆さんと一緒にオリジナルのエンブレムを生産することにしたのです」(竹田さん)

実際に生産し、生産時にかかったコストなどを児童に報告することで、少量生産の理解を深めてもらったそうです。

「今回生産したエンブレムはいわば一品物です。大量生産している一般的な自動車のエンブレムは数千円ですが、このエンブレムはその数倍金額がかかります。そうした具体的な結果を示すことで児童の皆さんに少量生産の理解を深めてもらいました」(竹田さん)

そしてこのエンブレムのデザインには、2020年度で廃校となってしまった利神小への想いが込められているとのことです。

「エンブレムのデザインは児童の皆さんから募ってその中から決定しました。利神小校章をモチーフに、エンブレム生産に携わったクラスの21名を表して『R21』と描かれています」(竹田さん)

エンブレムが思い出の一品製品となる

廃校となってしまう自分たちの学校の校章をモチーフとしたエンブレムが形に残り、世界で1台のカスタムカーに煌々と輝いているのを見て児童たちからも反響があったそうです。

「展示された『大阪オートメッセ2020』に親御さんと見に来てくれた児童もいました。実際のクルマに装着されているのがうれしかったみたいで、児童はもちろん親御さんからも大好評でした」(竹田さん)

社会科の授業から始まったエンブレム生産は、児童たちにとって廃校になる母校への思い出がいつまでも残り続ける、大切な一品ものの製品として完成したのです。そして、そのエンブレムを取り付け世界に1台の自動車として誕生した「ミラトコットTR-XXアバンツァートR with 利神小R21」は、これからも児童たちの想いと思い出を背負い走り続けていくことでしょう。

クルマに興味がある児童はもちろん、そうでない児童にとっても思い出の1台となったことは間違いありません。

(取材・文:西川昇吾 写真:株式会社プロバイル 編集:奥村みよ+ノオト)

[ガズー編集部]

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